第41話 お初にお目にかかります May Be!!

かったりーー……。暑ぃ〜〜……。


ケイン殿も人使いが荒いよのぉ……。


「働きたくないでござる」


「この大陸を救うためです。どうかご辛抱ください」


「うぃ〜〜」


目標が見当たらない。


どこまで行けば良いなんて言われてない。とにかく神器を探せとしか言われてない。


無理ゲー乙。


いや……。でもまあ、まだ諦めてはならん。


まだだ、まだ終わらんよ……。


「うぉぉぉ! 赤いバラを100万本集め、ザイテンアラートを入手した私なら必ず出来るっ! 出来るっ! 出来るぞー!!!」


「言葉の意味は存じ上げませんが、カリン様なら必ず成し遂げるはずです。頑張りましょう」


気合を入れ直した私は今、砂漠のど真ん中にいる。


既に6日ほど歩き回っているが、全く手がかりなし、てかある訳ないだろこんな砂漠で。


でも、砂漠を探せと言われたのだからしゃーなし。


「チート能力持ちのケイン殿も神器の場所は存じ上げないのかっ!」


「そのようでございますね。残念ですが、自らの目と耳で探すしかありません」


誰かに噂を聞くなりしないと……。ノーヒントは流石に無理ざんす。


でも……。


「こーんなだだっ広い砂漠のど真ん中で、一体どこに人がいるってんだぁーー!!」


と、叫んだ途端に、シオン殿が私の肩を叩いた。


「カリン様、あちらをご覧ください……」


指を指したその方向を、まーっすぐに目で辿ると……。女のコが一人倒れているではありませんか!


「ななーー!! はよ! はよ! 水ぅー!」


私は急いで駆け寄って水が無限に出てくる壺で水をかける。


「カリン様っ! それではそのお方がびしょ濡れになってしまいますよ?」


「へへっ、でーじょーぶだ。砂漠にいりゃすぐに乾きますぞー。それより、干からびそうなのでとりあえずの処置でございまする」


「う……うぅ……水……?」


「大丈夫でしょうか……。意識が戻りつつありますが」


「ありがとう……。すごく、いきなりで失礼だとは思うんですが……食べ物を少し分けていただけませんか?」


そう言って、シオン殿の方に手を差し出した。


ムキーーッ! 私が助けたのに、もう用済みですかい! ま、食料の管理係はシオン殿なので、正しいっちゃ正しいんですがね。


「勿論でございますよ。こういうときは、干し肉と果物がいいのでしょうか……」


「ありがとうございます……。いただきます」


そう言うと、食べ物を受け取るなり急いでがっついた。


「うぅぅぅ……」


「ちょま! いきなりどうしたし!?」


いきなり小さくうめき出した。


「完全ッ復活ぁーーつ!!」


おおぅ、キャラ濃ッッ!!


「助かりましたぁーー! ありがとうございますぅー!!」


私達の手を握って乱暴に振り回す。


「愛情表現が強いですな……」


「私っ! メイミって言います! めいびー!」


めいびー? これまた特徴的な語尾ですこと。


「これはこれはメイミ殿、わたーしはカリンと言いますのです」


「えっと……。この流れは乗った方がいいのでしょうか? 私は……シオンと申しますですわ」


おぉ、シオン殿神対応。


「早速なんですけど、帰りたいと思いますので、是非ついてきてください! この数字の通りに行けば大丈夫です!」


数字……?


と、周りを見渡してみると……。


…………。


数字が浮いてる。


1という数字が一歩間隔でめっちゃ浮いてる。


「ちょ待てよ、なんじゃありゃ」


「摩訶不思議でございますね」


「これは私の能力なんです。お母さんとお父さんが勇者だったからかな? 生まれつきこんなことが出来るんですよ」


「はえ〜。こんなことが……って! 親が勇者!? 能力がある!? どゆことー!?!?」


初耳なんですけど〜。能力って親から遺伝することもあるんでぃすか〜?


「とても興味深い話でございます。是非ともお聞かせください」


これはいい〜! ケイン殿にこんな凄い情報を持って帰れば……。なにかご褒美がワンチャン貰えますな!


文句言わずに砂漠を歩いてた甲斐があり申した!


「いや〜そんなに喋ることもないんですよぉ〜強いて言うなら、この能力はとても便利だってことかな? めいびー?」


「では、その能力は、一体どういったものなのでしょう?」


私達は歩きながら話をする。で、不思議なことに、私達が通ったところは1だった数字が2になってる。


数々の推理小説で身につけたIQ150の頭脳を使えば……。分かったぞ。メイミ殿がここを通った回数が表示されてるに違いない!


