幸せを諦めていた聖女が王子様に『お前を溺愛する準備ができた』と言われて神殿からさらわれてしまいました
萌えるゴミ
聖女の不幸は、国民の幸せ
――聖女の不幸は、国民の幸せ。
これはこの世界で広く知られている有名な
聖女になった者は、人々を魔族の脅威から遠ざけるという重要な責務が与えられます。
そのために聖女は自らの人生を全て捧げなければなりません。
この
……とはいえ、それは仕方のないことなのです。
魔族が支配するこの世において、人間とはとても非力な存在です。
特に500年前に出現した魔王による被害は甚大で、多くの人の国が滅ぼされてしまいました。
そんな魔族に対抗できる唯一の力が、聖女の持つ退魔の力なのです。
人々はそんな聖女に
……しかしそんな聖女の力は、男性と肌と肌を重ねて愛し合うことで消失してしまうようなもの。
しかも聖女になれる者は一国に一人いるか、いないかと言われており、その存在は極めて希少です。
ゆえに聖女の身柄は、万一のことがないよう、人里離れた神殿で厳重に管理されることになります。
祭事などで男性と話すことはあっても、聖女の半径5メートル以内に男性が近づくことは厳禁。
そして私はこのアレスティア王国唯一の聖女、ナターシャ。
魔王という脅威が存在する以上、私がその役目を解かれる日は来ないでしょう。
つまり、私の人生の中で男性と情熱的な恋に落ちることは永遠にない……。
……はずなのに。
『愛してる! 俺はお前よりも、お前のことが好きだ!!』
……なのに、なのに。
『お前は面倒な女のままでいい。俺に迷惑をかけ続けていい。そんなの、惚れた時から受け入れていることだ』
……なのに、なのに、なのに!
『自覚しろ、お前は俺の女だ。人のものは、丁重に扱え。お前を蔑ろにする奴は、たとえお前自身でも許しはしない。もし俺の言いつけを守れないようなら……とことんわからせてやるよ。俺がお前のこと、どんだけ大切に思っているのかをな』
私の頭の中は、|シュヴァルツ様との
シュヴァルツ様とは、このアレスティア王国の王子様のことです。
お顔も、地位も、頭脳も、武術も、魔術も……何もかも非の打ち所のない完璧なお方。
そんな誰もが憧れる王子様と私は、なんと婚約関係にあるのです。
……とはいえ、それは形だけの関係。
そもそも私が彼の妻に選ばれたのは、シュヴァルツ様がこの国の王になられた際、その地位に箔を付けるためです。
つまりこの婚約関係は、いわゆる政略結婚のようなもの。
しかし私たちの関係は、時を経てあまりに親密になりすぎました。
……そう。別れることが辛くなるほど親密に。
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