4.5話 エイト学習中 〜オノマトペ〜

 目の前に広がるパトリックさんお手製の美味しそうな朝食。いつもなら食欲をそそる香りも、今日はプレッシャーに。原因は明白だった。昨夜の夕食があまりに美味しくて食べ過ぎてしまい、胃の調子がよくないのだ。

「お身体の調子が悪いのですか?」

 察しのいい彼にはやはり、すぐばれた。だけどあまり心配されぬよう、慌てて笑顔を作り上げる。

「大丈夫です。少し、胃がムラムラするだけなので」

「それはそれは」

 スッと口元を隠すその指先。自分が言い間違いをしたのだとすぐにわかった。

「ごめんなさい。あの、胃の調子が悪いときは、「胃がムカムカする」ではなかったですか?」

「合っていますよ。オノマトペは、似ているものが多いですよね」

「え? 自分は何と?」

「胃がムラムラ、でしたでしょうか」

「んんっ!? ちがっえとっ、自分の胃はムカムカです! ごめんなさい!」

「お気になさらず。私も言い間違いはしますしね。では、胃薬をお持ちしましょう」

 自分は朝から何を言っているのだろう。恥ずかしさがどうしようもなくこみ上げ、彼の爽やかな笑顔を見られなくなった。

 胃をムラムラさせることができる人なんて、この世界にはいないと思う。

 がんばれ自分。もう絶対に、間違えない。

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