第3話 俺のチートはトリバゴより強い!

働いたらマジで負けでしょw


どーせ、幾ら頑張っても上級国民共に搾取されちゃうんだからさあ!!




異世界行ったらさあw


チート能力を利用して、カネと女を独占してやるんだw


僕は何もせず、ただ寝っ転がってw


あくせく働く馬鹿どもから搾取し続けて、死ぬまで好き放題してやるんだ!


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ギルドの美人受付嬢。


というのはお約束だが…



うーん。


何かこの女の人、ちょっと年齢行き過ぎちゃって無いか?


ぱっと見た所、40代中盤は超えてそうなんだけど…




「冒険者ギルドにようこそ。


新規の方でしょうか?」


【またえらくひ弱な不細工が来たねえ。】




くっ!


ひ弱な不細工で悪かったな!


反論出来ないのが辛いぜ…




『あ、あの買取…』




コミュ障の俺は本来、知らない相手には単語でしか話せない。


これでも頑張っている方だ。




「ああ、買取利用ですね。


この場に現物はありますか?」


【そりゃあそうよね。 


流石にこんな雑魚っぽい子が冒険者登録なんてある筈ないよね。】






失敬な…


いや、雑魚だけどさ。


それにしても相手の本音が聞こえるのも考え物だな。


地味に辛い。






『あ、あの毛皮…』




そう言って俺は解体屋のおっさんから貰った毛皮をカウンターに乗せた。




「あらあ、綺麗にカットされてますねえ。」


【こんな良質の毛皮。 そのまま軍隊に納品出来ちゃうわよ。 、何でこんな子が? 盗品?】





え? 疑われてる?


いやいや。


貰ったの不良品だろ?


おっさんが間違えて正規品をくれたとか?


参ったなあ。


普通そんなの間違えるかね。





『か、解体屋の手伝いで貰いました。


不良品だから廃棄するって。』





「ああ、現物支給品の持ち込みですね。」


【わかるわかる。 こういうひ弱な不細工は大抵日雇い労働者として一生を送るのよねぇ。】





くっ!


心の中で言いたい放題言いやがって!


反論出来ないのが悔しいー。





「おかしいですねえ、本当に不良品ですか?


確かに僅かなキズが見えなくもないですけど、こんな美品だったらみんな軍納品してるレベルですよ?」


【…盗品かしら? 職場からくすねた? 


職場に廃棄届を出して美品を横領した? なんかこの子姑息な顔つきしてるし。】





くっそ、この受付おばさん。


姑息な顔って何だよ!


反論出来ないけど!


人を顔で判断するなよ!





『城門の入り口から入ってすぐの解体屋。 


ヒゲの親方が1人で作業してたたから…』





「ああ、ありますね。 城門脇の… 」


【ああ、城門脇。 底辺労働者の巣窟。】





なるほど。


あの辺、地位低いのか…


街の入り口なんだから、もうちょっと綺麗にしたらいいのに。





「分かりました。 では計算しますね。


中サイズスクエア熊毛皮1枚美品、35000ウェンを支払います。


同意ならこの書類にサインして下さいね。」


【ま、軍からもせっつかれてたしね。 丁度良かったわ。】





『え!? 35000ウェン?』





「はい? 適切な相場だとは思いますが?」


【おいおい底辺作業員がギルド査定にイチャモンかぁ?】





『い、いや。 親方が7000ウェンくらいだろうって… 言ってました…』





「ああ、傷物ならそれくらいね。 でもこういう美品はちゃんと満額出すから。


親方さんにも、出し惜しみはやめてって言っておいてね。


今、軍需品足りてないのは知ってるでしょ?」


【末端の作業員共がトロトロしてるから、私達ギルド職員がとばっちり喰っちゃうのよねぇ。】





『あ、はい。』




ふむ。


この街は物不足によるインフレ状態と…。


覚えておこう。





受付のおばさんは無造作にコインを卓上に置いた。





「ちゃんと確認して下さいねー。


後から何か言われても対応出来ませんからねー。」


【よーし、今日の業務終了っと。 あー、疲れた。】





俺が手に入れたのは3枚の小型金貨と5枚の銀貨。


つまりこの小型金貨が1万ウェンで銀貨が1000ウェンだ。


覚え易くていい。


もうレート計算面倒くさいから、俺の脳内では1円=1ウェンで固定させちゃおうか…?


仮に円とウェンが等価だとすると、異郷で所持金35000円…


まあギリギリアウトだな。






『あ、あの! 


