第7話 パァァァァァンッ!

「というわけでルルガ。盗賊団のアジトに行く。チンポ狩りだ」


「ステラ様……そういうのを口に出さないほうがいいであります。誤解を生むであります」


「けど、実際にチンポを狩るんだし、ほかに言いようがない」


「そうでありますが……せめて盗賊狩りと表現して欲しいであります」


 ルルガは不満そうだ。

 意外と繊細な感性の持ち主らしい。

 しかし文句を言いつつ、ボクを乗せて盗賊のアジトまで送ってくれた。

 山二つを超えたけど、あっという間だった。まさに風のような走りだ。


「ああ? ガキと白いオオカミ……? なんでこんなところに。けど、どっちも高く売れそうだな。へへへ……」


 アジトの洞窟の前に、見張り番が二人いた。

 ボクはその二人に近寄り、ベルトを引きちぎってズボンをおろした。


「はっ!?」

「てめぇ、なにしやがる!」


 抗議には応えず、股間にぶらさがったアレを根元から引きちぎる。


「ぎゃあああああああ!」

「ぐわあああああああ!」


 そしてスカートをまくって自分の股間に押し当て、回復魔法を応用しくっつけてみる。

 が、しかし。


 パァァァァァンッ、という盛大な音とともにアレは破裂した。

 もう一本を試しても結果は同じだった。


「く……ボクの体に流れる魔力に耐えられなかったか。こんな粗末なのじゃ駄目だ! 次!」


「ステラ様……エグいでありますよ……」


 洞窟に入ると、盗賊がわらわらと湧いてきた。

 ボクは千切っては破裂させ、千切っては破裂させを繰り返す。

パァァァァァンッ! パァァァァァンッ!

 だんだん上手になってきた。

 いちいちズボンを下ろさなくても、布ごとむしり取る技を会得したぞ。


 それにしても、すでに何十人というアレをむしり取ったけど、全て使い物にならない。


「粗チンどもめ……一人くらいまともなのを持っている奴はいないのか!」


 ボクはそう叫びながら パァァァァァンッしていく。


「た、頼む、せめて普通に殺してくれ! アレをむしり取られた姿で死ぬなんて末代までの恥……あああああっ!」


「お前が末代だ! そもそも盗賊やってる時点で恥もなにもない!


 パァァァァァンッ!


「化物だ! 化物幼女だ!」

「血も涙もねぇ!」


 パァァァァァンッ! パァァァァァンッ!


 盗賊たちは洞窟の奥へと逃げていく。


「無駄だ。雷の精霊よ、行け!」


 バチバチと空中放電の音を出しながら、ボクの周りに小さな光球が現われた。

 それらはボクの意思に従って、逃げた盗賊たちを追いかける。

 そして感電させ、動きを止めてしまう。

 地面に倒れて痙攣する盗賊たちから千切り取ってパァァァァァンッ!


「てめぇ……よくも俺の子分たちを殺ってくれたな!」


 奥から偉そうな奴が出てきた。

 多分、盗賊のリーダーだろう。


「殺すつもりはなかったんだ。ただチンポが欲しかっただけで」


「ぶざけるな! 幼女のくせにとんだ痴女だぜ……あんな千切りかたしたら出血多量で死ぬだろが! 生き残れたとしても……男として死んだも同然だ!」


「お前たちが死んでもボクは損しないし。使い物になるチンポが一つもないから、時間を損した気分だよ」


「こんだけ殺してから言うことがそれか! 俺らも大概だが、てめぇは人間の心がないのか! 部下の仇だ、ぶっ殺してやる!」


 リーダーは斧を構えて突進してきた。

 ボクは炎の精霊に頼んで斧を溶かし、そしてアレをむしり取る。

 装着!


「お。すぐに破裂しない。さすがはリーダー。雑魚とは違う……」


 と、褒めた矢先にパァァァァァンッ!


「三秒もったか。まあまあかな」


「てめぇ……人の大切なものを奪っておきながら、まあまあだと……か、返せ……」


「もう破裂したから返せないよ」


「がはぁっ!」


 リーダーは泡を吹きながら倒れた。

 もう盗賊は一人も残っていない。

 収穫はゼロだ。

 この盗賊団の被害者はもうでないと考えれば無意味ではないけど、個人的には無駄足だった。

 いや、引きちぎるのが上手くなったから、いい練習台だったと言うべきかな。

 ありがとう、盗賊たち。

 みんなの死は無駄にしないよ。


「帰ろうか、ルルガ」


「もう終わりでありますか。最初は怖かったでありますが、パァァァァァンッという音が途中から癖になったであります。自分にアレがなくて本当によかったであります」


「ははは。ルルガに生えてても千切ったりしないよ」


「そうでありますか」


「痛くないよう、優しく魔法で切断するよ」


「取るには取るでありますか……」


 ルルガは股間を押さえて後ずさる。



 その数日後。

 家でのんびりしていたボクの耳に、またメイドたちの噂話が聞こえてきた。

 王国軍がついに盗賊団討伐のために大軍を編成し、アジトに突入したという。

 しかし、すでに何者かによって盗賊団は壊滅させられていた。


「それでね。全部の死体から股間のアレが引きちぎられていたんですって!」


「え、怖い! なんでそんな殺し方するの?」


「はっきりしたことは分からないけど、魔王復活をもくろむ邪悪な宗教団体による儀式じゃないかって説が有力よ。だって明らかに普通じゃないもの」


「そうよね。一人残らず入念にアレを引きちぎるなんて、まともな人間のすることじゃないわ!」


 うむむ。

 せっかく悪い盗賊団をやっつけたのに、魔王復活の儀式だと思われてしまった。

 天才のやることは、なかなか世間に理解されないのだなぁ。

 けれどボクはくじけない。

 必ずアレを手に入れてみせるぞ。

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