第19話 Defiler Enemy

なんてことだ、ギーチェが変わってしまった...


ギーチェをもとに戻す方法もだが!まず今は殺されそうな俺たちが自分の身を護らなければッ!!


「お前ら戦闘態勢ッ!!ルシア!俺にありったけの補助魔法掛けろ!!!」


「でもっ!相手はギーチェちゃんだよ!?」


「いいから早くッ!!スレイ!お前は連絡魔石でケインを呼べッ!悔しいが頼らざるを得ないッ!」


「な...お前にはプライドという...いや仕方ない、分かった、急ぐ、時間稼ぎを頼む、リーダー...」


「任せろ!」


ケインを呼ぶという判断は自らの成長のチャンスを逃してしまうかもしれない。だが、命あっての成長だ、背に腹は代えられない


しかし、あの大鎌をどうやって防げというんだ...


やはり、普通に考えれば防御壁...しかし俺たちは誰も持っていないスキルだ


「私、分かったの。好きな人は自分から離してはいけないって、ずーっとずーっと一緒にいないと。私のことを嫌いだって思わせないように、思ってても、分かるように」


「好きな人...?俺に惚れたってことか!」


「ううん、みんなだよ、みんな大好き。私のおむすびを食べて、笑顔になってくれる。私のお話で喜んでくれる。そんなみんながね?」


ギーチェに必要なのは、信じられて、いつも近くに感じられる人なんだ...


「私がみんなを、喜ばせてあげられて嬉しかった。けど、すぐに帰っちゃうから、みんなは本当に喜んでたのかな?って思ったんだ、あの喜びは本当?嘘?」


「本当に決まってるだろ!俺は嘘つくみたいな、そんな器用なことできねえよ!」


「とはいっても、嘘かって聞かれて嘘だって言う人、いないよね。やっぱり、疑問を抱いちゃいけないんだ、疑問を抱かないためには、ずっとそばにいてもらわなきゃ」


「なら!攻撃する必要ないだろ!」


「動かない程度に痛めつけたら、逃げることも出来なくなるでしょ?そしたら、みんなのこと思いっきり抱きしめられるよ」


「言ってることがめちゃくちゃだ!恐怖で支配して、それが本当に友情かよ!」


「友情でも愛でもなんでもいいけど、私はみんなに笑って欲しいだけだよ。そのために...私を知ってもらう、時間がなんとしてでも必要なんだよぉッ!!!」


駄目だ!完全に頭に血がのぼってやがる!


すると、俺の顔を斬撃がかすった


クソッ、耐えるったって、どうすりゃいいんだ


待て、まず落ち着け...


...


ギーチェの目的は俺たちを動けなくなるまで痛めつけること。つまり、俺がよく動けば2人はノーマークになるんじゃないか...


なら、アイツに向かって走るのみ!


「うぉぉぉぉおおおお!!!」


「私の所に来てるのは私を抱きしめるため?それとも、叩き切るため?前者なら嬉しいけど、後者なら嫌だよね。やっぱり抱きしめるのは私の役、全力で阻止させてもらうね」


俺は走る。しかし、抉られた地面に足を取られた


思いっきり膝をついて転げる。それでも、すぐに立ち直って、走り出す


元の場所からここまで、半分は進んだ、あと半分!


「そんなにちょこまか動かれるなら、直接行った方が早いよねぇ〜!」


なっ!

ギーチェがこっちに向かってくる!これは予想外ッ!


「あぁ!やっぱり可愛いッ!その顔、泣いたらどんなになるんだろうね!でも、やっぱり最高なのは笑顔だよね!どうしたらいい!?快感を与える?あぁッ!その顔!見たいッ!私のものになってぇ!!!」


完全に壊れちまってる...どうすればいいんだ、俺はまともに攻撃も出来ないぞ...


直接大鎌で攻撃してくる、しかし、避けやすさは倍増した


俺の剣は比喩的な意味じゃなしに諸刃の剣だ。峰打ちなんてものはない、だから、持ち手の部分の打撃が一番手加減する攻撃だが、ギーチェは手加減の攻撃くらいじゃ気絶どころか全く効かない!かといって剣で攻撃したって傷つけるだけだ!


しかし、今の俺は時間稼ぎさえしていればいい。好機は必ずやってくる!


「動か...ないでよ!落ち着いてれば痛いことしないのに...」


「あいにく、大鎌で斬られると痛いんでね」


「痛いのは最初だけだよっ!そしたら私がレイズくんのしてほしいことをしてあげる。ご飯一杯食べてもいいし、マッサージしてもいいよ、笑顔になって、みんな幸せ...どう?良いと思わない?」


「俺には魔王討伐の使命があるんだよッ!そりゃあな、俺だってやりたくねえけどよ、俺の愛した、1つの家族の願いなんだッ!」


「そんなの、しなくていいよ、今は平和なんだから、ね?」


今までの俺はそんな意識だった...だが、今は...違う...


