第26話 Hone Mind
レイ達と別れて、俺たちはすぐに野宿の準備を始めた
いつも通り、ルシアが食材と調理器具をカバンから取り出し、料理を
また、食糧の備蓄が無くなってきたので、俺とスレイは、周辺のモンスターを倒し、食えそうな物を探す
そして、ギーチェは野菜を生やしては収穫していた
「あの鎌さえあったらさぁ〜、あっちゅーまなのに〜」
文句を言いながら色んな野菜をもぎっている
いつも唐辛子は欠かさない、なんとか俺たちは食べないという意思表示が伝わり、自分の分だけ採っている
「美味しいのにねぇ...」
ギーチェが臨時加入してからというもの俺たちは、肉ばかりの食事に野菜が加わり、お肌ピチピチだ
特にルシアなんかは顔が光ってみえる
「ほらほらちょうちょさん、こんなところに来ても蜜はありませんよ〜」
時々虫と話している。幼いと言うべきか、老いと言うべきか
.........
......
...
「あのねぇ!」
「あー、これは申し訳ない」
俺には少々、不慣れな武器だったようだ
俺が振りかざした常闇斬は"コイツ"の頭皮スレスレ、髪の毛を全てかっ攫っていった
「あーあ、どうしてくれんのこれ!ギーチェを呼ぶ!?それとも"リッカ"!?」
リッカ、聞いたことない名前だ
「お前以外誰とも会わないからいいけど、自慢の髪が!クソッ!!」
かなり怒らせてしまった...
謝らないといけないんだが、ふと思ってしまった
常闇斬というより、床屋さんだな
プッ
「おーい、なに笑ってるんだよ!お前にもやってやろうか!?」
「遠慮する」
「遠慮するじゃねーんだよ!!!」
...
沈黙が流れる
「そんなことより、早く"神器"を集めないといけないんだ、ほら!さっさと行け!」
「俺に言わせて貰えば、名前を教えてもらうこともしてくれないヤツに命令されたくない」
「憎まれ口叩きやがってー!僕の名前はハイトだよ!ハ!イ!ト!」
「教えてくれてどうも、それじゃ行ってくる」
頭に血が上ると口も緩くなるっぽいな。単純で分かりやすいヤツだ
「ちょっと待て、そんなことより」
「ん?」
「ギーチェが魔王軍に送っていた作物を作らなくなった今、そろそろ向こうも動き出す頃合いだと思う」
「向こうって言うと、魔王のやつらか」
「ああ、そうだよ。女の子達とイチャイチャしたいなら今のうちに済ませておくんだね。本格的に動き出せば...」
皮肉は聞かなかった事にしよう
「また、戦争が始まる...」
「だが、今回は代表戦だろう。勇者が"出揃った"今、勇者以外の戦力は大したことない」
「逆に、勇者が負ければ」
「それは、抗う事の出来ない大量虐殺を意味する」
......
「そうか」
「そのためにも、フラワーフラグメンツ達には、早く"目覚めて"欲しいんだけど」
「それは、一体いつになるやら」
「トリガーは人によって違う」
「俺のように、"最初"から、持っているパターン」
「そして、ある時急に"目覚める"パターン」
...
「考えていても仕方ない、なるようになるさ。そろそろ行く」
「ああ、そうだね、健闘を祈るよ」
あと、3つ
...
......
.........
いやー食った食った
四人で焚き火を囲んで向かい合う
パチパチと音を立て、辺りをオレンジ色で照らす
今日は運良く猪を見つけたので、焼いて食べた、余った分はとっておいてまた後日の飯にする。初めての体験なので、上手くいくかは分からないが、次の町に着くまでの辛抱だ
「ふー、体も今の状態に慣れて、そろそろ強敵と戦いたいな、リーダー。次はどうする?」
強敵と戦いたい、その気持ちは十分に分かる。しかし贅沢にも俺は、倒せる強敵を求めているんだ
ギーチェが独占欲かなにかに取り込まれ表れた、二重人格のかたわれだと思われるパラノイアギーチェ
とても倒せる相手じゃなかった。もしケインがいなかったら、話の通じる相手じゃなければ...
...
俺たちが強くなるってのは、どこまでがゴールなのだろう
レベルの限界か、練度を世界一にするか、それともスキルか。いずれにせよ俺たちはまだまだ弱い
俺にも、ギーチェやケインみたいな力が...
...
あるのだろうか
あの時、走馬燈のように流れ込んだ記憶、人間の持つ力
一度死んで、蘇る。そして、大いなる力を手に入れる
俺もいっぺん死んでみるか?なーんて
「ほーら、何ぶつぶつ言ってるの?」
「なんでもねぇよ」
「ふ〜ん、ならいいけど」
ならってなんだよ
「結局、強敵と戦うなんて、狙ってするものじゃないって事だな」
「...」
ギーチェがこちらを見ている
何か伝えたいのだろうか、聞いてみようと思ったが、すぐに俯いてしまった
眠いのだろうか、それにしてはなんだか少し、悲しげな様子だった
「ふー...」
「もうさっさと寝ちゃわない?明るくないと冒険なんて出来ないんだから」
「同意だ」
「よし、さっさと寝るか」
「焚き火って付けっぱなしにしとかないと、魔物が襲ってくるかな?」
よくよく考えたら、旅に出てから夜の野宿は初めてか。体感よりもあまり日数が経ってないのも驚きだ
草の上に横になる
「どうすっかなー」
睡魔が襲う、3人に任せて寝てしまおうか...
「だいじょーぶ、私が、周りに低木を生やしておけばぁ〜」
「なるほど...そのアイデアがあったかぁ...」
「ナイスだ、相変わらず頼りになる」
「ホントね、このまま私達と勇者パーティーやってくれたらいいのに!」
「それは出来ない。なんせ、勇者の掟だからな」
...
「だが、俺の推測は、その掟が出来たのはチーム内でのわだかまりが出来ないようにするためって感じだ。もしそれが正しければ...」
「私もぉ、みんなと一緒のパーティーになれるってことぉ!?」
「いや、それは無いな」
「え...」
「どうしてだ、リーダー」
出来ればパーティーに入れたいさ、ギーチェが居るだけでケインに勝てる確率も跳ね上がる。食い物にも困らないし、旅の中でも活躍してくれるだろう
だからこそってのもある。それは俺たちの成長を阻害するんじゃないかって
だが、やっぱり一番は...
「俺は、人を信じる事をお前に教えてやりたいと思ってるんだ。自分が思ってる以上に、人ってのは単純で、お人好しだってな」
「私ぃ、エルフなんだけどぉー」
「今はそんなことにツッコむなっ!」
「え〜でも気になるぅー」
「とりあえずっ!お前には他のヤツともっと話して、慣れないといけないんだよ!いつかどっかの町に定住しないとな」
「みんなはぁ?」
「俺たちは現勇者だ。お前とは違って目的もあるし、魔王討伐が終わったら王宮でもなんでも手に入るだろう」
...
「別れというのは、いつかは必ず訪れる。その時まで、共に旅をすればいいだけの話だな」
...
「そうね、今からバイバイすること考えてても、意味ないよね」
...それもそうだ
「そうだよねぇ、今一緒にいられるなら、それでいいよねぇ!」
「ほらほら、さっさと寝る!てか寝ろー!」
「ルシア、疲れが溜まってるのか?」
「眠いだけよっ!」
...
俺はすっかり睡魔にやられていた
.........
......
...
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