第144話~地底湖への洞窟 前編~
ネオ・アンダーグラウンドの冒険者ギルドの酒場で楽しくやった数日後。
「さあ、それでは出発するぞ」
「「「「はい」」」」
俺たちは地底湖への洞窟へと出発した。
「パトリック、頼むぞ」
「ブヒイイイイン」
俺はそうパトリックに声をかけ馬車を発車させる。
「リネットお姉さまたち、お気をつけて」
出発にあたってスーザンが見送りに来てくれた。
宰相とセリーナさんは用事があってこれなかったので、彼女とコリンナさんが見送りに来てくれた。
「ああ、行ってくる」
俺たちも手を振りながらスーザンに行ってきますをする。
こうして、俺たちはネオ・アンダーグラウンドの町を離れた。
★★★
「地下空洞のモンスターって、地上と結構違いますよね」
そう言いながらヴィクトリアが身を震わす。
ヴィクトリアの言う通り、地下の魔物の生態系は地上と異なっていた。
「何ですか。ミミズとかアリとかダンゴムシとか、そういう虫が魔物になったのが多いですね」
「確かに」
地下世界の魔物には虫型の奴が多かった。
別に強くはないのだが、姿かたちが気持ち悪いのが多かった。
普通の虫なら平気な人でもそれが大きくなって襲い掛かってくると、嫌悪感を抱いてしまうのだった。
「まあ、そんなことを言っても仕方ないだろうが。それよりも次が来たぞ」
しかも、虫型の魔物は数が多い。
折角倒しても30分もしないうちに次の群れが来た。
今度のはソルジャーアントの群れで、全部で20体ほどいる。
ソルジャーアントはアリをでかくした魔物で1体1体は大した強さではないが、集団で押しかかってくるのが厄介な連中だ。
「仕方ないですね。さっさと、やっつけちゃいましょう」
すぐに戦闘態勢に入る。
『神強化』」
「『筋力強化』、「敏捷強化」」
まず、補助魔法をかけて俺とリネットが突撃する。
「『精霊召喚 土の精霊』」
そして、ヴィクトリアが防御を固め、
「『火球』」
「『狐火』」
エリカと銀が支援攻撃する。
「終わったな」
ものの5分も経たないうちにアリたちは全滅する。
「よし、移動を再開する」
魔物を倒したら移動を再開する。
目的地はまだ遠い。
★★★
『テルメ』という町に着いた。
ネオ・アンダーグラウンドとドワーフ王国第2の都市を結ぶ街道の途中にある町だ。
「見てください。町のあちこちから湯気が立っていますよ」
ヴィクトリアが町から立ち上る湯気の柱絵お指差しながら、興奮気味に言う。
「この町は温泉として有名らしいよ。なんでも、ここの温泉は入ると肌がつやつやになるとか。ネオ・アンダーグラウンドの貴族たちの貴婦人たちには人気らしく、セリーナ叔母様もたまに来るって、言っていたよ」
「「つまり、肌ツヤ温泉ってことですか」」
お肌に良いと聞いて、エリカとヴィクトリアが前のめりになる。
本当、女の子というのはこういう美容情報に敏感だ。
まあ、俺もエリカたちがきれいでいてくれた方がいいので文句は言わないが。
「そういうわけで、旦那様。ぜひとも止まっていきましょう」
ということで、俺たちはここで一泊していくことになった。
★★★
俺たちが向かったのは『アドバンステルメ』というこの町で一番の高級ホテルだ。
ここはリネットの叔母さんのセリーナさんの紹介だ。
どうもクラフトマン宰相家の御用達らしく、セリーナさんがこの町に来た時はいつも泊っているらしかった。
「それじゃあ、行くぞ」
今しがた『空間操作』の魔法でヒッグスタウンから連れてきたホルスターと一緒にホテルへと入る。
「すみません。これから宿泊できますか」
「失礼でございますが、お客様、ご予約とかされていますか」
受付の人の顔がゆがむのが確認できた。
さすがは高級ホテル。初見さんはお断りというわけか。
だが、俺たちには切り札がある。
「いえ、予約はしていないのですが、こちらの家からご紹介を受けまして」
そう言いながら、俺は九タフトマン宰相家の家紋入りのペンダントを見せる。
ちょっと卑怯というかズルいやり方だが、この際だから利用できるものは利用させてもらう。
ペンダントを見た受付の職員の顔つきが真剣なものになる。
これは効果てきめんである。
職員さんの態度が一変し、深々と頭を下げる。
