異世界イタコ

FUKUSUKE

第1話 洗礼の日

 一切の音がなく、匂いもない、見渡す限り真っ白な世界。踏みしめる足下からは何も感じることがなく、浮いているという言葉の方がこの場所を表現するには正しいかも知れない。

 だが、不自然にもその中に木の扉が一枚だけ浮いている。私はその扉を開き、中へと入った。

 扉の中はとてもシンプルで小さな部屋。板張りの床に、漆喰で塗り固められた天井と壁。調理場にはわずかな食器や食材、調理器具が並ぶ。部屋の中央にあるのは一人で暮らすには大きな木のテーブルだった。

 私はテーブルの上に白金製の盆を置いて、表面に透明な水の膜を張って覗き込む。

 そこに映るのはお気に入りの少女。この世界に渡るまでは地球にある日本という国で死んだ女性だった。



 豊かな大地と水に恵まれた多神教の国、レインブルグ王国。その広大な領地の隅にあるランドルフという小さな町の教会で、両親と共に1人の少女が洗礼を受ける順番がくるのを待っていた。


「ねえ、お母さん。どんな職業だったらいいの?」


 絹糸のように細く美しい銀色の髪を腰まで伸ばした赤い瞳の少女が、母親に向かってたずねた。

 この国では、10歳の誕生日に教会で洗礼を受け、神の加護を受けて職業とスキルを授かる習慣がある。


「色々とあるわよ。勇者、聖女、賢者、大魔導士に剣姫。他にも錬金術師や薬師、鍛冶師……」

「お母さんは、セリアがどんな職業を授かると嬉しい?」

「そりゃあ、聖女や賢者、大魔導士、剣姫を授かればいいけどね。仕立て屋をしているパウルと私の子だもの、裁縫師で十分よ。逆に『無職』や『スキル無し』で裁縫仕事なんてできたもんじゃないわ」

「じゃあ、セリアも裁縫師になりたい!」

「それはセリアがどの神様に気に入られるかで決まるからね。裁縫神スチュラ様か工芸神デクサ様の加護が貰えるといいわね」

「セリアは器量がいいから、踊り子や侍女なんかもいいんじゃないか?」

「ダメよ、そんな見かけだけの仕事。長く続けられる仕事がいいに決まっているじゃないの」

「でもそういう職業なら玉の輿というのも狙えるんじゃないのか?」

「平民が玉の輿に乗ったって話は聞いたことが無いわねえ。御伽噺ならともかく……」


 実際に洗礼を受けて職業を授かるのはセリアだというのに、両親の間でどんな職業が良いかという話題に花が咲いた。


「次、仕立て屋パウルとソニアの子、セリア」


 教会の中に呼び出しの声が響いた。ビクッと身体を震わせた三人だが、セリア独りで祭壇にまで行かないといけない。


「ほら、他の子どもたちのように祭壇へ行ってきなさい」

「うん、行ってくるね」


 セリアは立ち上がると、教会の祭壇の方へと歩いて行った。

 祭壇では、40歳くらいの男性が1人、30歳くらいの男性が1人いた。30歳くらいの男性の方は、並んでいる子どもたちを濡れた月桂樹の葉で軽く叩いていた。一方、40歳くらいの男性の方は子どもたちを祭壇に置かれた水晶玉に触れさせ、浮かび上がる文字を読んでは紙に書きだしていた。

 すぐにセリアの番がやってきた。


「手を伸ばして、水晶玉を触りなさい」


 40歳くらいの男性に言われたとおり、セリアは水晶玉に手を伸ばした。

 セリアが水晶玉に手を触れると、水晶玉がパッと明るく光り、そしてゆっくりと元の透明な石に戻っていった。

 水晶玉はひんやりと冷たく、触っているだけで身体から力が吸い取られているような感覚がするのだが、セリアは我慢して水晶玉から手をはなさなかった。すると、セリアの頭の中にいくつかの言葉が流れ込んいった。


