洞窟にて
第56話 洞窟にて(その1)
しばし温泉を堪能した後『アカギツネ』の三人とは別れて、一行はキートの街を旅立ってから三日目に、目的地である洞窟の入り口が見えるところまで辿り着いた。話の通り入り口前の開けた場所には、ドラゴンが一匹目を閉じて横たわっていた。眠っているように見える。4人はかなり離れたところから、その様子を観察した。
「あのドラゴンは初めて見る種類ですな。『アカギツネ』が探していた古代種というのはやはりあやつなんでしょうか」グレゴリーがそう言うとコウが答えた。
「うんエンシェントドラゴンと呼ばれる古代種だよ。久しぶりに見たな。ドラゴンはドラゴンでも物凄い希少種だよ。何で領主のやつは言わなかったんだろう」
「一般の方々にとって、ドラゴンと言えばひとくくりですからな」グレゴリーが言う。
「魔王の成体になれば、その権能で多くの魔物はつき従いますが、古代種は別です。ややこしいことにならないように、なるべく魔王軍も干渉し合わないようにしている存在です」コルビーも知ってはいるが、あまり関わりたくはない種族の様だ。
「あれはやばいよ。魔法も効かなければ体も恐ろしく頑丈だって話だ。出会っても絶対関わるなって、エルフの間では伝わっているよ」コウが怖がる相手というのはクニオは初めて見たかもしれない。
「コウ殿がそこまでおっしゃるのなら、そうなんでしょうな」グレゴリーも頷いている。
「魔王軍であってもそこは同じですね。個人的には過去に何かあったような記憶もあるんですが、ぼんやりしている」コルビーですら関わらない方がいいという意見だ。
「戦う必要があるかどうかは確認しないと分からないですよね?そもそも倒す必要も無くて、隙を見て洞窟に入ってアダマンタイトを持ち出せればいいわけだから…」そう言ってからクニオは何やらコルビーに耳打ちをしている。コルビーは分かりましたといった素振りをしてから、コウとグレゴリーに向かって話しかけた。
「とにかく一度チャレンジしてみましょう。戦闘になる様なら無条件で逃げましょう。みなさん円陣を組んでください」コウとグレゴリーは納得のいかない感じであったが、とにかくコルビーにうながされて4人は円陣を組んだ。
円陣を組みながらクニオが話す。
「まずは私がコルビーの魔力とアマリアの盾をプランニングして、ドラゴンの周囲に結界を張って足止めをします。その間にコウとグレゴリーで洞窟に入ってアダマンタイトを採ってくるって事でどうでしょう?」
「エンシェントドラゴンに結界が効くのかな…」コウは不安気だ。
「お二人には言ってませんでしたが、魔王の権能でパラレルというものがあります」コルビーはグレゴリーとコウにもパラレルの事を説明した。二人はようやくそれで納得した。
「ま、何事もチャレンジという事ですな」そう言ってグレゴリーはガハハと笑った。
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