第70話 サダヒデの工房にて(その4)
「アダマンタイトは一かけらしかなかったのに、結構使いでがあるんですね」クニオがそう言うと、その問いにはサダヒデより先にコウが答えた。
「なんかいつまで経ってもクニオ達がここに来ないからさ、退屈であのドラゴンのおっちゃんの所と温泉に入り浸っちゃたよ。そしたらなんかアダマンタイトは二かけらで足りなきゃ好きなだけ持っていけみたいな話になって、結構沢山持ってきちゃったんだよね。クニオとコルが二かけらと言いながら三つ持って帰ったなと笑っていたけど、別に資源としては100倍ぐらい持っていって良かったのにと言ってたよ」ああ、一個ちょろまかしていたのはバレていたのかと、クニオはその時初めて知った。
「あの洞窟にも入ったんですか?」
「奥までは一度も行ってないよ。おっちゃんがそれはダメだって言ってたから…でもあの温泉癖になるんだよな。魔素を吸収するせいなのかな?なんかピリピリしていい感じなんだよ。魔力が低いクニオには分からないだろうけど…」
「一度もって…そんなに何回もあの温泉に?」コルビーが聞く。
「クニオのレベル上げも無くて、私とグレゴリーだけならあれぐらいの距離はすぐだからな。週一で4回ぐらい行ったかな?」コウは上目使いで数を数えた。
「でもすぐとは言ってもそれなりには距離もあるし移動は面倒くさいんだよな…。そうそう、だからコル君に聞きたかったんだ、転移魔法のゲートであそこって繋げられないのかな?」
「え?そんな事できるの?」クニオの口から思わず声が漏れる。
「もちろん転移魔法ぐらいは使えますよ。でも固定するとなると魔法陣を作って、術者不在で起動するとなればアダマンタイトが必要になるでしょうね。ああ、アダマンタイトは沢山あるんでしたか」コルビーがそう言った。
じゃあとコウが言いかけたところで、先ほど橋の上で番をしていたサダヒデの弟子が駆けてきた。そうしてサダヒデに
「師匠、橋の向こう側にアンデッド系の魔物が出現しました!」と報告した。
「はて、アンデッド系とは珍しいのう。魔力で魂を縛られているアンデッドは橋を渡っては来れまいが、放置するのも良くないな。どれ、ちょっと様子を見に行くか」そう言ってサダヒデは橋の方へと移動するので、クニオ達もその後をついていく。
橋に辿り着くと、確かにその向こうには魔物らしきものがうろついていた。体は土色で泥の塊の様にも見える。しかしところどころ見える肉体は紫色で、数々の水泡ができて腐食しており、生気を感じることは無い。
「ゾンビナイトですな。見るのは何年かぶりですぞ」グレゴリーが言った。
ゾンビナイトとは書いて字のごとく、人間でいう所の騎士が死んでその死体がネクロマンサー(屍霊操士)を初めとする、屍霊操術(ネクロマンシー)を操るものによって魂を縛られ、現世で朽ち果てることなく再出現した存在だ。生前のスキルやレベルを引き継いだうえで不死の存在となった、魔物としては極めて特殊な存在である。
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