〈サモン〉〈リリース〉〈クリーン〉〈ウオッシュ〉〈ドライ〉〈イグニッション〉〈ウォーター〉〈コール〉


〈クリーン〉と〈ウオッシュ〉〈ドライ〉〈イグニッション〉〈ウォーター〉はソニアが家事で使っている魔法だった。

 セリアは自分もソニアが使う魔法を使えるようになったことに気が付いた。しかし、〈サモン〉と〈リリース〉、〈コール〉は何に使う魔法なのかセリアには全くわからなかった。


 やがて水晶玉に文字が浮かび上がった。セリアは文字の読み書きは自信があるのだろう、そこになんと書かれているか読もうとした。でも、一部に彼女が見たことのない文字が書かれていた。


「こ、これは……君の名前はセリアでよかったかな?」

「はい、そうです」

「お父さんとお母さんのお名前は?」

「お父さんはパウル、お母さんはソニアです」

「セリアの父親パウル、母親ソニアは個室に来なさい。次の君はそこでしばらく待つように」


 男性は礼拝堂の隣にある控室へと入り、セリア親子が揃うとなにが起こったのかを話し出した。


「神官のマルティンと申します。お嬢さん――セリアさんの職業なのですが……残念ながら死霊術師と表示されました」

「まさか、うちの娘が死霊術師……」

「あなた……」


 マルティンの言葉を聞いて呆然とする両親とは対照的に、セリアはただきょとんとして座っていた。何が起こったのかセリアには全然理解できていないようだ。


「死霊術師だと何がいけないの?」


 セリアが不思議そうに尋ねた。マルティンは大きく息を吸い込み、威圧のない優しい口調でセリアへと返事をする。


「長く生きて亡くなった人、不幸にも事故で亡くなった人。そういう人たちは生命神ヴィルタ様によって新しい命を授かると言われています。でも死霊術というのはアンデッドを生み出し、使役するものです。それは死者への冒涜であり、忌むべき行為とされているのです」

「えっと……どういうこと?」


 まだ10歳のセリアにはマルティンの言葉が難しすぎた。そこで、母親のソニアがもっと簡単に説明を試みる。


「おばあちゃんが死んだとき、お墓に埋めたでしょう?」

「うん、みんな泣いてたね」

「あのとき、みんな『安らかに眠ってください』とお祈りしながら埋めたの。でも、死霊術師はその遺体を掘り起こして召使いとして働かせる職業なのよ」

「へえ、そうなんだ」

「そうよ。セリアが『安らかに眠ってください』ってお祈りしたのに、勝手におばあちゃんの遺体を掘り起こして働かせていたら、セリアはどう思うかな?」

「やめて欲しい! あと、お墓に戻してあげて欲しい」

「そうよね。だから死霊術師は他の人たちから嫌われる職業なのよ」

「ついでに言わせていただくと、教会として死霊術は禁忌としています」

「教会の人たちも、丁寧に弔ったのに掘り起こされるのが嫌だそうよ」


 死者を弔うのも教会の仕事であり、忌み嫌うのも無理はない話である。

 セリアは「うーん」という言葉と共に、視線を宙に彷徨わせた。セリアが何かを考える時の癖だった。


「じゃあ、死霊術を使わなければいい?」

「それだと生きていくのもたいへんなのよ」


 セリアが死霊術師という職業を賜ったとはいえ、それはあくまでも適性でしかない。祝福で得たスキルセットの名前が職業になっているだけのことだ。

 例えば商人であれば四則演算を覚え、地域別の収穫時期の違いや商品の需要と供給を読む力などをつければ誰にでもなることができる。なることができるが、空間収納や交渉術などのスキルが無いと大規模な商いをするのは難しい。

