怒っているもの





紫垣しがき製菓の会議室だ。


この夜中に紫垣名の者が揃っている。

電灯もついておらず真っ暗なはずだが、部屋は薄ぼんやりと明るい。


そこに常務の紫垣が入って来た。


みながそちらを見る。

全員の眼は赭く光っている。


まるで粘った水のような空気が会議室には漂っていた。


全身をそれに包まれて、直接自分の中に

知らない何かの意思が入って来るのを紫垣は感じた。


正さねばいけないもの

自然を捻じ曲げて生き続けるもの

ワタシの上で我が物顔で破壊し続けるもの


それを自分に言うものは一体何なのか。

紫垣には全く分からなかった。


だがそれを聞く度に自分の中に荒々しいものが硬く集まり、

砕けて溢れるのを感じていた。

そして口からそれが溢れ出しているのも。


自分がただ利用されているのは分かっていた。

それが昔からため込んでいた自分の怒りが原点なのも。


それをため込んだ原因の自分の家族は、

この会議室であかい目で自分を見ているだけだ。


許せない気持ちしかなかった。

そしてそれすら自分の中にある禍々しいものの原動力になるのが、

あまりにも悲しかった。







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