「これは失礼いたしました。クラフトマン宰相家様のご紹介でしたか」
「うん、それで泊まれるかな?」
「もちろんでございます。それで、どちらの部屋にお泊りですか」
「一番高い部屋で頼む」
俺は迷うことなく一番高い部屋を頼んだ。
リネットのおじいさんの家名を出した以上、それ以外の部屋に泊まるなど家名に泥を塗ることになってしまうからだ。
「畏まりました。何泊なさいますか」
「本当なら、2,3泊してゆっくりしたいところだけど、急ぎの旅の途中でね。そのかわり、夕飯は一番高いコース料理と酒を出すようにしてくれ」
「畏まりました」
これで、ここへ宿泊することが決まった。
しばらくすると、ボーイさんが来て俺たちの荷物を部屋に運んでくれた。
さあ、楽しい時間の始まりだ。
★★★
「ホルスターちゃん、銀お姉ちゃんが体を洗ってあげるからね」
「うん」
ヴィクトリアです。
今、ワタクシたち女性4人組はホルスター君を連れて、一緒に女風呂に入っています。
で、ホルスター君の面倒は銀ちゃんが見てくれているので、残りの3人で女子トークの時間です。
「ここの温泉は、肌に染みこむような泉質でお肌によさそうですね」
「本当だ。湯船につかっているだけで、肌が生き返っていくようだ」
「最高ですね」
噂通りここの温泉は肌によさそうです。
なので、3人とも満足です。
なにせ3人ともホルストさんの子をたくさん産みたいのです。
そのためには、ホルストさんに気に入ってもらわなければなりません。
だから、3人とも必死に自分を磨いています。
「さて、お肌もきれいになったことだし、キスもしたことだし、あなたたちもいよいよ旦那様と二人で一夜を過ごす時が来たようですね」
湯船でのんびりしていると、エリカさんが突然話題を変えてきました。
「え、突然なんですか?」
「え、それって」
話題がいきなり突拍子もない方向に言ったので、ワタクシとリネットさんがしどろもどろになりますが、それでエリカさんが許してくれるわけがありません。
「別にそんなに慌てるようなことではありませんよ。男と女が一緒になるということは最終的にはそういうことですから。……とは言っても、いきなり子作りとかは無理そうですね。では、そのひとつ前の段階まで行きましょうか」
「『ひとつ前の段階ですか?」」
「そうです」
エリカさんはうんと、頷きます。
「添い寝です。あなたたち旦那様に添い寝しなさい」
「添い寝ですか?」
「そうです。私も結婚前、駆け落ちしている間でも旦那様に添い寝してあげていました。だから、それくらいはしてみなさい。そんなに難しいことではないはずですよ」
エリカさんの言葉を聞いてもワタクシたちはちょっと悩みました。
だって、二人とも男性と一緒に寝たことなどお父さんか男兄弟くらいしかないもので。
ただ、エリカさんはなおも押してきます。
「大丈夫です。私がちゃんとおぜん立てをしてあげますから」
エリカさんがいろいろやってくれているおかげで、今の所うまくやれています。
ならば、今度も。
「「よろしく、お願いします」」
そう思ったワタクシたちは結局エリカさんに頼ることにしたのでした。
「エリカ様、ホルスターちゃん洗い終わりましたよ」
ちょうどその時、ホルスター君を洗い終わった銀ちゃんが帰ってきました。
これで、女子トークは終了です。
「よしよし、ホルスター。後はママの膝の上でのんびりしましょうね」
その後はすっかりママモードになったエリカさんを見ながら、のんびりするのでした。
★★★
「くそう、エリカと一緒に風呂に入れなかった」
その日、俺は地団太を踏んで悔しがった。
というのも、ここは由緒ある高級ホテルなだけに混浴風呂がなかったからだ。
仕方ないので、その分夜を楽しむことにしよう。
「エリカ、いいかな?」
ホルスターを寝かせて俺の所へ来たエリカを誘う。
「はい、喜んで」
その日のエリカはいつもよりきれいだった。
きっと、肌ツヤ温泉とやらの効果が出たのだと思う。
エリカの肌や髪を触る感覚がいつもより心地よかった。
俺はいつもより燃えた。
「旦那様、大好きです」
「俺もだ」
俺は十分満足した。
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