突き抜けた発想による世界の終わりから

発想は人が宇宙を創造する瞬間である。 だからこそ爆発を伴う。

1.最初の爆発

この件に関わってきた者として、色々と書き残しておこうと思う。

ガモフが言うに抗生因子の挿入には、もう少し手間が掛かるらしい。

もう残り時間も少ないが、かと言って最後の時までやることも無い。

これが後世の役に立つことを願う。

後世なんて、そもそも存在してるか知らないが。

一人目はあの学者だった。

脳の研究者か何かで、自宅で変死しているのが発見された。

後頭部が破裂していて、辺り一面が血まみれだったのを覚えている。

拳銃自殺が疑われたが、射入口は無く、見た目には内側から破裂していた。

『中から何か出てきたみたいだ』と同僚が冗談めかしてたけど、今思えば、もっと真面目に話を聞いておけば良かった。

それから数カ月間、いくつか同じような遺体が見つかった。

皆、一様に頭部が内側から破裂していた。

当時は大した報道もされなかったが、状況が一変したのはあの動画がSNSに投稿されてからだ。

一番最初はアニメイベントの会場で人死が出たというニュースで、事故か何かだと皆が思っていた。

その数時間後には現場の動画がSNSに出回っていた。

その動画はアニメイベントの会場や観客を映したものだった。

次第にカメラの焦点は様子のおかしい一人の男に向けられた。

男は直立不動で、だが頭を小刻みに揺らし、白目を向いていた。

周りの客も異常に気づき出した頃、あれが起こった。

男の後頭部から血肉が飛び散った。

それは周りの客に降り掛かり、悲鳴が起きる。

混乱の中、男の頭の揺れは更に激しくなり、突然止まった。

その直後に男の後頭部から這い出てきた……それは手だった。

血まみれの細い手が男の後頭部から見え、それは次第に男の肩や背中まで伸び、後頭部の穴から自分の体をずるりと引き上げた。

それは女の形をしていて、確かに生きていた。

とても疲れた様子で、男の死体を後目に倒れ込んだ。

しばらくその女を映して、動画は終わった。