赤い玉
だがもう姿は見えない。
部屋を押しつぶすぐらい赤い玉は巨大になり、
その中に彼がいるのだ。
紫垣製菓の重役達は既に意識は無くみな倒れていた。
彼らの魂がそこにあるのかどうかは分からない。
まるで紙のようにぺらぺらになっていた。
古い建物がきしみだす。
そしてついに赤い玉の圧力で建物が崩れ出した。
紫垣製菓の周りを囲んでいた
赤く光る巨大な玉を。
ともかくそれを外に出さないようにしなければいけない。
彼女にはあの赤い玉の中に紫垣がいるのが分かった。
どうして彼が赤い玉を持つようになったのか、
災いの中心になったのかは分からない。
だが、彼女には彼がただ利用されているだけだと感じた。
元々は優しい人だった。
そこにつけいれられたのだ。
助けたい。
彼女の心はただそれだけだった。
赤い玉の周りには
多分すでに人ではないだろう。
彼ら自身もいずれ取り込まれるはずだ。
紫垣製菓を取り囲んでいる白作務衣はぞくぞくとその周りに近寄って来た。
地面に拳を入れ
その瞬間光が走り、地面が揺れた。
そして玉も揺れた。
赭装束の影が彼らに向かって飛んで来た。
それを大刀を持った白作務衣が迎え討った。
激しい刀の音がする。
護身の呪を身に持つ刀ですら受けるのがやっとの素早さだ。
それを法術師が拘束の呪を唱えて動きを止め、
その瞬間影を断ち切った。
切られた赭装束の影は消える。
だが、再び赤い玉から影は現れるのだ。
きりが無かった。
玉をここでおしとどめておくのがやっとの状態だ。
その時だ。
金色の光のようなものが紫垣製菓の地面にいくつか刺さった。
一寸法師の皆がはっとその方向を見る。
そこには金棒を持ったざんばら髪の千角と、
人の背程大きくなった一尺鈎針を持った一角が立っていた。
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