 さすがに勇者や聖女のような特殊な職業は特別だが、農業や林業、建築、鍛冶、裁縫、錬金などの他の職業でも同じことが言える。

 しばらく難しい顔をして考え込んでいたセリアの父、パウルが大きな声でたずねた。


「セリアが授かったスキルにはどんなものがあるのですか?」


 マルティンはパウルの大声に目を大きく開いて驚いていたが、すぐに冷静な表情を取り戻し、手元に書いたセリアのスキルを確認した。


「いくつかスキルを授かっているようですが、死霊術師のスキルは死霊召喚と死霊送還の2つですね」

「それぞれ、どのようなスキルなのでしょう?」

「死霊召喚は死者を呼び出す魔法、死霊送還は呼び出した死霊を送り返すもののようです」

「他に授かっているスキルというのは?」

「生活魔法を得ているようです。あと、私にも読めない文字が出ていました」

「神官様でも読めない文字ですか?」


 パウルは目を瞠ると、ゆっくりとした言葉でたずねた。

 マルティンは他の子どもに現れたスキルが読めないよう、手元の紙を折り畳んでパウルにみせた。


「一応、書き写しはしました。でも、何と読むのかはわかりません」

「そうですね、私も初めて見る文字です」

「どれどれ、私にもみせておくれよ」


 初めてみる文字にとても興味を持ったソニアまでマルティンの書いたメモを覗き込んでいた。




 この間、自分自身のことだというのに、両親によって完全に蚊帳の外へと追い出された形になったセリアはとても退屈そうにしていた。

 退屈しのぎのため、セリアは自分が水晶に触ったときに頭に流れ込んできた魔法のうち、用途がわからなかった魔法を使ってみることにした。


《サモン》


 セリアは小声で呪文を唱えた。でも、何も起こらなかった。〈リリース〉も試してみたがダメだった。セリアは首を傾げて何かを考えているようだったが、時間がたっても何も変化は起こらなかった。

 セリアはそっと大人たちの方へと目を向けるが、大人たちは喧々諤々けんけんがくがくとセリアのスキルについて話しあっていた。

 魔法を使ってもバレないようなので、セリアは小さな声で魔法を唱えた。


《コール》




 セリアが地球という星で死亡し、その魂を引き取ってから10年。彼女に呼び出されるのを待ち続けていた。

 私は急いでセリアの前に降り立ち、返事をした。


『やっと呼んでくれましたね、セリア』

「あのう、どちら様ですか?」


 私があまりに突然現れたせいか、セリアは遠慮することなく質問を投げかける。

 私は少し呆れたようにため息をつき、セリアの質問に答えた。


『私はヴィルタ。人々の生と死、転生を管理することを生業とする者です』

「もしかして神様?」

『人間には神や女神と呼ばれていますね』


 私は返事をすると、セリアに向かって優しく微笑んだ。


「きれい……」


 私の美しさにセリアは思わず声を漏らした。

 腰まである銀色の髪に、キラキラと輝く宝石のように赤い瞳……でもこれは、お気に入りのこの少女、セリアを模して作った仮初の姿だ。


『何を言っているのです。これはあなたを模して作った仮初の姿。本来の私は思念の塊のようなもので、姿かたちはないのですよ?』


 私は不思議に思って首を傾げ、セリアの顔を覗き込んだ。何もかも見透かす神の瞳で見つめられたセリアは、思わず顔を両親たちの方へと背けてしまった。その視線は運悪くセリアの方へと向いて話していたマルティンの視線と交差した。幼いながらも気まずさのようなものを感じたのだろう。セリアは愛想笑いを浮かべた。

 マルティンはセリアの可愛らしい顔を見て頬を緩めると、すぐに視線をパウルへと戻した。

 マルティンの反応でマルティンや両親には私を見ることができないことをセリアは悟った。そして私に小声で返事をする。


「ごめんなさい、セリア、覚えてないの」

『10歳までに自然に記憶を取り戻すと思っていたのですが、仕方がないですね』


 私は小さく溜息をついて言った。


 私はセリアの額の中央あたりに右手の人さし指を押し付けた。同時に膨大な記憶がセリアの頭の中になだれ込んでいく。

 僅かな時間で大量の情報をもたらされたせいか、セリアには激しい頭痛がが襲ったようだ。ほんの一瞬の出来事だが、セリアは痛みのせいで両手で頭を押さえ、座り込んでしまった。

