第19話 第2の祭壇

 私たちはついに第二の祭壇へとたどり着いた。


 山頂の部分が平らな台形になっており、そこに祭壇が作られていた。

 第一のときと同じく金属性のコンソールに触れてアクセスする。


「貢ぎ物アイテムは入れたわ」


「この雪山をもう一度登るのは勘弁して欲しい。今回で決着をつけるぞ」


「ナハトゴーンをタームできたのは僥倖でした。今回のボスフィールドはカルカロドントサウルスを転送できませんからね。シズカさんはミ=ゴに乗ってください」


「カルを持っていけないのは残念だがしょうがないな」


「では行きますよ」


 私はコンソールに表示されている第二のボスアルク=ウィト=タウィルの紋章に触れた。

 私達の周りをハニカム模様に光るドーム状のフィールドが包み込む。

 そしてまばゆい閃光とともに転送された。

 

 転送先は深い森の中だった。

 どこか日本風の植生をしている。


 いくつか朽ちた民家のようなものが見える。しかし人のけはいはない。


「ここがボスフィールドか・・・」


 シズカさんがつぶやく。

 ゲームの時の記憶を頼りに私はコンパスを見ると、西側の空を見上げる。

 青空の中にポツンと黒い点が現れた。

 しばらく見ていると、それがどんどん大きくなる。


「来ますよ」


「ええ」


「了解」


 第二のボスアルク=ウィト=タウィルは空から急降下してくるといきなり火を吹きかけてきた。

 記憶にある通り、ドラゴンにそっくりの姿だ。


「みんな、散開してっ」


 私はナハトゴーンに乗って空中に飛び上がる。


 シズカさんはミ=ゴに、エリカさんはオサダゴワに乗ってウルムを連れている。

 すっかりあいつエリカさん専属みたいになっているな。


 二人共別の方向へ向かって駆け出した。皆、炎の着弾点から離れることには成功した。


 かなり広範囲に広がって炎上しているため、二人共全速力で怪物を走らせる。


「私は敵の注意を引き付けます。後は手筈通りに」


 今回は秘密兵器があるし、うまく行けば短時間でケリがつく。


「気を付けて!!」


「頼むぞ」


 私はナハトゴーンをアルク=ウィト=タウィルの眼前にふわふわと飛行させ、注意を引き付ける。


「こっちへ来い」


 アルク=ウィト=タウィルは炎を私に向かって吐きかけてくる。

 しかし私はギリギリを回避する。地面に当たって面に広がるのと違って、細長く飛ぶ炎はまだ回避しやすかった。


「まだか・・・」


 何度も炎を回避して逃げ続ける。しかし、すべてを完全に回避することは出来ず、何発かは翼や私をかすめていく。


「熱っ」


 その時エリカさんとシズカさんの逃げた方向から白煙が塔のように空に向かって立ち上る。

 そしてその白煙の先端が噴射炎の光を放ちながらアルク=ウィト=タウィルを追跡する。


 スティンガーミサイル。

 現実世界の同名の地対空ミサイルとは微妙に性能は違うが、ロックオンするとアルク=ウィト=タウィルの赤外線投射画像を記録してそれと同じ目標を追いかける。


 最初は垂直に打ち上がった後、くの字に曲がって私のすぐ後ろにいるボスに追いすがる。

 ミサイルはアルク=ウィト=タウィルを凌駕するスピードで瞬く間に追い付くと、わずかに回避行動を取った、それに合わせて急激に方向転換すると直撃した。


 本来は直撃する寸前に近接信管で爆発して破片を撒き散らして散弾のように航空機を撃墜するが、このセカンダリー・カダスでは対戦車用の成形炸薬弾頭になっている。


 そのせいで直撃しなければダメージを与えられないため命中率は高くない。

 更に飛行する怪物のスピードについていけない場合も多いため使えない武器と言われている。

 そのため初期の頃はボス戦で使おうとするプレイヤーはいなかった。


 しかししばらくすると、飛行速度がぎりぎり追いつくアルク=ウィト=タウィルに対してはほぼ天敵とも言える性能ということが判明した。

 最初にこのボスに対して使用したプレイヤーとそれを攻略wikiに書いてくれた人に感謝したい。

 お陰でだいぶ楽に倒せそうだ。


 私が引き付けている間にエリカさんとシズカさんが一発ずつロックオンして発射する作戦で、そのとおりに撃ってくれたらしい。


 直撃を受けたアルク=ウィト=タウィルは翼の膜を引き裂かれ、更に体に大きな穴を穿たれて降下していく。

 地面に激突したアルク=ウィト=タウィルは凄まじい土煙を上げる。


「シズカさん!!エリカさん!!ここだっ」


 エリカさんとシズカさんが乗騎と怪物達を連れてこちらに駆けつけてきているのが見える。撃った直後から追跡してくれていたらしい。

 倒れ伏したアルク=ウィト=タウィルはエリカさん達の方に首を向けて炎をふこうとしている。


「させるかよっ」


 私はナハトゴーンを急降下させるとその首を蹴り飛ばした。首があらぬ方向に向かって曲がり、炎はエリカさんの方には行かなかった。

 そのまま私はアルク=ウィト=タウィルの嘴で目や、首筋を何度も突っついた。


「私達もやるぞっ」


 エリカさんとシズカさんが合流してその乗騎でアルク=ウィト=タウィルの胴体によじ登る。

 シズカさんのミ=ゴの爪が、エリカさんのオサダゴワの牙が、ウルムの溶解液がアルク=ウィト=タウィルを袋叩きにしていく。


 その合間にも爪で攻撃や、炎を吐いたけれど地に伏した状態で繰り出されたそれはたやすく躱すことが出来た。 


 それでも腐ってもボスキャラクター。かなり長い時間、猛攻に耐え続けた。


「ぐぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉ」


 だがついに断末魔の咆哮を上げると息を引き取った。


 ゲームでは黒い霧になって縮れに消えるはずだが、今、この世界では違った。

 その切は黒い球体に集まって、私の所に飛んでくる。


「えっ?また?ぐぉっ」


 そして球体は私の体に吸収された。アトラク=ナクアの時と同じだ。


「またなの?本当に大丈夫」


「ええ。今回は痛みもありません」


「前に博士も言ったが、異常があれば言うのだぞ」


「ええ、ありがとうございます」


 そしてアルク=ウィト=タウィルの死体が会った場所には紋章が落ちていた。

 それを回収するとまた、私達をドーム状の光が包み、元の祭壇の場所へと転送された。



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