第153話~ヴィクトリアへの告白~
エリカにヴィクトリアとリネットに対してケジメをつけろと言われた。
ということで、まずヴィクトリアとデートして来いと、言われたのだった。
「はい、旦那様。どうぞ」
そういってエリカからデートプランを渡された。
エリカによると、デートに必要なものが一通りそろっているそうだ。
何から何まで用意周到なことである。
さすが俺の奥さんだ。隙が無い。
とりあえず、ヴィクトリアを誘いに行くことにする。
「ヴィクトリア」
リビングでのんびりしていたヴィクトリアに声をかける。
「何でしょうか」
「なあ、明日暇か?暇だったら、俺と遊びに行かないか?」
「遊びに?……もしかして、それってデートのお誘いですか?」
「ああ、そうだが」
ここまで会話が進んだところで、俺もヴィクトリアも顔を真っ赤にしていた。
なんとなく、お互いに恥ずかしかったからだと思う。
だが、そうやって恥ずかしがっていたのも束の間。
「行きます!もちろん、行きます!」
我を取り戻したヴィクトリアが飛びついてくる。
「そんなに抱き着いてくるな。恥ずかしいし、今からそれじゃあ、明日のデートの楽しみがなくなるだろうが」
「それもそうですね。それでは明日、楽しみにしていますから」
そう言うと、ヴィクトリアは俺から離れてリビングから出て行った。
心なしか、その背中には羽が生えているような気がした。
★★★
翌日の昼前。
俺はヴィクトリアとデートに出掛けた。
今日のヴィクトリアは気合が入っている。
服はデートにふさわしい華やかなのを着ていたし、いつもは全然していない化粧もバッチリしている。
髪もすっきりとまとめていた。
昨日、俺とデートの約束をした後、エリカやリネットと一緒に出掛けて何か買い物をしていたみたいだし、今日は今日で2人に手伝ってもらって、デートの準備をしていたみたいだった。
「それじゃあ、行くか」
「はい」
こうして俺たちは一緒に家を出た。
★★★
ふふふ。今日は大好きなホルストさんとのデートの日です。
ホルストさんにデートに誘われた昨日から、ワタクシは気合入りまくりです。
エリカさんたちと美容室やエステに行って、髪やお肌のお手入れをしてきましたし、服も新調してきました。
万が一に備えて、ホルストさん好みの黒のレース入りの下着も新しいのを下ろして身に着けています。
ということで、準備はバッチリです。
家を出て早々ホルストさんにアピールしていきます。
「ホルストさん、手を繋ぎませんか」
「ああ、いいよ」
やった!
お許しが出たので、早速ホルストさんの手を握ります。
暖かい手です。
エリカさんがホルストさんのごつごつした男らしい手が好きだと言っていましたが、ワタクシもこういう男らしい手は大好きです。
ワタクシはホルストさんの手をぎゅっと力を込めて握ります。
ホルストさんにワタクシの思いを伝えたかったからです。
「あっ」
ここで、何とホルストさんがワタクシの手を握り返してくれました。
ホルストさんのワタクシへの愛情が伝わってくるようで、とてもうれしかったです。
そうやって、お互いに愛を確かめながら歩いているうちに目的地に到着しました。
★★★
デートの目的地に到着した。
今日のデートのメインは、最近ここネオ・アンダーグラウンドではやっているというサーカスの興行を見ることだ。
「ようこそ、お越しくださいました。お客様、チケットはお持ちですか?」
「ああ、確認してくれ」
「……はい、確かに確認しました。中へどうぞ」
俺がエリカからもらったチケットを渡すと、係の人が中へのゲートを開いてくれたので、俺たちは中へ入った。
「うわあ、たくさんの人ですね」
中は親子連れやらカップルやら大勢の人でごった返していた。
さすが、はやりのサーカス団の興行といったところである。
中に入った俺たちは、とりあえず売店に行く。
「すみません。ジュースとこのクッキーの詰め合わせください」
サーカスを見物中に食べるおやつを買いに来たのだ。
昼飯は食べない。
二人とも家を出る前に軽く食べてきたからだ。
おやつを買った後はテントの中へ入る。
「割といい席ですね」
「ああ、そうだな」
エリカがとってくれた席は、真ん中より少し前のサーカス団の芸が一番よく見える席だった。
そこへ二人一緒に座る。
「ホルストさん、いいですか?」
席についてすぐに、ヴィクトリアがそう言いながら俺の手を握ってくる。
というか、俺が何か言う前に握るのはどうなのよ。
まあ、別にいいけど。
「いいよ」
「はい」
ヴィクトリアの手から暖かさが伝わってくる。
ヴィクトリアの手は柔らかくて華奢だ。
その手に触れるのはとても心地が良い。
このまま、普通に握られていてもよいのだが……俺はちょっと握り方を変えてみる。
「ホルストさん?」
ヴィクトリアが驚いた顔になる。
俺が今したのはお互いの指と指を絡めあう握り方、いわゆる恋人つなぎというやつだ。
ヴィクトリアとこれをしたのは初めてなので、驚いたのだと思う。
「こういうのは、嫌か?」
「いいえ、とてもうれしいです」
「それじゃあ、サーカスが始まるまで、このままでいくか」
「はい」
そして、俺たちはサーカスが始まるまで、このまま手を握っていたのだった。
