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「あのー、お取り込み中すみません。僕はこの子を指名したいな?」
くそ親父の手を跳ね除け、れんこちゃんの手を握る。
「え、…な、」
れんこちゃんは何も言葉が出ないようだ。
「おいで、立って」
「お、おい兄ちゃん!何考えてんだ!今俺の相手してるだろ!」
くそ親父が手を掴もうとするのをつかみ返す。
「おい、こいつは俺の女だけど?なにか文句でも?」
れんこちゃんを片手で引き寄せて、くそ親父の手は片手で捻っておこう。
「い、いてぇ…」
「荷物持っておいで、受付で待ってるから。お金はれんこちゃんが払って」
「は、はい…お待ちくださいませ」
まったく。世話がやける。くそ親父の手は骨が折れない程度に捻ってやったから、たぶん湿布でもしてたら治るんじゃない?他の女の子に任せてさっさと受付へ。
れんこちゃんは着替えもしないで荷物を持って現れた。ので、着ていたジャケットを羽織らせる。
「お客様?あのちょっと…」
「この店辞めるから。これ金多めにやるよ」
れんこちゃんの財布から勝手にお金を出した。
「え、え…お、お客様…」
たったの1万円しか入ってなかった。まぁ、いいや。
あーもう3時か。飛行機なんてないよ。
「ねぇ、なにしてんの?こんなとこで」
手をつないでそのまま歩く。どこを目指してるのかわからない。
「わ、わたくしは、ただ…武に会いたくて」
「え?」
「わたくしは、家の仕事をしているのですが、全然足りないのです…ですからお金がすぐに入ると言われたので、先ほどのお店で働き始めたのです」
「誰が紹介したの?」
「歩いている方ですわ」
えー、スカウトだし。なんだよ、最悪。
「家、帰らないの?夜遅いけど?」
「喧嘩しておりますの。友達の家にいることにしてありますの」
「なんでそんな無茶するかな…」
「わたくしは、武がいないと…寂しいのです。わたくしは、1人が嫌ですわ…」
ふっと足を止めて泣き出した。ふー、こんな子がキャバクラなんて。無理して。
「行くよ」
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