茜の旧友たちに挨拶
「起きたかえ」
私が声をかけると寝ぼけ顔の恵里が。
「んーここどこ?」
可愛らしい声で話す恵里の意識はまだ夢から帰還途中らしい。
「おはよう恵里」
もう一度声を掛ければようやく意識がはっきりしてきたようだ。
「あ、茜さん!そうだ、私寝ちゃったんだ……」
「そうじゃよ」
記憶を辿るよにどこかを見ている恵里を私は思わず抱きしめる。
「大丈夫じゃからな。もう、大丈夫じゃからな」
今にも折れてしまいそうな体は暖かい。
「あ、茜さん?!」
「すまないのう。其方の身の上を聞けばもう居ても立っても居られず……つい」
謝るが恵里は膨れっ面だ。
「私はもう六年生になったから大丈夫」
私は思わず聞き返した。
「六年生と言ったか?」
「え、うん。六年生だよ」
何を聞き返しているのだというふうに首を傾げている。
「いやなんでもない。六年生のお姉さんだものな」
ここでもし小学校三、四年生だと思っていたなどと白状すれば機嫌を損ねて戻らなくなってしまうだろう。早めに話をずらさなければ。
「そうそう、お客さんが来ているから挨拶しようの」
私はさっさかローズの部屋に行く。
「あ、待ってよ」
慌てて恵里がベットから飛び降りる。恵里の部屋も用意しなければなどとぼんやり考えながら向かえばちょうど荷解きを終えたところのようだ。扉の前で鉢合わせになった。
「こちら、ローズじゃ。妾の親友じゃ」
紹介するが恵里が見当たらない。おや、と見渡せば足元に隠れている。
「悪い人でも怖い人でもないから出でくるのじゃ」
恐る恐る出でくるが私のパンツの裾を握っている。ローズは屈んで視線を合わせる。
「私はローズ。よろしくね。お名前は?」
「え、恵里です」
「恵里ちゃんか。これからよろしくねー」
何かに怯えているような様子だったが、ローズに頭を撫でられ少し安心したようだ。笑顔を取り戻している。
「それじゃ、バーミーの方に行ってくるぞ」
「はいはい。行ってらっしゃい」
ローズに声をかけてから移動する。
「入っても良いか?」
戸をノックしてから声をかける。
「は、はい」
変わらず緊張している様子の彼女。怖がられているのだろうか、と不安になる。戸をあけて中を見ればベットから起き上がり、ネクタイを直しているバーミーが。
「こんにちは。私、恵里。よろしくね」
先ほどとは打って変わって恵里から挨拶する。
「俺はバーミー。よろしく」
同年代の子供たちの様子を見て二人にしても大丈夫だろうと判断した私は買ってきた食材で本来ローズが来る前に焼くはずだったクッキーを作りにキッチンへ戻ることにした。
「妾は台所で焼き菓子を作るから二人とも仲良くするんじゃよ」
それだけ言い残し扉を閉めた。
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