第160話~王都への旅2 宿泊~

 王都への旅。

 第一日目が終わった俺たちは、宿泊先のホテルに泊まった。


「このホテルを全部貸し切りにしているのですか。……凄すぎです!」


 ヴィクトリアが今日泊まるホテルが、ヒッグス家が借り切っていると知り、感嘆の声をあげる。


 今日俺たちが泊まるホテルはこの町一番のホテルだ。

 外観もきれいで、内装もこじゃれていて王都に持って行っても一流で通用するような立派なホテルだ。

 それを一軒ポンと借り切ってしまうとか……。

 この行列に対するヒッグス家の熱意と、その財力がよくわかるというものだ。


「しかも、アタシの聞いた話だと、このホテルだけでは全員収容しきれないので、他にもホテルを借りているらしいよ」


 リネットの話を聞いた俺はそれはすごいな、と単純に感心した。

 確かにこのホテルだけでは千人もの人員は収容しきれないから、必然的にそうなるのだろう。


 ただ、そうなるといくつものホテルを同時に抑えているわけで、そのための準備にはたくさんの人員を割いたうえで、何か月もかかっているはずだ。

 この旅一つのためにそれだけの人員を割けるとか、ヒッグス家は本当に大きな組織だと思う。


 うん、お父さんとか、絶対に敵に回すのはやめておこう。

 幸いなことに、お父さんも俺のことは気に入ってくれているみたいだし、ホルスターもかわいがってくれているし、このままやっていけばよいと思う。


 それはともかく。


「まあ、折角いいホテルに泊まれるんだから、のんびり過ごすか」

「「「はい」」」


 俺たちは連れ立ってホテルに入るのだった。


★★★


「ほう、結構広い部屋だな」


 俺とエリカがあてがわれた部屋はスイートルームで、中は広く、内装も豪華だった。

 ベッドも大きく、5,6人は寝られるくらいの大きさはあったし、護衛の人間が休憩できるようなスペースもあったりする。

 まさにスイートルームと呼ぶにふさわしい部屋だった。


 こんな部屋で、エリカと二人いちゃいちゃできるとか、最高だと思った。


 ちなみに、ホルスターは今日はエリカのお父さんたちと一緒に寝るらしい。


「ホルスターちゃん。銀お姉ちゃんと一緒におねんねしましょうね」

「うん」


 何か知らんが、仲良しの銀が一緒に寝てくれるらしいので、喜んで向こうへ行っていた。

 銀もホルスターと一緒にいるのを喜んでいるらしいし、本当の姉弟みたいで結構なことだと思う。


「見てください。旦那様、付いているお風呂も大きいですよ」

「本当だ。でかい風呂までついているんだな」


 さらにこの部屋には10人くらいが入れる大きな風呂までついていた。

 これならゆっくり湯船に浸かれて、のんびりできるな。


 そんなことを考えていると、エリカが誘ってきた。


「旦那様。今日は久しぶりに一緒にお風呂に入りませんか?」

「はい」


 俺は即答した。

 ここ最近、旅に出てたり、エリカの実家にいたこともあり、ずっとエリカと一緒に風呂に入っていなかった。

 だから、ようやくエリカとお風呂に入れそうだということになり、すぐに飛びついてしまったのだ。


「それでは、食事が終わった後でよろしいですね」

「ああ」

「では準備しておきますので、心待ちにしていてくださいね」


 そう言うと、エリカは席を立って風呂の準備をするのだった。

 本当、今日は楽しみだ。


★★★


 え?一体どうなっているの?

