しのぶ

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 しのぶれど色に出でにけりわが恋は

 ものや思ふと人の問ふまで

 (百人一首:平兼盛)

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 古語でも「しのぶ」はじっとこらえる、心に秘めるをあらわすようです。


 忍ぶ。


 と、書けば、「我慢」以外には、ひっそりと、人の目を避けて。悪いことはいけませんが、人目を忍ぶ恋模様とか、物語のなかに描かれていると「ほう……」と頬を染めて入り込んでしまいませんか。


 偲ぶ。


 懐かしむ。自然と思い浮かばれる。

 好ましいそれを。


「亡き人を偲ぶ」「故郷を偲ぶ」と、しっとりとして、じんわりと心が温かくなる、ほろりと涙を流す郷愁も誘う。


 日本人の、といいたいところですが、きっと世界のだれしもが「忍ぶ」「偲ぶ」と心に馳せるものは多いのではないでしょうか。「ロミオとジュリエット」のような悲恋物語も世界にあふれていますし。


 物思いの秋。


 そっと、しのぶ。


 それも一つ。

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