や、宿。 ま、まだ!』





「はい?  貴方、最近街に来た人ですか? まだ宿泊所みつけてない?」 


【おいおい宿なしかー?  マジかー。 問題起こすなよー。】





『は、はい。 あんまりこの街のことわかって無くて。』





「大丈夫大丈夫。


他の街と一緒ですから。


この街でも宿屋はちゃんと白い屋根ですから。


ギルドを出たら奥の中央広場に向かって下さい。 


乱立してるからすぐわかりますよ。」





おばさんは言い捨てるとカウンターの奥に引っ込んでしまった。


どうやら買取窓口は夕方で締まってしまうらしい。


冒険者ギルドへの登録は見送り。


また今度、気が向いたらね。





宿屋は簡単に見つかった。


ギルドの外に出ただけでも、白い屋根の建物はそこらに点在していた。


取り敢えず、目に付いた大きな立派な建物に入る。





「いらっしゃいませー♪」


【うっわ、貧民が来おった。】




受付のお姉さんは本音はともかく建て前はよく訓練されていた。




『あ、あの値段…』




お姉さんが腹の底で俺に悪態を付きながら説明するところによると、一泊4000ウェン。


スイートルームが9000ウェンということだった。


ん? 安くないか?


日本円で4000円くらいの感覚なのか?


相場がイマイチ分からなかったので、思わず口に出してしまう。




『え? そんな値段?』




「ええ、当ホテルは高級判定されてますので、帝都からの査察官の方が宿泊される事もあるんですよ。」


【チッ。 糞貧乏人は裏通りの安宿行けよなあ。 概ね1000ウェンだぞ。】





お姉さん。


腹の底で舌打ちしないで下さいよ、マジで傷つきます。


それにしても安宿なら1000円? じゃあ、3万円で一ヶ月暮らせるってこと?


結構、良心的な物価じゃない?


安宿1000円、シティホテル4000円…


だとしたら日本に近いレートだな…


まあ今日は標準の部屋を見ておこうか。





『あ、じゃあ4000ウェンの部屋で…。』





「畏まりました。 ベッドメイクその他が必要な場合はフロントにお申しつけ下さい。」


【やっと一部屋埋まったわ… ホテル供給過剰過ぎるのよねえ…】




え?


確かに人気が無いとは思ったけど。


冒険者ギルドのほぼ正面の建物で、宿泊客が俺だけ?


そんなに宿が多いのか?





…この能力。


地味にいいな。


特に金銭やら商売やらが絡んだ場面で、相手の本音を知れるのは強い。




この街はホテルの供給過剰。


つまりはもっと安い宿を見つける可能性が高い。




いや、待てよ?


相手の思考が読めるって事は話の持っていき方次第で、自分の知りたい情報を引き出せるのでは?





『あ、すみません。 


4000ウェンって結構いい値段だと思うんですけど


この街って普通の部屋でこれくらいの相場ですか?』





「は? 申し訳御座いません。


他社様の事情は存じ上げませんが、弊社は宿泊業組合の規定以上の代金は頂戴しておりません。」


【まあ、その組合の代表がウチの社長なんだけどね。


城門の近くなら、ウチのランクの部屋で2000ウェンくらいで泊まれるかな?


ま、あの辺は他所者には分かりにくいか…】





なるほどね。


ここは立地が良いので4000ウェンの強気価格だが…


探せば同ランクの部屋が2000ウェンで借りられるのね。


よし、もう少し粘ってみるか…





『あ、最後にもう一つ!


城門の辺りにも宿があるって聞いたのですが、ちょっと見つけられなくて。


宿の名前わかったりしませんか?』





「誠に申し訳御座いません。


当方では解り兼ねます。」


【城門だったら《ホテルエメラルド》か《アダムス旅館》がウチに近いランクかな…


ま、そんなの教える訳ないじゃない、馬鹿な子ww】





『ありがとうございます。


今夜はここに泊まります。』





いや、皮肉抜きで感謝していた。


これから異世界にどれくらい滞在するか分からない以上、宿の情報は最優先事項だ。


この宿は一泊だけだな…


明日は《ホテルエメラルド》と《アダムス旅館》を探そう。





俺のこの心を読む能力はチートだと思う。


今日一日でも戦果はある。


異世界に来て早々、楽に現金を入手した。


そしてコスパの良い宿の情報も!




この能力を駆使すれば、結構楽勝で生き残れるんじゃないか?


もっと色んな人間の【心】を読んでみよう!


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