魔法学園は闇が深い!~憧れていた学園だけど、どうやら陰謀が多いようです~
すうぃりーむ
第0話 プロローグ
ある日の夕方、私は危ないから入るなと普段言われているお父さんの部屋へ入り込んだ。
お父さんの目を盗み入った部屋には、どんなお宝が隠されているのかとワクワクしていたが待っていたのは壁一面を埋め尽くすほどの大量の本だった。
「わぁ……。本がいっぱいだ。でも、難しい本ばかりだな……」
昔のお父さんは有名な魔法使いだったらしく、魔法の研究をしたり、お母さんと仲間とパーティーを組んで冒険者をやっていたりといろいろなことをやっていたらしい。どうやらその本も昔の名残のようで、魔法や歴史に関するいかにも難しそうな学術書ばかり置いてあった。
そんな難しそうな本の中に、少しだけ子供向けに作られたような本が置いてあるのが目に入る。
「うん? なんだろう、この本……?」
手に取って確かめてみると、どうやらその本は英雄譚のようだった。
その英雄譚は『星月』と呼ばれる魔法使いの旅の一部を面白おかしく描いた本らしい。
─ある時には、凶悪な強盗団を討伐したり。
─またある時には帝国を訪れた時に、世界一の城と言われる建物を見に行ったり。
子供心を刺激する大冒険の数々に私の心は一瞬でとりつかれてしまった。
ふと、窓の外を見ると読み始めた時は夕方だったのに既に夜になっていた。
これだけ熱中したことは初めてだったから驚いたのをよく覚えている。
「ええ、もうこんな時間!? お母さんがもうご飯を作ってる時間だし……。でも、これが最後だから読んじゃおう!」
最後のお話は、ルーア王国を襲ったドラゴンをやっつけたというお話。
─その魔法使いが国の名所を観光していた時、空は雲一つない晴天だったというのに、いきなり空が暗くなったという。慌てて上を見上げてみると、当時ルーア王国の近くを住処としていた災害級のドラゴンが突如として現れたのだ。
観光名所ということもあって一般人も近くに大勢いたらしい。災害級の魔物だ、放っておけば甚大な被害が出ることは明白だった。
そのことに気が付いた『星月』はまずは当たれば一瞬で灰になってしまうようなドラゴンブレスを魔法で防ぐと、そのまま自身の代名詞である大魔法『流星』によって一撃で倒したのだ。
その後、王様からも叙勲をすると言われたようだが拒否したようだ。その時に言った言葉が─。
『私は、見えるところで死んでほしくないだけさ。つまり、私の自己満足。だから、褒章はいらないよ』
と言い残したらしい。しかし、王様はどうしてもというのでルーア王国には彼女の銅像が立ったらしいが。
「かっこいいなぁ……。私もこんな魔法使いになりたいな」
人を救うために自分の身を顧みず戦ったその姿に、子供ながらに憧れた。
「私も、こんな魔法使いになって、人助けができたらな……よし、明日から特訓する─」
「何をやってるんだ、ユナ」
突然、首根っこを後ろからお父さんに 掴まれた。
夕飯の時間になっても来ない私を心配して探しに来たのだろう。
「危ないから入るなって言っただろ。本が落ちて怪我でもしたらどうするんだ」
「うん……。ごめんなさい」
「……とにかく、怪我がなくて良かったよ。何の本を読んでたんだ?」
「すごい魔法使いのお話! かっこよかったの!」
「そうかそうか。それならよかったよ。ほら、手を洗ってご飯食べるぞー」
「はーい!」
手を洗っている最中、幼い私はお父さんに一つお願いごとをした。
「お父さん! 私を魔法使いにして!」
実に子供らしいようなお願い。
普通だったら遊び半分と流すところだが、お父さんは私の夢を笑いながら受け入れてくれた。
「はっはっは! お前もやっぱり魔法使いになりたくなったか! ─いいだろう。明日から特訓してやる!」
次の日の早朝から、お父さんによる魔法の特訓が始まった。
厳しくも優しさが感じられるお父さんとの特訓は楽しかったし、日々着実に強くなっているのを実感できてより楽しくなった。
その特訓は十五歳になるまで続いた。
「ユナ。お前はもう、魔法使いとして十分に強い。─だが、もっと強くなるために『魔法学園』に入学する気はあるか?」
「っっっ!! げほっげほ!! いきなり何言い出すのさ!?」
あまりの突然さに吹き出してしまった。
魔法使い全体のレベルの底上げを目的に、同年代の名家の御子息御令嬢から将来有望な冒険者まで幅広くの人材が集まるのが魔法学園である。
「冗談じゃない。本気だ」
「私でも、入れるの?」
「ああ、入れる。お前はもう同年代の中でも頭一つ抜けて強くなった」
「入れば、もっと強くなれる……?」
「ああ、強くなれる。強くなって沢山の人を助けられるようになれる。ユナには素質がある」
そりゃあ一流の魔法使いになるんだったら入らないといけないとは気付いていた。
私が行っても何もできないんじゃないか、そんな思いから逃げて勝手に憧れの場所にしてしまっていたのかもしれない。
だが、尊敬する父にここまで言われたら、もう答えは決まってしまう。
「分かった。じゃあ私、入学するよ」
かくして、魔法使いユナは入学を決意する。
魔法使いユナの物語はこの日から始まったのだ─。
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