2節「-ヴェーグ王の深淵歩き-」
国力の殆どを注ぎ込むまさしく国の存亡を賭けた深淵の探査は臣下を始めとした国内から反対の声も多く挙がったが、王は計画の強行に臨んだ。
王は渓谷攻略地上最前線都市シュルフトブルグへと赴き、多くの兵や有志の騎士を集め、自ら先導しウルド渓谷へと向かった。
プルメジア大陸ノルンの最果て、一度降りれば生きては還れぬとされるその大渓谷。静かにその真黒な口を開けた谷の中へ王も、騎士も、兵も彼らの放つ松明や魔術の光もそのすべては静かに飲み込まれていった。
探索困難な特殊な地形、地上では見ることのない危険な未知の原生生物に加え、深度を増すにつれ濃度を高める闇と魔力は探査に加わっている者の多くを惑わせ、狂わせ、死に至らしめた。
実に一年に及ぶ決死の探索によってその闇に多くの犠牲を払った王はその冒険の末に遂に深淵の底へ至る。
その秘匿された神秘に希望の火を灯さんと王は深淵を歩みだした。
共に深淵へと至ることの叶ったほんの僅かな手勢を従えて。
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