「リーダー!連絡がついた!もうそこまで来ているらしい!」


「レイズ、待たせたな」


その時、ケインが単騎でやってきた、走ってきたのか?


「「って早ぁ!?」」


「レイズ!俺だってコイツは抑えられるか分からない、なんとか説得するんだ!」


説得って言ったって...


「ギーチェ!俺たちが戦う必要なんてないだろ!?まず落ち着いて話をしてくれ!」


「だって逃げちゃうでしょ?ずーっと一緒にいてもらわないとね、だから、一度大人しくさせないと」


「レイズ、ちょっと離れてろ。本気を出す」


「お前、ギーチェを傷つけるなよ?」


「承知の上だ」


「そっちのお兄さんも、久しぶりだね。来てくれるなんて思わなかった。でも、今はフラワーフラグメンツのみんなが欲しいだけ。だから、お兄さんには容赦しないよ?」


「俺も本気を出させてもらう、来いッ!」


次の瞬間大鎌がケインの回りの地面を抉った。恐らく、牽制のためだろう。しかし、ケインは全く怖気づかない


『防御力強化』

『オートガード』

『スピードアップ』

『マリオネット』


ケインが4つものスキルをクールタイム無しで一瞬で使った、だが、マリオネットってなんだ?


その答えはすぐに分かった。ギーチェが鎖みたいなもので繋がれている。手首両足が亜空間みたいなところから出てきた鎖で繋がっている


「こんなの効かないよ」


手首のスナップで振った大鎌がすべての鎖を一度に切った。リーチ、精密性だけでなく、凄まじい攻撃力も持っているということだ


「そのスキルいいね、私も欲しいや。でも、私の強さはこれだけじゃないからね?」


スキルを羨ましがってる理由って...ヒィ...


「ミサイル生ーえろ!」


はい?


その時、畑から小型ミサイルが30本生え、そして、一斉に発射した!そのミサイルはケイン目がけて飛んでいく追尾弾!


『弓矢召喚』

『攻撃力強化』

『炎属性付与』

『精密射撃』

『連射射撃』


ケインが矢尻の燃えた弓を放つ、すべてミサイルに命中し、空中爆発を起こす


「大木生えろっ!」


間髪入れずに次の攻撃。ケインの足元から大木が生え、ケインに打撃を与える。さらに、未だに空高く成長している


これは、流石にまずいか?いや、今こそ説得のチャンスだろうか?


『滑空』


ケインが上から降りてきた


「オートガードが無ければ即死だった」


即死!?そんな攻撃だったのか今のは!?


『マリオネット』


「そんなの効かないって言ってるのに...!?」


マリオネットに生み出された鎖は大鎌に繋がっていた、そして、強く引っ張られている


「ちょっとでも振れば斬撃が発生するんだろ?なら、こうやって引っ張ってしまえば、振ることは出来ない。それに、離してしまえば俺のものだ」


「なら、この鎌はいらないや」


鎌を手放す、そして、鎌は宙ぶらりんになっている


「爆弾はーえろ...」


爆弾が生えて、ギーチェがそれを手に取り、ケインに投げつける


思いっきり直撃


『爆破耐性』


「効いてはいないが、このままじゃ埒が明かないな、俺自身、攻撃があまり得意じゃないんだが」


なっ!体に急に力が!


「フラワーフラグメンツ!お前ら3人であいつを取り押さえろ!」


「はいよ!」「了解」「分かった!」


俺たちは、走ってギーチェの元へ


「来るな来るなぁ!」


ドゴッ!


ドゴッ!


ドゴッ!


ドゴッ!


足元から木が次々と生えてくる。当たればただじゃ済まないのは分かっているが、止まるわけにはいかない!


「もうっ!いいよ!」


次の瞬間、ギーチェの周りを囲むように木が生える


その木に隙間はなく、

その木はとてつもなく高い


だが、スピードアップした俺らは、こんなもので止められない!


「お前ら気張れッ!この木を登るぞ!」


「「えぇぇぇ!!!」」


俺たちは勢いを殺さず、木を走って登る


「ケインの魔法、どうなってるのよこれ!」


「流石としか、いいようがないな」


そして、俺たちは木を登っていった


これが、ギーチェの自分を守るための檻であり。一人になるための柵であるなら、俺たちは中に入って、共にいなくてはならない


「待ってろよ、今すぐお前のその心、助けに行ってやる!」


俺たちは、彼女に会いに行く


彼女を、救うために

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