第5話 好感度5

「ちょっといいですか?」


 その日、ついに変化が起きた。昼休み、氷川が話しかけてきたのだ。


「え? 何?」


 俺は少し期待しながら、氷川の方を見る。


「この前、アナタが私にスマホで見せたもの。あれ、なんですか?」


「え? あー……いや、別に大したものじゃないっていうか……」


「答えなさい」


 と、顔を近づけて睨む氷川。俺は思わず怯えてしまう。


「い、いや……その……見せると、その好感度が上がっていくアプリっていうか……」


「は? なんですか、それ? どこの会社が作ったんですか?」


「いや、その……俺が作ったというか……」


 俺がそう言うと、氷川がしばらく俺を見る。その視線は、哀れなものを見るような視線だった。


「……そうですか。前から思っていましたが、可愛そうな人ですね。アナタは」


「はぁ? お前、それ、どういう意味で――」


 と、俺がそれ以上喋るのを、氷川は制止する。


「どうもここ最近、アナタの行動が不快だったので、気になっていたのですが、理由がわかってすっきりしました。大方、自分の作ったアプリが私に作用しているか、確認したかったのでしょう?」


「そ、その通りだけど……」


「では、これからは確認する必要はありません。私のアナタに対する好感度は、これまでもこれからも0です。上がることも下がることもありませんから」


 そう、心底俺のことを軽蔑したような嘲笑を浮かべて、氷川はそのまま教室から出ていってしまった。


 俺はスマホを見る。アプリの数値は「5」となっている。


「……数値、増えているんだよなぁ」


 しかし、実際には、仲良くなるどころか、むしろ、嫌われているようにも思える。本当にこのままで大丈夫なのだろうか?

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