 前世で生まれてから順番に記憶を呼びさましているため、真っ先にセリアの頭の中で再生されたのは前世の両親だったのだろう。セリアの頬には、涙が溢れていた。


「そうだ、私は……」


 私が触れたことで、セリアは前世の記憶をすべて思い出した。

 地球という星の日本という国、そこで最も大きな都市、東京で生まれ育ったこと。自分の名前が室町むろまち彩音あやねであり、父親は浩一、母親は室町凛子りんこだったこと。2歳年下の妹がいて、陽菜はるなという名前だったこと。小中高と順調に育ち、大学も無事卒業したこと。入社した会社も一流企業だったこと。


「あれ、何でこんな世界にいるんだっけ」


 セリアは思い出そうとして小さな声で呟いた。どう考えても地球での彼女の人生は順風満帆だったはずだ。確か、大学時代から付き合ってきた彼氏もいた。

 残酷だが、私の仕事として正しい答えを告げねばならない。


『非常に残念ですが、地球でのあなたは事故により亡くなりました。一瞬の出来事で、あなたは死因さえ覚えていませんでした』

「あ、あの白い部屋にいた神様ですか?」


 蘇った室町彩音の記憶の中に私との邂逅が残っていたようだ。


『そのとおりです。ようやく思い出してくれましたね』

「だって、声以外に頼りにできるものがないもの」

『ごめんなさいね、こればかりはどうにもならないの』


 私は頭を下げた。その様子を見たセリアは神に頭を下げさせるなどとんでもないと、慌てて立ち上がってその倍の角度でお辞儀をした。

 室町彩音だった時の記憶が蘇ることで、小中高大と学んできた様々な知識、日本の常識や考え方なども蘇り、精神年齢も一気に24歳のそれへと昇華しているようだった。


「それで、どうして御顕現ごけんげんになられたのですか?」

『あなたが呼んだからよ。〈コール〉、使ったでしょう?」


 私はセリアの鼻をツンツンと突きながら話を続ける。


『あなたには私から寵愛を授けました。そうすればいずれ呼んでもらえると思っていたからね』

「では、記憶を戻してどうしようと?」

『あなたがいた世界にあった職業をね、この世界で試して欲しいと思ったのよ。イタコっていう職業があったのでしょう?』

「イタコ、イタコって……自分に死者の霊を憑依ひょういさせて話をさせる職業だったっけ?」

『そうよ。それを死霊術を使ってやって欲しいの。この世界ではゴーストとして召喚して、依頼者と直接話すように使役すればいいわ。憑依も必要ないから難しくないでしょう?』

「いや、まだわからないです」

『会いたい相手を特定できること。それが〈サモン〉の発動条件。終われば〈リリース〉するだけでいいの』

「それでいいなら。でもなぜ?」

『面白そうだから、じゃだめかしら?』


 私はジッとセリアを見つめた。

 私の強い眼力のせいか、セリアからは返す言葉が出なかった。


『では、私はこれで帰ります。質問があればまた〈コール〉しなさい』

「は、はい……」


 セリアが返事を終えるのを待つことなく、私はその姿を消した。




 一方、マルティンとパウル、ソニアの三人はまだセリアのスキルについて意見交換を続けていた。


「いろいろと推測したところで読めないものは仕方がありませんね。とにかく、セリアが授かったスキルから、セリアは死霊は呼べるが、アンデッドを作り出すことはできない、ということですよね?」


 パウルがマルティンに確認するように言った。

 パウルと同じ疑問を持っていたソニアも一緒になってマルティンにたずねる。


「私もそこが気になりました。どうなのでしょう?」


 マルティンは少し考えこんでから、二人の疑問へと返事をする。


「そうですね、確かにアンデッドを作りだすスキルは授かっていないようです。しかし、研鑽けんさんを積めば覚えるかも知れません」


 スキルは練度というものが存在し、慣れれば発動が早くなったり、正確性が向上したりする。そして、ある一定の練度を越えると、スキルが進化したり、新たなスキルを得たりすることがあった。

