かえりみち

@nerimono5

〜町〜

.......

沈黙した数十秒間の間、彼女は目を覚ました。

そこはやけに気味の悪い路地裏。暗くて 明るい路地裏。

底にポツンと立っている彼女。

黒いショートカットに紫色のレインコート。

それは幼く見え、又 表情は決して明るいモノとは言えないものだった。

そして彼女は周りを見渡すと、近くのゴミ箱に掛けられてあった

黒色のバックをからった。

にっこりしたような仕草を見せる。

まるで初めてリアクションを取ろうとしたかのように。

路地裏の中を隅々まで探索して彼女は遂に外へ出た。


✡✡✡


外の景色と言うのは決して美しいものでは無かった。

辺り一面にギラギラと輝くネオンカラー、

そしてそれらを覆い尽くすかのように降り注ぐ霧雨、

見ていて吐き気がしてもおかしく無いぐらいの気味の悪さだった。しかし彼女はまるで"この場所を知っている"かのように歩き出した。それは強引で冷酷な兵士のような歩き方だった。

そして彼女は一人、ピンク色の渦渦へと足を踏み入れた。


✡✡✡


彼女は歩いている。

霧雨で静かに濡れた地面を歩いている。

それは薄気味の悪い腐った街で。

一人孤独に、ただ理由もなく歩き続けている。

ふと室外機から腐った生温い風が彼女のレインコートにあたる。

その事に彼女は気づかなかった。いや、気づきたくなかったのだろうか。そんな議論を切り捨てるかの様に彼女は早足で進む。

月が深紅の様に輝く。

だいぶ歩いたところ、やけに車が通るようになった。

しかしそれは、まるで夜な夜な道を歩いている一人の少女に気づかないように影が消える速さで駆けていった。

否、彼女には彼らが自分に対して嫉妬感を持っていること覚えていた。

よく人は1人になると 生きることが出来ないと言われる。

その状況に、彼女はいる。

それでも彼女何かを求めるようにただひたすらと 歩いていた。



稀に窓から"何か"が彼女を覗いている。

それは言葉に表せれないもの、要するに人ではなかったのだ。

魑魅魍魎

彼女が改めて後ろを振り向いた時不思議なことに気味の悪いネオン街はなくなっていた。それとも 消された?

そして彼女が首を戻した瞬間ありえないことが起きた

目の前が森になっていたのだ。

それなのに彼女は別に驚いていなかった。

まるでこの場所にたどり着くというシナリオを知っているかのように。

彼女の右腕から霧雨の雫がした垂れ落ちた

木々で生い茂っている。不思議で不気味な雰囲気でまるでこちらを呼んでいるかのように。

バックがほんのり濡れていた。

それに彼女は勿論気づいていなかった。

そして深い霧のたちこめた樹海の渦へと彼女は歩みを進めた。


✡✡✡


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