「私のこの力はですねぇ、どんなもののどんなことでも数字で表示することが出来るんですよぉ、めいびー」


めいびーって語尾、割と良いなぁ、勝手に貰っちゃおうかな〜。


「実際、今浮いてるこの数字は、私がここを通った回数を出してるんです。これで今まで歩いてきた道が分かるってことなんですよ〜」


「ビンゴ〜〜。ビンゴだよぉ〜〜」


「え? 急にどうしたんですか?」


「あまりお気になさらず。いつも通りのカリン様でございます」


私の扱い雑っ! まあそれも致し方なし。


「話を戻しましょう。私にはあまり使い道が思いつかないのですが、それはどういった状況で使えるものなんでしょうか」


「例えばさっき食べ物を貰ったとき、持っている食べ物を表示しました。なので、どちらが食料を持っているのかが、予め分かっていたということなんです」


なるほど、めちゃ便利じゃないですかぁ。


よくネットで見るやつだと、チョメチョメの人数だとか、寿命だとかですけれど、なんでも分かるんですな〜。


「ならば、私の寿命教えてくださいな。未来を知っていれば、覚悟を持って人生を謳歌出来るってもんですよ」


「ごめんなんですけど、それは出来ないんですよ……。それに、仮に知ったとしても楽しいですか?それ」


「なぜ出来ぬのですかっ!?」


「メイミ様、この口調もお気になさらず。決して怒っているわけではございません」


「あ、はい。なんとなく分かります。で、分からないのはですね、何故か未来のことは分からないからなんですよ。現在含め過去のことしか分かりません」


「そうなのですか。それでも十分素晴らしい能力であることには変わりませんね」


裏山〜。私も何かチートな能力が欲しいのぉ。


「私達ってぇ、命の恩人じゃないですかぁ〜。少しだけ、そのお力貸してもらえないでしょうかぁ?」


「勿論大丈夫ですよ! 逆に、何かお手伝いさせていただければと思っていたんですぅ!」


ええ子やぁ……。気に入った!


「でもその前に、一度家に帰らせてください。お母さんが心配してるかもしれないので」


「勿論でございます。ご両親様にも一度挨拶させていただきたいと思っていたところです」


「お父さんはまだ帰ってきてないから、お母さんしかいないんだけどね、お話聞いたら面白いと思うよ」


私も、元勇者の母というのには興味がありますな。見せて貰おうか。元勇者の母上の性能とやらを!


そして、砂漠を出たあたりで、ここからは道が分かるってことで、メイミたそがとりあえず数字の能力を解除しまして。色んな能力の使い方を見せてくれました。


私たちの歯の数とかは、そりゃ勿論全員同じでしたよ。他にも、初恋をした年齢とかもやってもらいましたが、私には何も数字が出てこなかったんですよね〜。


初恋まだだからね、仕方ないね。


なんで初恋の年齢なんて見せてもらったのかっていうと、特に深い意味もなく、ただ気になったからですな。


イマイチ恋というものが分からんので、他の人を参考にしたいと言ったら、実際にやってくれました。


「シオン殿に恋の経験があるとな、はて、その殿方はどのような方で?」


「少し気恥ずかしいですが」


ゴクリ。


メイミ殿も気になっている様子で。シオン殿はなんせ6歳での初恋らしいですのでね、そりゃ気になりますよ。


ちなみに、メイミ様は16歳らしいですねぇ、詳しくは知らないですが平均くらいでしょうか?


まぁ、私は24で、恋は未体験です。


なんか、恋は未体験って、なんか曲の歌詞にありそう。メモメモ……。


すると、シオン殿がついに重い口を開いた。


「私の初恋は……。神様です」


…………。


こういうオチかい。


「神は私たちを愛していらっしゃいます。そして私たちもまた、神を愛さなくてはならなく……」


とまあ、そんな恋バナに花を咲かせつつ。といいつつ、私はハブられながら、歩いて、ようやくメイミたんのご自宅に。


「初めて買った〜〜。届いた先が〜〜。実家〜〜!!」


と、歌いながらドアの前まで来ました。


歌ってる間、二人は私のことを訝しげな目で見るんですよね〜、これが。


よく妄想するんですけども、もしも私の脳内を誰かに見せたら発狂するんじゃないかってよく思うんすよね。変な知識ばっかつけてると、脳内でずっとグルグル回って困りますよ〜。


まあ、隙自語はここまでにしておいてと、早速ドアを開けて三人で入っていきませう。


「失礼しますぅ……」


「お邪魔いたします」


「お邪魔するんだったら帰って〜」


「それでは失礼しました〜」


いやいや、帰ってはいけない。


「冗談だよ冗談! どうぞ〜」


そこにいたのはラフな格好のナイスバデーお母様。


「いらっしゃーい。初めましてだね、お嬢様たち〜」


「あはは、とてもフレンドリーなお母様ですこと」


フレンドリーというよりグラマラス。そんなことを思いながら、その少し日焼けした体を見てみる。


女性とは思えないほどガッチリしていて、正統派戦闘系女騎士みたいなイメージ。女だけど惚れる!