 マルティンは、死霊召喚を使っていると、いずれグールやゾンビなどを作りだす魔法を身につけてしまうかも知れないということを危惧していた。


「確かに、というのは理解できます。でもそれは我々も同じでしょう?」

「そうですね、研鑽を積めば勇者や聖女、賢者のような加護を必要とするスキルは覚えられませんが、一般的なものであれば覚えられます。死霊術に関しては試した者がいないのでなんとも……私では判断致しかねます」

「では、死霊術師を授かったからと言って、教会から何らかのお咎めがあるということは?」


 パウルが強い口調で言った。その横に並んでソニアもマルティンを睨みつけている。


「王都の枢機卿に相談のうえ、キルフェ聖皇国の教皇様に確認できるようご相談いたします」

「どのくらい期間がかかりますか?」

およそ3か月、といったところでしょうか」

「では、それまでの間は娘に今までどおりの暮らしをさせます、よろしいですね?」

「はい、こちらでも急ぎ枢機卿にご相談させていただきます」


 マルティンはパウル、ソニアの二人に軽く礼をすると、その場を去った。

 これまでマルティンとの会話に夢中になっていたパウルとソニアは、ホッと息をつくとともに、セリアのことを放置していたことに気付いた。


「大丈夫かい?」と、父親のパウルがたずねた。

 セリアは「うん、でも……」と、言い淀んだ。つい先ほどまで10歳の女の子として両親と会話をしていたが、今は記憶が戻ったせいで精神年齢が24歳になっていて、女神ヴィルタと話していたときのような口調になりそうになったからだ。


「えっと、死霊術師だとセリアはどうなるの?」

「セリアは何も心配する必要がないぞ」

「そうよ、お父さんとお母さんがついてるわ」


 記憶を思い出す前から感じていたことだったが、セリアは両親から本当に愛されている。それは常々感じていたことだが、小さな町とはいえ神官に対して歯向かうような発言をしてまで自分を庇おうとしてくれたことにセリアは胸を熱くした。


「あら、泣いてたのかい?」


 ソニアがたずねた。セリアの頬に、先ほど流した涙のあとがついていたからだ。

 そのことを自覚したセリアは、咄嗟に思いついた返事をする。


「ううん、退屈だったから欠伸をしたの」

「そうか、待たせてすまなかったな」

「セリアは本当に手間がかからない子ねえ」


 パウル、ソニアの順に頭を撫でられたセリアは照れた。

 この世界の両親とはいえ、地球にいたときに勤めていた会社の先輩、上司とあまり年齢が変わらない。だから余計に照れ臭いのだろう。


「それで、セリアは自分のスキルのことわかっているのかい?」

「うん」


 パウルの質問に、セリアは元気よく答えた。

 スキルを鑑定する石を覗き込んだときに全員が読めなかったのは「ヴィルタの寵愛」だろう、とセリアは気づいたようだ。スキルと呼ぶのはおかしな気がするが、それによって〈コール〉を覚えるのだから仕方がない。


「どんなスキルなの?」

「死んだ人を呼んで、みんなでお話ができるみたい」

「へえ、じゃあ2年前に死んだおふくろを呼ぶことができるのかい?」

「うん、おばあちゃんならできるよ。お家に帰ったら呼んであげる」

「え、あ、おう」


 パウルは突然の申し出に焦って返事をした。突然母親を呼んであげると言われて困惑するのも無理はない。


「もう1つ、スキルを授かっているのでしょう?」


 ソニアがセリアにたずねた。


「さあ、セリアにもわかんない」


 セリアは咄嗟に「この質問に正直に答えてはいけない」と判断し、慌ててお茶を濁すと共に、絶対に口外しないことを決めたのだった。







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