第11話顧問と外部コーチ

「おはよう」


入部の次の日俺が自分の机で最近買った漫画を読んでいると悠が声をかけてきた。


「ああ、おはよう」


俺が読んでいた漫画を鞄にしまいながら返すと澤田さんと九条さん、花村さんも

教室に入ってきて


「おはよーお二人さん」


「おはよう」


「おはようございます」


こちらに近寄ってきた。

何故か俺の机を囲むような形になってしまったが朝のホームルームまで時間もあったのでそのまま会話を続ける。


「そういえばみんなお金持ってきた?」


俺が尋ねると4人とも頷く。

お金というのは昨日弓道部のグループで回ってきたのだが、今日から一年生も練習が始まるが徒手練(何も持たずに動作を行う練習)で合格するとゴム弓に入るが全員購入してもらうためその代金を持って来るようにとの事だった。


「早く弓引いてみたいよねー」


「まあ取り敢えずは弓に触るところからだな」


その後も主に部活のことを話していると綾瀬先生が教室に入ってきた。


「みなさん席についてー.......」


ー放課後ー


「綾瀬先生は話が短くて助かるよなー」


俺達は他のクラスが連絡などをしている中着替えて弓道場へと向かっていた。


「もう一瞬だもんねー『特に連絡はありませんではさようなら』って」


部活動見学の時は1人でさっさと行ってしまっていたがせっかくなので皆で向かうことにしたのだ。


「あれ?弓道場にもう誰かいる」


澤田さんの言う通り弓道場の前に制服ではなく私服の明らかに高校生ではない人が座っていた。

皆で顔を見合わせ、無言の圧を受けた俺が前に出て


「こんにちは......」


恐る恐る声をかけてみると向こうもこちらに気づいた様子で


「お?あー君たち一年生か!早いなー」


その人は一瞬訝しげな目でこちらに視線を向けたがすぐに納得したように頷きながら声をあげた。

俺たちが結局この人は誰なんだよという感じで困っていると


「あ、佐藤さんこんにちは!」


後ろから声が聞こえて振り返ってみると淳先輩と朱莉先輩がいた。

鍵当番は先週で終わったはずなのだが、


「先輩たちなんで鍵持ってきてるんですか?

鍵当番は先週でしたよね?」


どうやら俺だけの疑問ではなかったようで悠がそう尋ねると淳先輩が苦笑しながら


「いやーさっき綾瀬先生から今日の鍵当番休んでるからって言って鍵渡されてさ?しょうがなく副部長として出陣したってわけよ」


本来ここで聞くはずのない名前にきょとんとしていると


「弓道部の顧問の先生の名前だよ、知らなかったのか?」


後ろからまだ誰なのか分かっていない男が言う。


「「「「「え?」」」」」


どうやらあのせっかちな先生は俺たちの担任であり弓道部の顧問でもあったらしい。


「今日終わる前に顔出すって言ってたから挨拶しとけよ、そしてそこの人が風波高校弓道部のOBで外部コーチに佐藤さんだ」


........そういうことは早く言って欲しかった。


「一年の神宮寺弓弦です!三年間よろしくお願いします!」


外部コーチの男、佐藤さんに向かって頭を下げる。

他の4人も自己紹介すると


「今年の一年はやる気あるなーお前らもちゃんと教えるんだぞー」


どうやら佐藤さんはそんなに厳しめのコーチではないようで笑いながら淳先輩に向かって言っていた。

そうこうしているうちに他の部員も集まってきたので俺たちは慌てて準備をするのだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る