「凄く丁寧な言葉遣いだよね、うちの子も見習って欲しいくらい」


「あざす!」


「撤回」


撤回されたンゴ。


「お初にお目にかかります。メイミ様のお母様でいらっしゃいますか?」


「まあね〜、自慢の娘なのよ、ミーは」


「ちょっと! 人前でミーって呼ぶのダメ!」


「じゃあメイメイで」


「それもだめ!」


「ここは一つ、ミスティメ……」


自重しろ、私。


って、誰に伝わるねんこのネター!


ま、パロネタ云々は大体が自己満足だからなぁ、人前でやっても気味悪がられるだけ定期。


「それでは込み入った話になるのですが、メイミ様の能力について、お母様はどのように捉えているのでしょうか」


シオン殿は相変わらずがっついて質問するタイプですよな。穏やかで優しい聖母様ですけども、怒らせると怖そうなのだ。


「え〜。昨日の夜は友達の家にお泊りするとか言ってたけど、まさか言い回ってたわけ? あんまり言わないで欲しいんだけどな〜」


「仕方なかったんだよぉ! だって死にそうだったんだもん! めいびー……」


「全く、何やってんだか……」


実際あんな砂漠に行って何をしようとしていたのか……。分からぬ。


「あー、ごめんね。質問に答えなきゃね。まあ、びっくりしたのはこの子を産んでからだよ。色んなものに色んな数字が出てくるようになっちゃったんだから」


はえ〜。


「最初は呪いか何かかと思ってたんだよ。でもね、物心付き始めてからなのかな? 頻度が一気に減ってさ」


「あ! その時覚えてるよ! 自分で知りたいことを、数値でならなんでも知れるようになったの! めいびー!」


「じゃ、その時に能力を操れるようになったと。まあ、生まれつきだね。神様の気まぐれってやつかな」


「神様は人間に多様性を与えます。その多様性こそ、人類がここまで繁栄した理由なのです」


と、シオン殿が神様ワードに食いつき、有難きお言葉みたいなことを申されます。


なるほど、タメになりますな。名言だぁ……。


「多様性で説明出来るものかなぁ? この能力は……」


「ま、いいじゃん、なんでこんな力があるとか、そんなのは〜」


メイミ様が話を逸らす。


「ちなみに、先ほどからの言い草、母上様には特殊な能力はないのでしょーか?」


「そうだね、私は生まれつきの勇者だけど、そんな能力は無かった。でも同僚に二人、変わった力を持った人がいたよ。運がとてつもなく良いだけ? の人と、重力を自由に操る人。すごく強いんだよこれが。」


「運がとてつもなく良いという方が気になりますね。負けたことが無いのでしょうか?」


「そう……だね。負けたことは無かったよ。ただ、運が良すぎて大金持ちになって、もう戦わないって言うようになっちゃったんだよね、それからは隠居生活で、音沙汰も無いし連絡もとれない」


「それでは、重力を操るという方は?」


「そっちも連絡が取れないまんま、全く……。二人が力に溺れて、魔王討伐を完全にほっぽりだしてから全く戦いにならなくなってね、もう一人と一緒に勇者を脱退したのさー」


「で、そのもう一人が、メイミ殿のお父さまと……」


「うん、そうだよ」


「「キャーーーロマンティックぅ〜!」」


私とお母様でハモってしまった。これで盛り上がらない方がおかしいだるルォ!


「さっきから三人で話してばっかじゃない?」


メイミ殿の言うとおりですな、そろそろ本題である神器の場所について……。


「それでは能力を少しお借り……」


「じゃ! ちょっと部屋行ってくる!」


「ちょっとぉ、あんな汚い部屋、あんまり他の人に見せないでよ。ここでお話しなさい」


「ん〜。やだー!!」


そういうなり私たちの腕を掴んで走り出す。おお! 愛の逃避行みたいですな!


「あ! もぉ〜」


お母様も諦めたご様子。


さて、早速部屋に入った感想でーすーが……。


「うわぁ……こ、れ、は、ひ、ど、い」


思わず……。いや、普通に声に出てしまった。


「とても興味深い汚部屋ですね〜」


うん、まさに汚部屋の名にふさわしい光景が広がっている。床には本と袋、かごに靴……って! なんで石があるんだYO!


それに、汚部屋特有の、ベッドの上は安全地帯というジンクスは完全に否定されております。ぬいぐるみ沢山です。布団も枕もカオスです。


「可愛らしい小さなお部屋ですね。窓から指す太陽が心地よさそうでございます」


常にポジティブなシオン殿も部屋の内装についてはノータッチです。リカバリー不可能なんですこの部屋は。


「結構居心地いいんだよね。落ち着く〜!」


と、いきなり床で仰向けになり、大きく伸びをする。腹チラしている無防備な姿が、部屋中にセーブポイント並の安心感をもたらしてる気がする、かっこ当社比。


部屋のガラクタを押しのけて寝転がるメイミたん。萌えと萎えの境界線で反復横跳びしてますよ。でも可愛いからヨシ。


平和だなぁ。

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