第17話:属性と適性




 学年が上がり、魔術学園の本領発揮である。

 授業の半分以上が、魔術に関係するものになった。

 魔術の授業が始まり、フローレスは高い氷属性、ルロローズは低い氷属性と微量の緑属性と診断されていた。



 貴族はその家の家系により、魔術の系統が決まっている。

 攻撃系統が高位貴族には多く、オッペンハイマー家は氷の攻撃魔法を得意とする家系だった。

 内包魔力は本人の見た目に影響が出やすいとの通説通り、フローレスも嫡男のホープも強い氷魔法が使えた。


 そして、これも予想通り。

 ピンク色をしたルロローズは、氷属性ではあるが、攻撃魔法は使えなかった。

 せいぜい大きな氷の塊を出現させるのが関の山だった。


 オッペンハイマー家ではなく、母方の家系は緑の魔法を得意とした。

 最初、ルロローズはそっち系の適性があるのでは?と期待されたが、むしろ皆無と言って良いほどだった。

 まだ兄のホープの方が多少素質が有るほどだ。

 フローレスは……氷属性と同じ位、緑属性も適性があった。




「よし、隠そう」

 自室で判定用紙を見ながら、フローレスは呟いた。

 実は、本格的な魔術の授業が始まる前に、虫の知らせだろうか、フローレスは独自に適性検査をしたのだ。

 予想通り、高い氷属性の数値が出た。

 そして、まさかの緑属性である。


 緑属性とは、植物に関係する魔法ではあるが、大きい分類では生命魔法に当たる。

 フローレスほどの内包魔力と適性が有ると、治癒魔法が使える可能性が高かった。

 治癒魔法が使えたら、それだけで王家に嫁ぐ理由になるだろう。

「無理無理無理!そんな理由で第二王子に嫁がされたら、初夜前に出奔しゅっぽんするわ」


 婚約した当初より更に、フローレスの第二王子に対する嫌悪感が増していた。

 単なる勘違い俺様王子様から、二人の女を虜にする俺様世界は俺の為に在るぜ勘違い王子様に格上げされていたからだ。

 いや、格下げか。


 この事緑属性がバレてしまうと、婚約者から婚約者候補へと変更になり、更に傲慢で王子妃に相応しくないと、下がりに下がったフローレスへの評価の意味が無くなってしまう。

 周りに勘違いさせる為に書いた小説ついた嘘が水泡に帰してしまうのだ。




 学園での判定時には、特殊な魔導具を身に着け、緑属性を隠蔽して乗り切った。

 しかしそれだけでは安心出来ないので、いつものように小説でルロローズを後押ししようと思っていた。


「攻撃性の強い性格が魔力にも反映してるって書いて……あぁ!それだと他の攻撃魔法が得意の家系に迷惑が掛かってしまうわ」

 原稿用紙を前に、フローレスは頭を抱えていた。


 ルロローズが緑属性に高い適性があれば良かったのに!

 理不尽な怒りすら湧いてきていた。

 いくらフィクションでも、ルロローズが持っていない治癒魔法を、【ピンキー】に持たせるわけにはいかなかったからだ。


「ルロローズに、頑張ってもらいましょう」

 ルロローズの緑属性は皆無に近いが皆無では無い。

 練習すれば、多少適性も上がるはずだ。

「努力する姿は、それだけで好感度が上がるものね!」

 フローレスはペンを握った。



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