【第十一片】 発想の転換は悪くない

風馬と浩正は、食堂を後にすると、風馬は大食いの主人公みたいやりたいのか、そこまで膨らんでもいないお腹をポンポンと叩きながら。


「いやー、食った食った。汗もかいたし、少し寒い今日にはちょうどいいな!!」


「ご飯食べたのに、汗をかくって言葉だけ聞くとおかしなことだよ。しかも、あのカレー別にそこまで辛くなかったし。もはやもっと辛みを足すスパイスを増やしてもいいくらいだったよ」


「はぁ~?カレーはな、中辛がちょうどいいんだよ。あれ以上、辛くなったら、食べ物としての価値を失う」


「全国のカレー作っている人と辛いカレーを好む人に謝れ!絶対に言っちゃいけないことだよ」


「いや、何事も程よいくらいがちょうどいいんだろうが!つまり、大抵三種類ある、甘口と中辛と辛口のカレーのルーのどれかを選ぶなら、中辛が一般的にはいいってことなんだよ」


「どんな一般的?独自の視点過ぎるでしょ!!」


浩正はそうツッコミを入れると、大柄な先生が前から近づいてきた。つまり、二人が今朝、怒られたばかりのあの先生だ。


「お、おはようございますー」


風馬は軽く会釈をしながら、そう言ったが、隣にいる浩正が自分とは違う挨拶をした風馬に対して、なるべく小さな声で話しかけた。


「いや、今は時間的にこんにちは、だよ。風馬」


「いいんだよ、細かいことは。とにかく挨拶をする精神が大切なはずだ」


「確かにそれは大切だけど!」


と、その大柄な先生に聞こえないように、こそこそ話で会話をしていた。だが、それは割と丸聞こえだったようで、大柄な先生は表情を歪ませた。そして、首を傾げながら、口を開いた。


「お前ら、今朝のことは反省しているのか」


「もちろんです。俺は校門でビラを配るなんてことは二度としません。学校に迷惑がかかってしまうので」


「おう。よくわかっているな。そうだ、お前たちはこの学校に通っているということは同時に、この学校の看板を背負っているのと同じなんだ」


「はい。なので、今度からは学校のそこら中にポスターを張り付けたい、と思います。それなら学校の評判が悪くなることもないと思うので」


「そこら中と、いうと?」


「例えば廊下の壁一面全部とかですかね」


「やっぱり何もわかってねぇな、お前!!!もう一度、職員室に来い!!!職員室で説教するだけじゃなく、奉仕活動という名の雑用も手伝ってもらう!!」


と、その大柄な先生に首根っこ掴まれた風馬と、何故か浩正は、職員室に連れていかれたのだった。

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