奇襲  3




その夜、満月のはずだが空は雲に覆われ、

月は見えなかった。


「曇りか。」


姿が見えにくくなるのは有利だが少しばかり光の力は弱くなる。


「みんな、聞いてくれ。」


金剛こんごうが言う。


「実は豆が鬼とラインで繋がっている。」


少しばかり皆がざわめく。


「その情報だが、鬼界でも異変が起きているらしい。

空が落ちて来そうとの話だ。」

「空が、か。」

紫垣しがき製菓の事と無関係ではないようだ。

だから同時期に鬼界きかいでも攻撃をすると。」


一人の年寄が怒ったように言う。


「鬼と協力すると言う話か。我慢できん。

今まで鬼がどんな事をしたかお前達忘れたのか。」


みなが押し黙る。

それは事実だからだ。


鬼は人の禍々しい天敵なのだ。


「……あの、」


豆太郎がおずおずと言いだした。


「俺も鬼と慣れ合うのは嫌です。虫唾が走ります。

俺も鬼は憎い。

みんなにどんな事をしたかも知っている。

でも今回は協力しなければ倒せない気がする。

人と鬼は裏表の世界だ。

どちらかが壊れたら両方壊れる。」


みな何も言わない。


「今回だけ協力できませんか。

こんな事を言うのも嫌だけど、

俺がラインで繋がっている鬼は若い鬼で人も喰っていない。

そいつらはただ玉が欲しいだけだと言った。」


紫も静かに言う。


「私も鬼と話をしましたが、

思っている鬼とは違う感じでした。

人より宝の方に興味があるみたいです。」


しばらく誰も何も言わない。

そして金剛がみなを見た。


「みんな、この二人を信じて今回だけは協力して欲しい。

その後何か悪さをすれば当然鬼は成敗する。」

「俺もあいつらが何かやらかしたら絶対に成敗するとラインします。

今日はこちらも手練れが勢ぞろいなんだ。

みんながかかったらあいつらなんかすぐに成敗できる。

あいつらファミリーレストランは行った事が無いからって、

俺に行けと言うぐらい甘ちゃんなんだよ。」


みなが少し笑う。


「ファミリーレストランってあそこのか。」

「あいつらプリンアラモードを注文したよ。

美味いって食べていた。」


みながくすくす笑う。

金剛が言う。


「豆と紫さんはそれを奢ってもらったらしい。」

「鬼にか。」


皆が爆笑した。

先程文句を言った年寄りさえ苦笑いをしていた。


「仕方ない。今回は協力する。

だが豆太郎よ、何かあれば本当に成敗すると鬼に連絡しろ。

絶対に許さんと。」


あの年寄りが真剣な顔で言った。


「分かった。

じいちゃんの気持ちは俺もすごく分かる。

だから今回我慢してくれるのが本当にありがたいよ。」


豆太郎は千角にラインをする。


「鬼から連絡が来た。」


みなが豆太郎を見る。


「そちらに合わせて攻撃すると。

空から赤い粒が降り出したらしい。」






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