第37話 工房にて(その3)

「こんな業物を見せられたら、職人としての血が騒ぎますな。希少金属なども組み合わせて打ち直したら、大業物と言ってもいい刀になりそうだ…ところで、そちらの盾も拝見してよろしいか?」クニオは先ほどの戦いの後、アマリアの盾は腹部から外して左上腕の定位置に固定していた。腕から外してサダヒデに渡す。


「ほーやはりこれはアマリアの盾ではないですか、久しぶりに拝見しましたな」サダヒデは先ほどの刀に負けない位今度は盾をまじまじと見ている。


「うーむ相変わらず凄い細工だ。魔素から防御結界展開への機序に淀みが無い。例えばこのアマリアの盾にも使われているアダマンタイトを、その刀にも使えば凄いものが出来上がるでしょうな」サダヒデの言葉にコウが聞く。


「アマリアの盾にはアダマンタイトが使われているのか?」

「アダマンタイトには、周辺の魔素を吸収して魔法や結界を維持、固定する性質がある。アマリアの盾はそれを使って結界を維持しているんじゃよ。刀に使えば例えば付与した切れ味を半永久的に保つこともできる」サダヒデはコウに答えた。


「アダマンタイトという名は私も聞いたことがあります。かなり貴重で高価なものなんですよね?」アダマンタイトは建築材料以外には疎いクニオでも知っているぐらいに有名だ。だが産出量が少なくて、この世界では貴重な存在の金属であるはずだ。


「まぁ普通の人間には手を出せる様なものではないですな。この工房にもストックはありませぬ。一応このあたりでも多少は流通しているから、殿様当たりなら持ってるかもしれんが…」サダヒデは顎に蓄えた髭を撫でながらそう言った。


「そうそう、アダマンタイトを入手したとしても、儂がこの刀を打ち直すとなれば領主の許可が必要じゃな。異国の人間の武器を強化するというのだから、当然と言えば当然の話じゃが」

「領主って、殿様の事?なら会いに行ってお願いすれば、アダマンタイトも持ってるかもしれないし一石二鳥じゃないか」コウが言う。


「まぁ会えるように儂が紹介状を書いてもいい。サダヒデという名は先代の領主から頂いたもので、現領主も知らぬ仲でもない。が、刀の打ち直しはともかくアダマンタイトはただではくれまいよ」まぁそのあたりは行き当たりばったりなのが、キュリオシティーズだ。しかし領主の屋敷に魔王が行ってもいいものか…。クニオは一瞬そんな常識的な事を思ったりもしたが、バレなければいいだけの話だろうと考えるのをやめた。

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