昔話繋げるアレ

龍百

1話

むかーしむかしあるところに

おじいさんとおばあさんが住んでいました


おじいさんは山へ竹を取りに

おばあさんは川へ洗濯に行きました


そうしておばあさんが洗濯をしていると…

どんぶらこ〜、どんぶらこ

と大きな桃が流れて来ました


おばあさんはいいお土産になると思い、大きな桃を持って帰る事にしました


その頃おじいさんは山で、光る竹を見つけました

不思議に思い、竹を割ってみると、なんとそこには美しい赤子が居るではありませんか


この年まで子供ができないのを悲しんでいたおじいさんは大喜びで赤子を抱えて家に帰りました


おじいさんとおばあさんが家の前でバッタリ会うとおばあさんはおじいさんの持ち物に驚いて

こう質問します


「じいさんや、その赤子はどこの子じゃろうか?」


おじいさんは答えます


「この子は光る竹の中に居た子供じゃよ」


そうすると今度はおじいさんが質問します


「おばあさんこそその大きな桃はどうしたことか」


おばあさんは答えます


「この桃は洗濯をしていると流れてきたのじゃよ」


その答えに対しておじいさんは何も言わず


「ほほぉ…それは不思議じゃったなぁ…」


と言います

おばあさんもそれに続いて


「おじいさんこそ不思議な事があるものじゃのぉ」


と言います

二人とも不思議な事があった直後だからか


不思議だ〜不思議だ〜、と言いながら



そうして二人が念願の赤子を得た記念に

すこし贅沢をして桃を食べよう

なんて考えてながら桃を割ると


中には赤子が入っていました

子供が二人、しかし二人の子供への愛情は本物です

どちらかの赤子を捨てるなんて考えられません


ですから、老人二人の子育ての苦労を承知で

この赤子も育てる事にしました


そうして二人はこれからの自分への労い

そして始めて赤子を得た記念として桃を食べると

気疲れからか、泥のように眠ってしまいました


ーーー


そうしておじいさんが朝起きると…


「若返っとるぅ!?」


おじいさんは若返っていました

おじいさん、驚いて声を荒らげます

焦っておばあさんの方を見ると…


「んん…なんじゃね爺さんや?」


おばあさんも若返っていました

これは明らかに異常です

しかし若返る心当たりなどは…


「あ、あの桃、あの桃だ…!」


ありました、しかし後悔しても始まりません

子育ては大変ですし、運が良かったと思い直し…

おばあさんと二人の赤子を育てました


ーーー


竹の赤子の名前は…「かぐや」

桃の赤子の名前は…「桃」


二人の赤子は成長し、かぐやは美しい少女になり

太郎は勇敢な少年になった


桃はその出生から"桃太郎"と呼ばれ

かぐやはその美しさから"姫"と呼ばれた


二人はその年の子供の例に漏れず好奇心旺盛で

二人と同時期に拾った子犬のポチと一緒に山を探検しては怪我をして帰ってきていた


そうして桃がいつものように山でおむすびを食べていると、おむすびが一つ転がり落ちて行く


「あぁ、飯が一つ少なくなる…」

「桃兄さん、私のおむすびを分けましょうか?」


「…いらない、俺はお前の兄で居たい、妹から飯を奪い取る兄があってたまるか」

「兄さん…」


「…丁度おむすびが転がり落ちて行ったからな!

そっちの方を探検してみるか!」

「はい!兄さん!」


そうしておむすびの落ちて行ったほうへ進んで行くのですが…


降りていた筈なのにいつの間にか坂を上っている

だんだん霧が濃くなり、少しも先が見えない


しかし桃は人と比べて耳が、目が、鼻が、そして何より勘が良い


故に気付く、ここはおかしい、ただ迷っただけならともかく動物の気配もしない


そして先程からひしひしと感じる嫌な予感

桃はかぐやを庇いながら、腰にある鉈に手をかける


「ワン!ワン!」


ポチが吠える

それと同時にガサガサッ!と音がする


そこから出てきたのは老いた老婆であり…

しかし何か、強い異形の気配を感じる


「…貴方は?」

「…ころす、殺すぅぅぅ!!!」


明らかに正気ではない

故に桃は躊躇わず鉈を老婆の脳天に振るう


しかし、老婆は老婆と思えぬ軽やかさで鉈を避け…

桃の脇腹を殴り…桃はその衝撃で吹き飛びました


桃は強い子供でした、それこそ若返ったおじいさんと同じくらいには強いのです


そんな桃が激痛で動けなくなる程の攻撃

明らかにあの老婆は人ではありません


そうして動けなくなった桃を見るや否や山姥は標的を変えました、かぐやから殺そうとしたのです


かぐやを守ろうとポチは老婆の腕に噛み付きます

ですが老婆は鬱陶しそうにポチを振り落とし地面に叩きつけてしまいました


そしてそのままポチを殺そうとしますが…


「辞めて!」


かぐやは老婆に懇願します

しかし、老婆は容赦しません、地面に叩きつけられ動けないポチを強く踏みつけます


それによりポチは本当にピクリとも動かなくなってしまったのです


そしてポチが動かなくなり茫然としているかぐやの方に老婆は歩いて行きます


そして老婆はかぐやの首を掴むと

どんどん力を強く込めて行きます、かぐやはもがきますが老婆の力は強く、全く振りほどけません


そして老婆は嗜虐的な笑みを浮かべ…


次の瞬間、首をおかしな方向に曲げられ

ピクリとも動かなくなりました


ただし、"老婆が"ではありますが


老婆の首を折ったのは桃

ボロボロの体に鞭打って老婆を殺したのです


しかしここが何処かも分からず

兄と犬は死にかけであり


どうすれば良いも分からず顔に涙を浮かべるかぐや

すると高らかな声でこう聞こえた


「札よ!その人達を癒やしてくれ!」


するとみるみる内に快復していく桃とポチ

桃に至っては気絶したばかりだというのに

目を覚ますほどだった


「そこの二人!さっきは助かった!実は先の山姥は私のせいで怒り狂って居たのだ」

「なるほど、あれは山姥だったのか!

それでさっき俺達を快復させたのはなぜだ?」


桃は不安でした、味方の居ないこの状況でかぐやを守りきれるか分からなかったからです


「そりゃあ貴方達は恩人ですから!助けない訳にはいきませんよ!」


しかし恩返しとして助けられたと言われ

安心しましたが


桃にはここがどこだか分かりません

山姥により惑わされ、家から遠くまで来てしまったからです


「そうか、それなら…かぐや、今晩はこの人の寺にでも泊めて貰おう」


つまり宿が無いのでこの小僧に頼み込みなんとか寺に泊めて貰うつもりだったですが…


「いやいや!その心配は無い!この札の力も君たちの為に使う!」

「それなら、それなら俺達を家に返してくれ!」


まさかの願ってもない提案に喜んで応えた桃


「勿論良いとも!さぁ、札よ!この二人と一匹を家に返したまえ!」


小僧がそういうと二人はいつの間にか家の前におり

山姥からなんとか生きて帰ることができたのでした


それから桃は反省し、山で遊んだりしなくなりましたとさ


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