第14話 ルリナはリベンジする

 王宮へ来てから、世の中の仕組みや人間関係の言葉選びなど、色々と教わった。

 公爵家では私はいかにぞんざいな扱いを受けていたのかがよく理解できた。

 復讐するようなつもりはないが、できることならばもう二度と関わりたくはないかな。


 髪をとかし身支度を整えていると、ツバキが入ってきた。


「おはようございます。ルリナ様……、遅くなってしまい申し訳ございません」

「おはようございます。なんで謝るのですか?」

「ルリナ様のお着替えからお召し替えまで、今は私がやらねばならないことですから。ルリナ様がご自身でやることではありませんよ」

「うーん……。さすがに申し訳ないかなと思いますから」

「それから、敬語を覚えたのは大変素晴らしいことではありますが、私に対してはどうか敬語を使わないようお願いします」

「そうなのですか?」

「はい。私に対しては常に敬語を使わずお願いします。なお、ニルワーム様に関しては公の場以外では自由にしてくれて構わないとのことです」


 むずかしい。

 勉強したことによって、ツバキさんは私より年上だから敬語を使うのが当然かと思っていた。

 ニルに関しては本人からもあまりかしこまられると困ると言われていたから、今までどおりに楽しく接している。

 私も、ニルと一緒にいる時間と喋っているひとときがたまらなく楽しい。

 それからドキドキが激しくなる。どうしちゃったんだろう。


「それからお知らせがございます。三日後に王宮主催のお茶会を行います」

「げ……」

「ルリナ様には是非参加してもらいたいたく……」

「ごめんなさ……じゃなくて、ごめん。そればっかりはこわいよ……」


 前回のお茶会で私は散々な目にあってしまった。

 また同じように嘲笑われたりゴミ扱いされてしまうかと思うと、こわくて逃げ出したい。


「お気持ちは痛いほどわかります。しかし、今のルリナ様でしたら馬鹿にされるようなことはないでしょう。むしろ、ルリナ様の素晴らしさを見せつけるチャンスでもあります」

「うーん……」


 言葉遣いや礼儀作法は覚えたつもりではいる。

 今思えば、前回のお茶会ではとんでもない失態をしてしまったことがよくわかる。

 だが、覚えたからといって見せつけるようなことはしなくてもいいんじゃないだろうか。


「ここだけの話、このままルリナ様の評判が変わらなければ、いずれ王宮からも追い出されてしまう可能性があるでしょう……」

「え……、そうなんですか? あ、じゃなくて、そうなの?」

「はい。ニルワーム様は必死に説得している状況です。それほど現在は公爵様の信頼が高いということです。みんな公爵様の発言を信じているようなものですから」

「そうだったんだ……。そうとは知らず」

「ですから、今回のお茶会で、ルリナ様が貴族としての嗜みもできることを見せつけることによって状況が大きく変わるかと」

「わかった。ちょっとこわいけど、ごはんの食べかたくらいはしっかりできるところを見せるようにする」

「頑張りましょう」

「でも、一度練習がしたいかな……」

「はい。いくらでもご教授いたします!」

「ありがとう!」


 私は集中して、これでもかというくらいに念入りにお茶会の予行練習をした。

 そして三日後、前回のときと同じようなお茶会が始まろうとしていた。

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