無題

書い人(かいと)@三〇年寝太郎

抜け殻の金塊

 蔵があった。

 中には、金のインゴットが大量に並べられている。

 周囲にあるのは、金、銀、白金の通貨や、宝石。体に身に付ける類のものもある。

 見捨てられた地で、盗掘の可能性はない。

 主も失くし、その価値はもはや皆無であった。

 その金の持ち主は、贅沢ぜいたく極まる生活の維持。そして私兵の管理にその金を使っていた。金で金を増やしていた者だった。

 金に意思があるとすれば、主を失ったことを悲しむだろうか。

 それとも、二度と経済で扱われないことを嘆いただろうか。

 怒りも憎しみも悲しみも、実際の金にはない。

 空虚な金塊は、永遠に報われることはないのだ。

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