第14話
「世の中にはもっといい男がいっぱいいるぜ」
「そうね、ここに居るお二人はシモン様とは比べ物にならないほど素敵だもの」
「「なっ……」」
あら? おふたりとも顔が赤いわ。って……この言い方じゃわたくしが二人に懸想しているみたいじゃない!
「その! ジェラール様はわたくしを心配して家まで来てくださったし、マックスはなんだかんだとわたくしが一人で生きていけるまで色々教えてくれたし、ふたりとも優しくて素敵な方だと思うわ。でも、その、決してやましい意味ではなくて! わたくし、男性2人にアプローチするほどふしだらではないわ! おふたりとも、素晴らしい方だと言いたいだけで!」
「分かってる、そんな慌てなくても良いから」
「ああ、褒められるのは悪い気はしねぇが、エルザが自分に惚れてると勘違いする程自惚れてねぇよ。幼い頃から尽くしまくった男に捨てられてすぐ他の男を好きになる程、エルザは器用じゃなさそうだしな」
「シモン様に未練は全くありませんわよっ!」
「それも分かるよ。シモンは愚かだね。エルザ嬢のような素敵な女性は滅多に居ないのに」
「全くだ。今頃後悔しても遅えよ」
「シモンは後悔しているのか? 僕が国を出た時には、エルザ嬢の事を散々貶していたけれど……テレーズ様に婚約を申し込もうと言い出した時はさすがに呆れて止めたんだ。それからシモンとはあまりうまくいかなくなってしまってな」
「予想通り過ぎますわね。ジェラール様のお陰でお姉様は好きな方と結婚出来ました。ありがとうございます。間に合って良かったですわ」
「そうか。テレーズ様のお役に立ったなら良かった。僕が止めなければ魔力最高値の夫婦になれたのにと言われたよ。それから、少しシモンが分からなくなってな」
「うわ。すげぇドクズな発言っすね。良かったなエルザ、やべえ男と縁が切れて」
「ホントね。婚約破棄されて良かったわ」
「絶対にエルザ嬢の事をシモンに言わないと誓うよ。シモンに疑問を感じたのはあの時が初めてだった。だが、すぐにエルザ嬢を探そうとしたからシモンは反省したのだと思っていた。エルザ嬢の髪の毛を見つけた我々は、散々泣いたよ」
「反省なんてしてねぇよ。相変わらずシモン様は最低最悪な男だぜ」
マックスが、吐き捨てるように言いました。シモン様に何があったのでしょうか?
「どういう事だ?」
「エルザには説明しても良いっすけど、ジェラール様には言えません。秘密にすると誓えるなら言いますけど」
「分かった。秘密にすると誓おう」
「俺はエルザみてぇな善人じゃねぇんで、口約束は信用しません。魔法契約してくれるなら信用します」
「何故……平民のマックス殿が魔法契約をご存知なんだ?」
「エルザが貸してくれた本に載ってましたよ。さっきも使われましたし。ああ、俺が使えることは誰にも言ってませんのでご安心下さい」
「わたくし、あまり分かってないんだけど……貴族しか使えない魔法があるの?」
「めちゃくちゃあるぜ。魔力は基本的に貴族のが高いんだ。だから、魔力が多い魔法は貴族しか使えねぇ事が多い。そのうち、特権を維持しようと貴族にしか教えなくなっちまったって訳だ」
「……魔法契約は、本に載せないようにしている筈なのだが……」
「エルザは幼い頃から魔力があるのが当然だと教育を受けたようですよ。魔力の有無は成人しないとわかんねぇのに、大量の魔法の本を記憶させたそうです。公爵家秘伝の本とかもあったんじゃねぇっすか? ご立派なご両親ですよね」
「確かに魔法契約の本があったのは覚えてるわ。まぁ、私には意味がない知識だけど」
「魔法が使えなくても魔法の知識は役に立つぜ。相手が使う危険な魔法が分かるからな。例えば、こんな風に」
マックスがなにか魔法を唱えはじめました。これは……拘束の魔法ですね。ジェラール様を拘束するおつもりでしょうか?
「マックス、駄目!!!」
「お? これが何かわかるか?」
「拘束の魔法でしょ?! ジェラール様を拘束するのは駄目よ!」
マックスが呆れながら魔法の詠唱を止めました。
「エルザ……そこは自分が拘束されると思えよ。拘束の魔法は効果範囲が狭い。俺の近くに居たのはジェラール様じゃなくてエルザだぞ。もうちょい警戒心を持とうぜ」
あ、そうでした! ジェラール様とマックスの距離では拘束の魔法は届きません。マックスがわたくしを拘束するとは思えなくて失念していました。
「まぁ、とにかく魔法は使えなくても知識が役に立つことはあるって事だ。んで、ジェラール様は魔法契約を了承してくれるんっすか?」
「……ああ、了承するよ。マックス殿が魔法を使ってもらえるか? そのほうが信用できるだろう?」
「かしこまりました。話が分かりますね」
「マックス殿はエルザ嬢を大事にしているようだからな。悪い方ではあるまい。テレーズ様の信頼も得ているようだしな」
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