第14話 耐えられない!

 生命の素マリグラヌールにオリハルコン。そしてボクの前世の遺骨宝石。

 これらをカプセルに入れ、じっくりコトコト培養する。


「できたー!」


「なんか光ってるでありますよ!」


「強い魔力が込められている証拠だよ。前世のボクの魔力だ。今のボクとの適合率だって高いに違いない」


「ピカピカしてて恰好いいであります。早くつけるであります」


「お前、ボクがアレを生やすのに反対じゃなかったのか?」


「光ってるのは話が別であります。とってもオシャレでありますよ」


「そうかそうか」


 正直、光ってるのは余計だと思う。

 けれど、せっかくルルガが受け入れてくれたんだ。

 どうせなら望まれた存在になりたい。


 装着!


「光ってるであります。布越しだと光が和らいで優しい感じになったであります。かわいいであります~~」


「ボクも気に入った! 王都で売り込めば、国全体で流行るかもしれないぞ!」


「新しいファッションを作ってしまったでありますか。さすがはステラ様でありますな!」


 と。

 二人で盛り上がっていたら――。


 コロン。

 落ちた。光が落ちた。


「ん?」


 なにが起きたか理解するのを脳が拒む。

 けれどボクがいくら目をそらそうとしても、現実はどうしようもなくそこに存在した。


 光るアレが、スカートの下からコロコロと床を転がる。

 しわしわと小さくなり、今にも消えてしまいそうだ。


「が、頑張れ! 消えるな! お前にはボクと一緒に童貞を捨てる役目があるんだぞ!」


 つい叫んでしまった。

 だけど想い一つで変わるほど世界は甘くない。


 大きかったアレは小さく小さく縮んで……もとの遺骨宝石が残った。


「なぜ! なぜもとに戻ってしまった! ボクの前世の体だろうに……それがどうしてボクを拒絶するんだぁぁぁっ!」


「ステラ様! 落ち着くであります!」


 そうだ。落ち着かなきゃ。

 動揺は失敗を呼ぶ。

 冷静な頭でこそ実力を発揮できる。

 魔王軍との戦いでつねに冷静に立ち回ったからこそ、ボクは勝利できたんだ。

 どんな絶望的な状況でも心を乱さなかった。

 こんな状況、前世の戦いに比べれば……。


「あああああああ! 耐えられない! 魔王軍に守るべき人たちが焼き払われたのには耐えたけど、これは耐えられないッ! ぴええええええんっ!」


 床に座り込み、ボクは泣いた。

 まるで見た目通りの幼子のように、恥も外聞もなく声を上げ、涙を流す。


 今度こそ、期待していたんだ。

 光り輝くアレが馴染んでくれるんじゃないかって、信じてたんだ。


「あわわ、ステラ様が泣き止まないであります。えっと、えっと……どうしていいか分からないでありますぅ! えーん、えーん」


 ルルガまで泣いてしまった。

 ごめんよ……けど、この溢れ出す悲しみを抑えられないんだ。


 ボクたちの鳴き声を聞いて、お爺様がやってきた。


「これはどういうことじゃ!? 話を聞かせてくれ!」


 いつも話を全て聞いているお爺様だけど、今日はそうじゃなかった。

 ボクは泣きながら説明しようとする。

 けど、上手くいかない。


「アレが光って、今度こそボクのアレになると思って、なのにコロンのしわしわで……それで遺骨宝石からのぴえんなんだ……ぴえええんっ!」


「なに!? まさかアレスター・ダリモアの遺骨宝石を手に入れたのか!? 前世の自分自身を材料にしても適合しなかったとは……アレを作るのは想像以上に難しいらしいのぅ」


 分かってくれた!

 さすがはお爺様!


「うぅ……ぐす……実はそうなんだ……盗賊パァァァン祭りをしていたら遺骨宝石が出てきて……今度こそと思ったのに!」


「かわいそうに……悲しいときは泣きなさい。お前の前世は英雄じゃが、今は小さな子供じゃ。いくら泣いても恥ずかしくはないぞ」


「ぴええええん、ぴえええええん。ありがとう、お爺様」


「私も泣いていいでありますか? ステラ様がかわいそうで涙が止まらなくなったであります。魔獣でも泣いていいでありますか?」


「よいよい。魔獣であろうと今は少女の姿。恥じることはない」


「お爺様は優しいでありますぅぅ!」


 ボクとルルガは抱き合って泣きじゃくる。

 泣きまくったら少し落ち着いてきた。

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