第41話 谷間にて(その3)
「もういい。下がれ。使えない奴らだ」そう言って、先ほどの首領二人が前に出てきた。
先ほどの背の高い方ではなく、やや小太りのもう一人の方が声をあげる。
「俺の名はギューズ。剣士をやっている。お前らなかなかいい刀を持っているな。それを置いていけば見逃してやってもいいぞ」なにか先ほどの金品全てに比べて、要求が下がっているような感じがするがユキヒラがそれに同意するはずもない。
「逆だな。俺がお前に勝ったらその刀をもらっていく」ユキヒラは橋の上でキュリオシティーズと対峙した時と同じことを言っている。それを聞いてギューズは鞘から刀を抜くと、鞘を後ろの集団に投げた。
「まずは一太刀」そういってギューズはユキヒラの方へ小走りで進むと、上段に振り被って切りかかった。ユキヒラは魔切丸でこれを受ける。金属のぶつかり合う高い音が辺りにこだまする。ギューズの刀は先ほどの若者たちのなまくら刀とは違い、折れることも刃こぼれすることも無かった。
二人は重ねた刀を共にひいて、数歩下がって距離をおく。そこからは間合いの取り合いだ。数秒の後今度はユキヒラから仕掛ける。鋭い剣戟が二度三度とギューズを襲う。しかしそれはことごとくギューズに刀で受けられてしまった。ユキヒラの攻撃が一息ついたところでギューズが反撃に転じる。今度はユキヒラは刀で受けることは無く、体を動かしてかわしながら後ろに下がった。そうして二人は構えをとって向き合い、また間合いの取り合いになった。
「なかなやるな。剣技で俺と互角に戦うとは大したものだ」そういってギューズはにやにやとしている。
一方それを離れた所で、コウとクニオ、コルビーの三人は眺めていた。
「あの盗賊はありゃ冒険者だな。しかしユキヒラもなかなか強い。クニオはよくあいつに勝てたな」コウは気が付いていないが、クニオはコルビーの助けが無ければ負けていた。少々小ずるく勝ったのでここは苦笑いするしかない。
「でも相手は戦闘に特化しているから勝つのは難しいだろうな」そうコウは続けた。
「今のところ互角に戦っているように見えるけども、なんで勝つのが難しいんだい?」クニオはコウに聞いて見た。
「純粋に剣だけで戦う冒険者なんていないだろう?」言われてみればその通りだ。クニオですらあの手この手で勝ちに行く事が多い。あの盗賊の首領が仮に冒険者だとすれば、鍛冶職のユキヒラには剣技以外のところで色々と不利な事もありそうだ。
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