第22話


「安心しな。俺らはずっとエルザの味方だ」


「ふふ、ありがとう。厄介な特殊能力だけど、確かに味方が分かるのは良いわね。マックスもジェラール様もお姉様も……魔力が上がらなくてもわたくしを好きでいてくれてるって事だものね」


「おう。そーゆーこった。そんじゃ、テレーズ様のとこに行こう」


「分かったわ。お姉様の所で大人しくしてるから、マックスはジェラール様に会ってあげて」


「俺はエルザの護衛を依頼されてんだぞ」


「分かってる。けど、お姉様と一緒の時は護衛は要らないでしょう?」


「まぁ、テレーズ様ならエルザにガンガン防護魔法かけられるしなぁ……。分かった。ただし、俺の依頼主はテレーズ様だ。彼女が良いと言うならエルザの提案を受け入れるよ」


「分かったわ」


「なんか頼みたい事があったらちゃんと連絡しろよ」


マックスは、まるで母親のように次々と注意事項を羅列し始めました。お母様にも、こんなに心配された事はありません。


数々の注意事項がひと段落すると、マックスはジェラール様の話をし始めました。


「ジェラールは本当に良いヤツだよな。長い事生きてるけど、あんだけの善人には会った事がねぇよ。魔力が上がってる事からも、マジでエルザの事を案じてくれてるんだと思うぜ」


マックスの見た目は20代に見えますが、なにか魔法の力で若々しく見せているのでしょうか?


気になりますが、プライベートな事ですしマックスから話してくれるまでは黙っておきましょう。マックスが何歳でも構わない。彼は優しい人だもの。それに……。


「ジェラール様は昔からお優しいの。ナタリー様にも、いつもたくさんの贈り物をしていたそうよ」


「亡くなったって言ってた婚約者様か?」


「ええ、ナタリー様も素敵な方だったわ。病に罹られて、あっという間にお亡くなりになってしまわれたの。本当なら、今頃おふたりはご結婚されていたのに。ナタリー様が亡くなられてから、ジェラール様はあまり笑わなくなってしまわれて」


「……だからか。なんか同じ感じがしたのは……」


マックスが小さな声でなにかを呟きました。聞き返そうとしたら、曖昧な笑みを浮かべて大した事はないと仰るので聞く事は諦めましたわ。


マックスとジェラール様はどこか似ています。ジェラール様が初対面のマックスに友人になろうと言い出したのは、何か理由がおありなのでしょう。


「わたくしが言う事じゃないんだけど、ジェラール様と仲良くしてあげて。マックスと話す時のジェラール様は、なんだか楽しそうだったから」


「俺にとってもジェラールは大事な友人だ。今度話をしておくよ。今はとにかく、エルザを安全な所に運ぶ。テレーズ様の所で少し甘えて来い」


「お姉様にご迷惑をかけられないわ」


小さく呟くと、マックスが頭を撫でてくれました。どうしたのでしょう?


なんだかとっても暖かいです。


「エルザ、テレーズ様はエルザが甘えてくれねぇってボヤいてたぜ。あの人はエルザの事が大好きなんだから、ちょっとくらい甘えてやれよ。ありがとうって一言言えば良いだけだ。テレーズ様の魔力は上がり続けてる。それは、お互い大好きだって証明になるだろ」


「……そう、かしら」


「そうだよ。テレーズ様にエルザの事、色々聞いた。今まで苦労したんだな。エルザは泣き言ひとつ言わず、ずっと頑張ってたんだってな。だから、テレーズ様もエルザが何をやってたのか知らなかった。結婚して宰相様に色々聞いて驚いたって言ってたぜ。エルザはなんでも自分でなんとかしちまうけどさ、少しくらい人を頼っても良いんだよ。頼むからもっと周りを頼ってくれ。特に俺なんて仕事なんだから気にせず要望を言えば良いんだよ。俺を依頼料泥棒にしないでくれよ」


「マックスには、充分助けて貰ったわ」


「まだまだ足りねぇよ。もっと甘えろ。ほら、行くぜ」


そう言って、マックスはお姉様の元に転移してくれました。お姉様は、泣きながらわたくしを抱きしめてくれて、ああ、お姉様と家族で良かった。そう思いました。お姉様と一緒に居ると安心してぐっすり眠ってしまい、目覚めた時にはマックスの姿はありませんでした。

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