第50話 野宿にて(その2)
酔いが回って眠気が襲ってくると、見張り役のコルビーを残して三人は就寝した。夜は少々冷えるので、コウは収納袋から取り出した毛皮をかけて寝る。グレゴリーは特に薄着なので、コルビーからあろうことか魔王のローブを借りて着こんでいる。サイズの大きな上着は今はこれしか持っていないらしい。
野宿をするとき、魔物が出る可能性がある場合は交代交代で見張り番をする。キュリオシティーズのメンバーにコルビーが加わってからは、いつでも完全にしらふな彼が最初に見張り番をするのが通例になっていた。
数時間経っただろうか、のどが渇いてクニオが目を覚ますと、グレゴリーとコウが寝息を立てる中コルビーは焚火を見つめながら、見張り番をしていた。
「いつもトップバッターごめんね。次は俺が番をするから、コルはもう寝てもいいよ」クニオがそういうとコルビーは首を横に振った。
「お気遣いはいりません。なるべく皆さんに行動を合わせていますが、実は私は寝る必要はない体なんです。人間とは根本的に体の造りが違う。今も焚火が無くても寒さを感じることは無いし、明かりが無くても暗みの向こうまで全てが見えています」
「魔王の体っていうのは成体でなくても凄いんだね」クニオは言った。
「魔王でなくとも魔族の体は全て似たようなもんです。魔王城では私の寝室は…ああ、アドミンのやつが気を使ってプライベートスペースは見せなかったんでしたね」コルビーは少し笑って、そうして続ける。
「あそこには魔王の寝室もあるんです。本当は睡眠なんか必要ないんですが、ベッドに横になるとなぜか落ち着くんですよね。何か昔の記憶が影響しているのかもしれません」コルビーはそう言いながらじっと焚火の炎を見つめている。
「師匠に弟子入りしてからまだ一か月も経ちません。なのに今まで転生を繰り返してきた数百年、いや数千年に比べても随分と長い時間を過ごしたような気がしています。不思議ですね」そう言ってコルビーはクニオの方を振り返った。
「あと十数年すれば私は再び魔王になるんだと思います。その時に勇者との戦いを全て放棄してしまったらこの世界はどうなるんですかね?そうしてその後私はどうしたらいいんでしょうか。…魔王軍はどうするんだろう」前にクニオはコルビーに、どうせ勇者に倒される宿命であれば、戦わなければいいじゃないかと言ったことがある。
だからこの問いには答えなければいけないような気がした。
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