 食事を終え、ホテルの部屋へと戻ってきた俺は目を丸くした。


「お待ちしていましたよ。旦那様」

「ホルストさん、今日はよろしくお願いします」

「ホルスト君、よろしく頼む」


 何か知らんが、部屋に戻った俺をエリカたち3人が待ち受けていた。

 しかも、3人とも露出が多くて生地も薄い煽情的な恰好をしていた。


 これは完全に俺のことを誘っていると、俺は感じた。

 大体、そもそも変だったのだ。


「旦那様、晩酌用のお酒をフロントに頼んでいますから、部屋に帰る前に取って来てくれませんか?」

「ああ、いいよ」


 食事が終わった後、エリカにそう頼まれた俺は、エリカと別れてフロントに寄ったのだった。


 これがそもそも変だった。

 別に俺が受け取りに行くようにしとかなくても、時間が来たら部屋に持ってきてくれるように頼んでおけばよかっただけの話だったのだから。


 で、俺がフロントへ行っている間にエリカたちは準備を整えたというわけだ。

 俺は今晩はエリカと二人で過ごすつもりだったから、いきなり3人で来られてまだ心の準備ができていない。


 正直に言おう。

 心の中では汗をかきまくっている。


 そんな俺の心の動揺を見透かし、からかうかのようにエリカが言う。


「それでは、旦那様。行きますよ」

「行くって、どこに?」

「お風呂に決まっているではありませんか。一緒に入ると言っていたでしょう」

「ああ、そうだったな」

「では、行きますよ。ヴィクトリアさん、リネットさん、準備はよろしいですか」

「「はい」」


 エリカの最終確認にヴィクトリアたちが元気よく返事をする。

 それを見て、俺はさらに慌てる。


「え?まさか3人で?」


 俺の問いかけに、エリカは当然だという顔をする。


「当たり前ではないですか。旦那様は私たち3人を妻にするのでしょう?だったら、3人のことは平等にかわいがってくださいね。それが私たちに対する礼儀というものですよ。わかりましたか?」

「……はい」


 エリカの有無を言わさない迫力に、俺は黙って頷くのみだった。


「後、私たち3人には何をしても構いませんが、他の女に手を出すのはNGですよ。私たち3人でちゃんと見張っていますからね。破ったら、折檻ですからね」

「……はい」

「わかったのなら、よろしい。それではお風呂行きますよ」


 それだけ言うと、エリカたちは俺を引っ張って、お風呂へと入っていくのだった。


★★★


 見られている。


 風呂に入った俺はヴィクトリアとリネットの視線を感じ続けている。

 俺は腰に布を一枚巻いた状態で湯船に浸かっているのだが、その俺の体をヴィクトリアとリネットがジッと見ていた。


 まあ、俺もヴィクトリアとリネットのことを、彼女たちはタオルを一枚体に巻き付けた状態でお湯に浸かっている、凝視しているからお互い様か。


 と、そんなことをしていると。


「そろそろ体も暖まってきましたし、体を洗いましょうか」


 エリカがそんなことを言い始めた。


「私が旦那様の背中を流しますから、あなたたち二人は旦那様の腕を洗いなさい」

「「は~い」」


 俺を湯船から引っ張り出し、本当に俺の体を洗い始める。


「気持ちいいですか?」

「ああ」


 確かに3人に体を洗われるのは気持ちよかった。

 特にヴィクトリアとリネットなど、俺の体を洗う時に顔を真っ赤にしながら一生懸命洗っていて、とてもかわいらしく思える。


「これで、キレイになりました」


 そうこうしているうちに俺の体を洗うのが終わった。

 ようやく終わったかと俺がホッとしていると、エリカが爆弾を放り投げてきた。


「それでは旦那様。次は私たちを洗ってくださいな」

「へ?」


 それを聞いて俺は驚きのあまり真顔になった。

 それに対して、エリカは当然だというように言う。


「旦那様。何を驚いているのですか?体を洗ってもらったのだから、相手の体を洗ってあげるのは当たり前ではないですか」

「それはそうだが……」

「では、さっさと洗ってくださいね」


 ということで、エリカたちの体を洗うことになった。

 といっても、体全部ではなく、背中だけだ。


 エリカから順番に洗っていく。


「とても気持ちいいですよ」


 エリカは慣れたもので、背中を洗われて気持ちよさげだが、他の二人は大変だ。


「お前ら、もうちょっとリラックスしろよ。洗いにくいだろうが」

「えー、だって」

「そう言われても」


 緊張で体がカチコチで、うまく洗えなかった。

 それを見て俺は思う。

 今はこんなだけど、そのうちにこいつらともうまく男女として打ち解けられる日が来るのだろうか。


 まあ、エリカともできたのだし、時間が経てば大丈夫だと思う。


★★★


 風呂から出た後は3人と一緒に寝た。

 とはいっても、子作りとかはせず、一緒に寝ただけだ。


 俺の右側にはエリカが陣取り、左側にヴィクトリアとリネットが陣取っている。

 ヴィクトリアとリネットは時々場所を入れ替わっていて、気が付いたら隣にいるのが変わっているという感じだった。


「「「寝る前に、お休みのキスをしてください」」」


 3人にそうせがまれたので、順番にキスした。

 3人とのキスはとても暖かくて、快感だった。


 キスの後は、同じ布団で一緒に寝る。


 しかし、女の子に挟まれて眠るのはとても気持ちよかった。

 柔らかくていい匂いのする生き物に囲まれて、眠るというのは最高の気分だった。

 彼女たちの温もりに触れられて、心も温かくなった。


 今日はよく寝られそうだな。

 そう思っていると、いつのまにか寝ていた。


 朝になって起きてから3人がすやすや寝ているのを見て、俺は幸せを感じるのだった。

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