第34話 橋の上にて(その6)
気が付くとクニオは橋の渡り口にいた。目の前にはコルビーが立っている。
「師匠なら大丈夫です」そう言われて橋の方を見ると、ユキヒラが仁王立ちしている。手に持っていたはずの刀は、鞘に納められて腰に刺してある。何が起きたのか一瞬分からずドギマギしていると。
「後で説明しますから、もう一度お願いします」コルビーにそう言われて、訳も分からずまたユキヒラの元へと向かう。
「やっと本命の登場というわけでしょうか。しかし魔法なしであれだけ戦えるとは、いいパーティーメンバーですね」ユキヒラは先ほどと同じことを言っている。そう、理由は分からないが、また戦う前に戻っているのだ。そういえば先ほどはコルビーの認識票を預かったはずだが、今回は渡されなかった。今度はアマリアの盾は胴代わりに腹部に固定した。
そこからは、若干の違いはあったものの先ほどの戦いの繰り返しだった。もちろん相手の出方が分かっているので、先ほどよりは余裕をもって戦える。決まり手の出籠手は更に深くユキヒラの右腕に切りこんだ。そうしてまたユキヒラの仕込み刀がクニオの腹部を襲う…しかし今回は高い音がして、アマリアの盾に阻まれてしまった。不意打ちが通じなかったユキヒラは呆然としている。盾を胴に当てているのは、もちろん見えているのでそれを貫く自信があったのだろう。そうしてクニオが腹部に傷を負うその代わりに、ユキヒラの右腕は回復なしでは動かせないほどの深手を負っていた。
「この膝反丸(ひざそりまる)も我の自信作であったのに、完全にこの突きを防いだ貴殿の盾は一体…」
「ああ、これはアマリアの盾と言って普段は結界を展開するんだけど、そのままでも結構丈夫なんですよ」事も無げに説明するクニオに、ユキヒラは驚きの表情を浮かべている。
「アマリアの盾と言えば伝説級の…」彼は思わず声を漏らしていた。クニオは武器や防具には明るくないので、その価値がよく分かっていなかったが、これは相当なものなんだなと改めて実感した。
「分かりました。あなた方の勝ちでいいでしょう。お通りください」そういってユキヒラは道を空けた。後ろからキュリオシティーズの三人もこちらの方へ歩み寄ってくる。ユキヒラはポーションを取り出すと、負傷した右腕にかけて回復させている。
「なんだよクニオもなかなかやるじゃないか」コウはクニオの背中をぴしゃりと叩いて、そのまま橋を渡っていく。グレゴリーもガハハと笑いながらそれに続く。
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