恋人はサンタクロース✨
たから聖
第1話 クリスマスイブ
『ねぇ?!ねぇってば!』
『んぁ~~?はぁ💨』
『聞いてるの?!吉村ってば!』
面倒臭そうに彼は、デートの時間中ずっとため息ばかり
付いていた……。
私事、琴子は吉村の友達以上
恋人未満の関係がずっと続いていた。そんな関係にピリオドを
打ちたくて、
私は吉村に、あるワガママを言ってみた。
『ねぇってば!!屋上のBARに
連れて行ってよ!ね?お願~い』
吉村は、いつも聞いてるのか?
聞いてないのか?生返事だ。
私は、そんな吉村を見ていつも
イライラしていた。
内心思っていたが……
(好きなら普通、誘わないかな?
私のこと……何も考えてくれないのかな?)
だけど、吉村はたまに私にだけ見せるとびきりの笑顔を向ける。
もぅ💨
そして……お互いの手を絡めて
繋ぐと嬉しそうにまたあの笑顔を見せる。
『ずるいよ。吉村は。』
『クスクス。そうかなぁ~』
吉村は子供の様に繋いだ手を
前後に振り子のようにふり出して
ふざけた顔で
『愛してるよ~琴子~~』
と茶化しに入る。
そんなふざけた顔で、なんてこと言うの?
だけど。吉村の事は嫌いになれなかった。
イライラやドキドキ。
ワクワクも、全部あなたのせいなのよ?!分かってるの?
そんな平和的な私達の間に
ある出来事が起こった。
吉村が、大学内の教室でクラスメイトの1番可愛い子と
抱き合っていた。と噂が流れだした。
その事を吉村に、問い詰めると
吉村は困った顔をしながら
またため息をつくと
『お前には関係無いだろ?』
『…………え?!』
『恋人でも何でもないんだからよ。』
『…………あ、その子のが
その子のが好きなんだね?私だけ吉村の事を……考えてたんだね。』
私は、悲しくて涙を隠しながらその場を走り去った。
吉村には、涙は見せたくなかった。女の武器の涙は……
とっておきの時だけにしか見せたくなかった。
何処をどう走って来たのかも分からずに、時間ばかりが過ぎていく。
涙は止まったけど。吉村への気持ちは止まらなかった。
ある公園に着くと
小さなカップルの子達が2人で遊んでいた。
良いなぁ。あんな風に素直になれたらな?
私が大きくため息をつくと、
後ろから肩を叩かれた。振り向くと……??!
『お前さん、なんか悩みがあるだろう?』
『は?!』
『悩みがあるだろう?』
『…………う、は、はい。』
その後ろに居たのはまるで物語にでも出てきそうな魔女の様な
出で立ちをしたおばあさんだった。
そのオーラに、私はうなずくだけで、精一杯だった。
『あんたの願いを叶えてやろう』
『…………え??』
『願いを叶えてやろう。』
『私は、私は……彼と恋人同士になりたいんですッッ!!もう
今の関係は、嫌なんです!』
また涙がこぼれ出した。
おばあさんは、持っていた杖を
空に振りかざした。
と…………その瞬間
雪が降り出したのであった。
『さぁ、時に人はすれ違いで
別れたりするものさ。あんたにゃ
今の人がお似合いさ。
行ってみるといい。さっきの場所へ。早く。』
『え?でも……?』
『いきなされ、早く!!』
『あ!は、はい!?』
私は走り出した。振り返ると
おばあさんは居なくなっていた。
私はおばあさんの言葉を噛みしめて走り続けた。
さっきの場所へ辿り着いたが
誰もいなかった。
私が落胆して座り込むと……
誰かが呼ぶ声が聞こえた。
『??……。ん。え?』
『よ、吉村?』
息を切らせながらも上下赤色の服に身をまとっていた吉村は
こちらに向かって一直線に走ってくる。
私は、心臓がドキドキして動けなかった。
吉村が、私のそばに来ると息を切らせながらも、いつもの笑顔が
あった。
『吉村…………。』
『はぁ、はぁ、琴子、はぁ』
『俺と……俺と……結婚してくれ!!!好きなんだ!!』
私はその言葉を聞いた瞬間に、
吉村の胸に飛び込んだ。
吉村の胸の中は、広くてやっぱり
暖かかった。思い切り吉村の前で涙を流して素直になれた様な
気がした。
私は、吉村のほっぺたを強めにつねると、吉村はまた
あの笑顔を見せた。
吉村はサンタクロースの格好をしていたので、袋の中身を聞いてみると……
抱えきれないほどの花束と
サイズぴったりな指環💍を渡された。
指環💍をはめてもらい、吉村に
プロポーズを受けた事に放心状態だった。
悲しみの涙が、喜びの涙に変わるとき……私は背を伸ばして
吉村の唇にキスを交わした。
ありがとう、おばあさん。
あの、おばあさんは一体誰だったんだろう。
もしかしたら。
この季節だけにやって来る魔法使いかも知れない。
Fin
恋人はサンタクロース✨ たから聖 @08061012
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