第14話登校
「行ってきまーす」
今日は金曜日、つまり一番長い日だ。
何故金曜日はこんなにも長く感じるのだろう?
「あ!弓弦?今日は午後から雨が降るから傘持って行きなさーい」
くだらないことを考えながら玄関を出ようとすると台所にいた母さんが大声で言う。
空を見ると確かに今は日が出ているが向こうのほうには雲の群れが見える。
「わかった!ありがとう!」
玄関の傘立てから一本傘を引き抜き改めて家の外に出る。
弓弦の家から学校まで徒歩で15分程度、駅とは方向が違うので道には人も少ない。
学校に近づいて来るとちらほらと同じ学校の生徒が見えてくる。
「おはようございます」
正門の前にいつも立っている先生に挨拶をして自分の教室に向かう。
「おはよう弓弦」
後ろから声をかけられて振り返って見るとそこには悠がいて軽く手を振っていた。
「ああ、おはよう......そういえば今日から体育始まるな」
勿論同じクラスなのに挨拶だけしてさよならというわけもなくそのまま話しながら教室へと向かう。
「ああそういえばそうだったね、確か今日は体育館で種目決めだっけ?」
そう俺たち一年生は今日が初体育だ。
本来体育は週2回なので既に3回やっているはずなのだが1回目は身体測定、2回目は体力テスト、3回目は体力テストのマラソンという事で体育では無かった。
だがそれも終わったので今日は1学期にやるスポーツを決めるらしい。
「そうだったはず、でも体育は隣のクラスと合同で選択種目別なんだな?なんか高校って感じがするな」
「うんまあ言いたいことはなんとなくわかるよ」
おれの言葉に悠は苦笑いしながら答える。
「確か選択はテニスと野球とバスケだっけか?」
「うん事前に決めとけって先生言ってたね、弓弦はどうするの?」
一応3択になっているが俺にとっては実質2択だな。
強制参加ならともかく選択科目でわざわざテニスはやりたくない.....大きな理由があるわけではないが.....
「まあテニス以外......バスケか野球にするつもり。悠は?」
「うーん.....僕も野球はいいかな.....こういうのって経験者は何かと先生に使われがちだし」
「分かるわそれ」
確かに中学の時も体育の時に何かと部活のやつはお手本を見せたりチーム決めでリーダーにされたりしてたな。
まあ先生もその方が楽なんだろう。
そして俺たちの選ぶ種目が強制的に決まった。
「まあならバスケか?」
「そうだねバスケは嫌いじゃないし」
俺はこいつ以外にクラスに男友達はいないのでこいつと一緒じゃないと先生の2人組作って攻撃で即死だ。
教室に着くと悠とは席が離れているので一旦分かれて自分の席に向かう。
なんだかんだこの学校は偏差値高いので朝もみんな真面目に今日の小テストの勉強をしている。
けど多分これはまだみんな周りが全員頭よく見えてるだけだと思う。
1ヶ月後にはこの教室も中学の頃と変わらずうるさくなるだろう。
とはいえ家で小テストの勉強をしていなかった俺はどちらにせよ勉強しなくてはならない。
俺はカバンから単語帳を引きずり出し単語がびっしり書かれたページを嫌々開いた。
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