★★★
「サーカスって、実物は初めて見ましたが、とても面白いですね」
サーカスを見たワタクシは思わず興奮してしまいました。
高いところに張った綱を綱渡りしたり、猛獣に火の輪をくぐらせてみたり、ピエロの人が玉乗りだとかジャグリングだとかしてみたりと、豊富な演目でワタクシたちを楽しませてくれます。
演目の間にもちらちらとホルストさんの方を見ます。
ホルストさんもワタクシ同様、サーカスを一生懸命見ながら、時々、ワタクシの方を見ます。
だから、ワタクシが見たのとかち合ったときは、目があったりします。
そういう時はお互いに照れ隠しに笑いあったりします。
何かようやくホルストさんと心が通じ合えたり知ったようで、とてもうれしいです。
「さて、皆様、本日は問うサーカスの公園においでくださりまことにありがとうございました。本日の演目はこれにて終了となります。皆様のまたのお越しをお待ちしております」
しかし、楽しい時が終わるのはあっという間です。
「さて、サーカスも終わったことだし、次行くととするか」
「はい」
サーカスを楽しんだワタクシたちはサーカスを離れ、次の目的地に向かうのでした。
★★★
「いらっしゃいませ」
「予約していたホルストですが」
「ホルスト様……はい、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
サーカスを離れた俺たちはレストランへ向かった。
このレストランは超の付く高級店で、利用するには誰かの紹介がいる。
ちなみに、紹介者はヒッグス商会、つまりエリカの実家だ。
エリカの実家は手広く商売をやっているので、こういう所にも伝手があるのだ。
「うわー、人がいっぱいいますね」
俺たちが通されたのは、表通りが見渡せる2階の席だった。
通りをたくさんの人が歩いているのが見物できて、特に祭りのときとかはパレードが通るのも見る
事ができたりして、人気らしかった。
「それじゃあ、飲み物はこのワインで」
「畏まりました」
席に着くと、とりあえず飲み物を注文する。
料理の方は予約の段階で頼んでいるので、じきに出てくると思う。
ここで、俺は自分に気合を入れ直す。
なぜなら、今から一世一代の儀式を行うからだ。
「なあ、ヴィクトリア」
俺はヴィクトリアに声をかける。
「お前に、話があるんだけど、聞いてくれないか?」
「はい」
俺の言葉を受け、ヴィクトリアが俺のことをじっと見つめてくる。その瞳は、期待であふれていた。
それを見て、俺は気持ちを奮い立たせて言う。
「ヴィクトリア、俺はお前のことが好きだ。結婚してほしい」
「はい、喜んで」
俺の結婚申し込みに、ヴィクトリアはすぐにオーケーの返事をした。
これで、告白の儀は終わりだ。次のステップに移行する。
「ヴィクトリア」
俺は立ち上がり、ヴィクトリアの側に近づくと、ヴィクトリアの唇に俺の唇を近づける。
ヴィクトリアも抵抗せず、目を閉じたまま、俺を受け入れる。
ブチュ。
ヴィクトリアとキスをした。
そのまま、しばらく二人で抱き合った。
それは永遠とも思えるほどの長い時間唇をくっつけていた。
「あの、料理をお持ちしたのですが……」
それは料理が運ばれてくるまで続き、そこで我に返った俺たちは赤面し、その後は特に何事もなく、料理を黙々と食べたのだった。
★★★
ホルストさんがようやく告白してくれました。
滅茶苦茶うれしかったです。これでようやくホルストさんと恋人になれたと思いました。
さて、告白タイムの後はホルストさんが記念に買い物に連れて行ってくれるそうです。
「何でも好きなものを買ってやるからな」
「本当ですか?ありがとうございます」
そうは言ったものの、ワタクシの欲しいものはもう決まっています。
だから、ちょっとイジワルっぽく、ホルストさんに言ってみます。
「今、ホルストさん、何でもって言いましたけど、多分、ワタクシの欲しいものすぐには用意できないと思いますよ」
「ほう、そうなのか?まあ、言うだけ言ってみろよ」
「いいんですね?じゃあ、言いますよ。ワタクシのほしいもの、それはホルストさんの赤ちゃんです」
「え?」
ワタクシの言葉を聞いて、ホルストさんが非常に驚いた顔になります。
それを見てワタクシはくすくすと笑います。
「ほら、すぐに用意できないでしょう?でも別にワタクシも急ぐ気はないです。おばあ様の依頼を片付けて、世界が平和になった後で大丈夫です。だから、今のところは」
ワタクシは近くのお花屋さんを指さします。
「あそこで、花束でも買って、ワタクシにプレゼントしてください」
「わかった」
ワタクシの言葉を受けたホルストさんは、花屋さんに行き、大きな花束を買ってくれました。
「ありがとうございます」
「別にどうってことないさ。それよりも大分いい時間になってきたことだし、家に帰るか」
「はい」
そう言うと、ホルストさんはワタクシの腕をガシッと掴み、腕を組みながら歩き始めました。
そして、そのまま腕を組みながら家まで帰りました。
本当、今日は最高の一日でした。
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