第37話-1

「どうした? エルザに付いてなくて良いのか?」


「ああ、最後にマックスと話したかったんだ」


「はぁ……やっぱりジェラールにはバレるか」


「身体を維持する魔力がどんどん増えているだろう? いくら魔力が多くても保たない。あと……どれくらい時間があるんだ?」


「持ってあと1年、いや2年ってとこかな。エルザがどんどん魔力を上げてくれるしまだ時間はあるよ。けど、転移魔法はもう使えねぇ。魔力を注ぎ込みたい事があるんだ。もう、エルザには会えねえな。俺は隠れ家に籠るよ。エルザに出会った頃はあと半年くれぇしか命が保たなかったんだ。エルザのおかげで魔力が増えて、時間が延びた。だから、かなり生き延びた方だぜ」


「……また僕は親友を失うんだな……」


「そんな顔すんなよ。これからまた親友と呼べるヤツと会えるさ。元々俺はこの時代に居てはいけない存在だ。生まれ変わったら、また会えるかもな」


「生まれ変わったら、また会える……のか……」


「生まれ変わりがあるのかは知らねえけどな。また会えたら今度こそエルザを奪ってやろうか?」


「それは困る。エルザは渡さない」


「そうそう、ジェラールはそうやってエルザを大事にしてな。子どもも産まれたし、大事なモンはどんどん増える。そうやって2人が幸せに前に進んでるなら、俺も心残りなく師匠のとこに行ける。なぁ、あの世ってあるのかな? それともすぐ生まれ変わるのかな? 死んだらどうなるか分かんねぇけど、師匠とまた会えたりしねぇかなぁ。俺はガキだったから、師匠に相手にされなかったんだ。今度は、お前らみたいに一緒になりてぇなぁ」


「マックス……」


「周りにバレねぇように魔法で隠してやるから、泣きたいだけ泣けよ。国王になると気を許せる人もなかなか居ないしな。時間ねぇだろうけど、今使ってる魔法も含めてジェラールが便利に使えそうな魔法をこの本に分かりやすく纏めといた。ジェラールなら数日で覚えられる。すげぇ分かりやすく書いたからな。苦労したぜ。やるから、覚えておけば便利だぜ。今みたいに泣きたい時に人に見つからないように泣ける」


「すまん……今……今だけだから……」


「これだけ惜しまれて逝けるなら俺は幸せだ。元々の知り合いはみんな死んじまったし、ずっと森に居たからな。冒険者になってからは、なんとか上手くやれてたけど、どうすんのが正解か分かんなくて名前を使い分けてキャラを作ってた。おかげでエルザに仕事を紹介出来たから良かったけどな。マックスの方は、シモン様から狙われてると知って死んだ事にしても、ジェラールみてぇに泣いてくれるヤツは居なかった。ま、そんくらいの薄い関係しか築かねぇようにしてたのは俺自身だけどな。だから、嬉しいよ。やっぱりジェラールは良いヤツだな。せいぜいエルザを大事にしろよ。不幸にしたらあの世から呪ってやるから覚悟しとけ」


「ああ……必ず……一生幸せにする……」


「あーもう、ほら、ハンカチやるから涙くらい拭けよ」


「すまん……ありがとう……」


「俺は、満足してるんだ。もう充分過ぎるほどに生きた。最後にジェラールとエルザに会えて、本当に幸せだ。新しい命にも会えた。ありがとな、俺なんかの為に泣いてくれて」


「マックスは……なんか……なんて言う存在ではない。僕も……エルザも……マックスと会えて良かった。なぁ、マックスは居なくなっても……僕の親友で居てくれるか……?」


「ああ、死んでも、あの世に行っても、生まれ変わっても俺はジェラールの親友だ」


「僕は……親友を失わない……そう……だよな……」


「そうだな。会えなくなるけど、ずっとジェラールを支えてやるよ。これは、その証だ」


「これは……?」


「大事な師匠の形見だ。隠れ家に転移出来る。使い捨てじゃねぇから何度でも行けるぜ。俺と連絡が取れなくなったら行ってみてくれ。残ってるモン全部やる。ジェラールなら役に立ててくれるだろうし、変な事には使わねえだろ。良かったよ。託せるヤツと出逢えて。それじゃ、俺は行く。残された時間で、ちょっくら研究したい事があるんだ。もう少しなら相談に乗ってやれるから、会いたくなったらそれ使って勝手に会いに来な。多分、俺は死んでも遺体は残らねぇ。隠れ家から出る事はほとんどなくなるだろうから、俺の姿を見かけなくなったら死んだと思ってくれ」

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