第2話

「勘当だ、早く出ていけ」


「全く、我が家の恥ね」


家に帰れば、当然のように勘当されました。お姉様だけは、必死で反対して下さいます。でも、お姉様1人の意見ではわたくしの勘当は覆らないでしょう。


「二度と我が家の名前は出すなよ。私に妹は1人しか居ない。お前は、もう妹ではない」


「待って! お父様、お母様、お兄様! 魔力無しには特殊能力がある人も居るでしょう? 調べて下さいまし! 魔力が無くてもエルザはわたくし達の家族でしょう?」


「テレーズ、甘いぞ。私もテレーズも、父上や母上より魔力量が多い。父上も母上もどんどん魔力量が上がっている。テレーズは、最大値だと大騒ぎしているシモン様と変わらない魔力量だ。テレーズは4800、私は3700、父上も、母上も最近測っていないが3000は超えておられる。当然、エルザもそれくらいあると思われていたから婚約者に選ばれたんだ。それが、魔力なし。どれだけ我が家の恥になると思っている」


「でも、でも! エルザを勘当するなんて! エルザはまだ15歳よ!」


「15歳なら成人だ。放り出されても生きていけるだろう」


「お姉様、ありがとうございます。わたくし、勘当される覚悟はありましたので……大丈夫、ちゃんと生きていきますわ」


「ダメよ! みんなおかしいわ! 魔力が無い人なんて沢山いる! 貴族だって、魔力無しの人もいるじゃない! 魔力、魔力って! わたくしの婚約も、魔力が多い人しか選ばないからロクなのが居ないわ! わたくし、魔力があるってだけで威張る男なんかと婚約したくないわ!」


「テレーズ! 頭を冷やせ! おい、テレーズを部屋に連れて行け、しばらく出すな」


「待って! 待ってよ!」


「テレーズお姉様、ありがとうございます。わたくし、離れていてもお姉様の幸せを祈っておりますわ」


「ふん、嫌味か。早く出て行け。部屋の物くらいは持って行く事を許してやる」


「ありがとうございます。すぐ出ていきますわ」


ま、こんなもんですわよね。

お姉様のおかげで、荷物を持ち出す許可は得られました。着の身着のまま放り出されなかっただけでも良しとしましょう。


我が家は魔力至上主義でしたが、お姉様は味方になってくれましたね。そういえばお姉様は、恋人が魔力無しなのでした。だから、お父様達のようにわたくしを切り捨てなかったのですね。


お姉様は恋人との婚約は認められず、魔力が高い方を婚約者にと勧められております。


我が家で一番魔力が高いお姉様の意見は大抵通ります。それでも、お姉様の恋人は高位貴族であるにも関わらず婚約は認められません。


お父様は、どんどん婚約者候補を連れて来るのですがどなたもお姉様のお心を射止めません。お姉様はせめてもの抵抗だと、自分が認めた人としか婚約しないと仰っています。お父様もそれを許しました。必ずお姉様が気に入る人を連れて来ると連日お見合いさせています。


ですが、お父様が連れて来る方は、どなたも魔力だけは高いけど傲慢だと断られています。


魔力が高いと傲慢になる方も居ますし、周りも咎めません。だから、仕方ないのでしょう。そういった方々にとっては、魔力の高さが全てなのですから。


我が家もそうです。


だから、お姉様は家族から大事にされ、婚約者を選ぶ事も出来ます。そして、わたくしは捨てられます。

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