閑話休題18~その頃の妹~
私の名前はレイラ・エレクトロンと申します。
「主神クリント様。あなたの加護で今日も一日私どもをお守りください」
私は今礼拝所で神様に向かってお祈りしています。
清楚なシスター服を着て、神様に必死にお祈りします。
お祈りしているのは私だけではありません。
ここにはたくさんの神に奉仕する女の子が集まっていて、みんな私と同じように神にお祈りしています。
ここは山奥の修道院。
信仰に生きるべく多くの乙女が集まってくる神聖な場所。
神に仕える乙女の聖地。
世界で一番清らかな場所です。
ここで、みんなでこうしてお祈りをしていると、心が洗われるような気がします。
このままここで一生過ごして、信仰に生きようかしら。
そんな気にな……なるわけないだろが!このくそ修道院が!
というか、ここは修道院というか、問題児を集めて根性を鍛え直すための修行道場じゃねえか!
朝は太陽が顔を出す前から起きて、毎日滝行しなければならないし、それが終わったと思ったらすぐ神様にお祈りしなきゃだし、その後も一日中神様の教えの勉強や畑仕事をして過ごさなければならない。
本当にここは天国に一番近い場所どころか地獄だった。
それが嫌で逃げだす子もいるがたいてい失敗する。
というのも、この修道院は高い山の上にあり、女の足で逃げるには厳しい場所だから。
それにうまく麓まで行けたとしてもすぐに捕まってしまう。
なぜなら、ここに修行に来ている女の子の頭は揃いも揃ってツルツルに剃られた坊主頭だから、すぐにここの子だとばれ、連れ戻されてしまうのだ。
そう。今の私の髪形は青々とした坊主頭だ。
シスター服を着ていなければ坊主頭が丸見えの状態だ。
女の子に坊主とかなんだよ。ちくしょう。
本当にそう思う。
修道院に来た初日、ここに一緒に連れてこられた子たちと共に、修道院長自らの手で、全員断髪されてしまった。
ハサミで大雑把に髪を切られた後、カミソリで全部剃られてしまった。
ここは神に使える乙女たちの神聖な修行の場。
ここで修業をする者は、雑念を払うため全員丸坊主にする規則なのだ。
私たちはもちろん、修道院長をはじめとする修道女全員が丸坊主である。
坊主頭にされた私たちは全員泣きに泣いた。
髪の毛がなくなってツルツルになった頭を触りながら、この世の終わりのような顔をしていた。
まだ私は髪の毛が短かったのでそこまでの喪失感はなく、ちょっと泣いたくらいで済んだが、私の隣でお祈りしている子、フレデリカという名前だが、などは、長い金髪縦ロールの髪型から一気に坊主にされて、それはそれは泣きわめいていた。
ちなみに、そのフレデリカはここへ来る前札付きのワルだったらしく、深夜山の中で男と2人花火大会をして山を火事にしてしまったらしい。
そのせいで、かなり山が燃えてしまい、激怒した親の手によりめでたく修道院送りとなったそうだ。
他の子たちもフレデリカに負けず劣らずの悪事をしてここへ来た子たちばかりだ。
本当、ここには碌なのがいなかった。
そんな碌でもないのを更生させようというのだから、ここの修業は厳しい。
先ほども述べたように、朝は滝で冷たい冷たい水を頭からかぶることから始まり、一日中修行の日々だ。
それに、修道院長をはじめとする修道女たちの監視も厳しい。
ちょっとでもさぼっているのがばれると。
「まあ、いけませんよ。シスターレイラ。頭を冷やしてきなさい」
そう注意されて、即滝行送りだ。
「うう、冷たい」
そうやって水の冷たさに耐えながら30分も滝行しなければならなかった。
「本当にここは地獄だ」
こんな地獄からはさっさとおさらばしたい。
そう願いながら、私は日々を過ごしている。
私の年季は来年の春まで。
そこまで我慢すればここから帰れる。
それを希望にして私はここでの生活に耐えている。
それと、もう一つ。私にはひそかな楽しみがある。
★★★
深夜。同室の子らが寝静まったころ。
「ふふふ、今日の日記はこれでおしまいね」
私は星の明かりを頼りに一人日記を書いていた。
この日記の内容はというと、もちろんステキな日々の思い出の記録。……というものではなく。
「今日は掃除をさぼったのがばれて、修道院長に滝行に行かされました」
ここで私が受けた仕打ちの記録だ。
「くくく、見てなさいよ、くそ兄貴!ここを出たら、私が受けた仕打ちの何倍もやり返してやるんだから」
そう。私はこの記録をもとに、兄貴に何倍もの仕返しをしてやるつもりだ。
それだけが今の私の夢であり、希望だ。
「さて、日記も書いたしそろそろ寝ましょうか」
日記を書いた私はベッドに入る。
自分の夢がかなうことを夢見て明日も頑張るために。
ーーーーーーー
これにて第7章終了です。
ここまで読んでいただいて、気にっていただけた方、続きが気になる方は、フォロー、レビュー(★)、応援コメント(♥)など入れていただくと、作者のモチベーションが上がるので、よろしくお願いします。
それでは、これからも頑張って執筆してまいりますので、応援よろしくお願いします。
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