第77話~希望の遺跡、最深部その2~
アリスタが仕事モードに入った。
「まず、昔話から話そうか。プラトゥーンを封印するに際して、神々は鍵と地脈の力を使ったんだ」
「鍵?それはもしかして『アルキメデスの鍵』のことですか」
「そうだよ。よく知っているね。『アルキメデスの鍵』はプラトゥーンを封印するための鍵さ。ただ、鍵だけで封印しているわけではないけどね」
「それが地脈の力ですか」
「そうだよ。だから、まずはあんたに新しい力を授けておこうか」
そう言うとアリストはエリカの時みたいに手をかざした。
俺の体が光に包まれる。
「これであんたに新しい力が備わったはずだ。確認してみな」
俺は神属性魔法のリストを確認した。
『神属性魔法』
『神強化+1』
『天火+1』
『天凍+1』
『天雷+1』
『天爆+1』
『天土』
『重力操作』
『魔法合成』
『地脈操作』
『空間操作』
『地脈操作』と『空間操作』が増えていた。
「『地脈操作』と『空間操作』ですか。これはどういうものですか」
「『地脈操作』は文字通り地脈を操る力だよ。実は、プラトゥーンを縛る地脈の封印が弱ってきているんだよ」
「封印が弱っているんですか」
「そうさね。封印を解こうとしている連中、自分たちでは『神聖同盟』とか名乗っているみたいだけどね。あいつらが余計なことをしているせいで封印が弱ってきているのさ」
『神聖同盟』か。あの連中大層な名前を名乗っていたんだな。
「ほら、セイレーンの所の『海の主』や『ヤマタノオロチ』の件は全部あいつらの仕業さ。神獣は地脈の封印の守護者だからね。神獣を暴れさせて地脈を弱らせるのがやつらの狙いさ」
「神獣が守護者なんですか」
「そうだよ。地脈の封印はここの遺跡を中心に東西南北に4つある。プラトゥーン配下の4魔獣を封印の要石にして、封印を形成している。そして、それを神獣たちが守護している。キングエイプが一時的に復活したのも、ヤマタノオロチが弱り封印が弱体化して、封印の重しとして置いてあったキングエイプを取り出せるようになったからさ」
成程、そういうことか。
だが、それならば。
「神獣が守護しているのなら、封印はまだ大丈夫なのでは?」
「それが、そう単純でもないのさ。この前の1件で、海の主とヤマタノオロチが攻撃を受け、キングエイプまで一時的に復活してしまった。その後あんたたちのおかげで2体は元に戻ったが、それでも2体で守っていた東の封印は弱ったままで、全体的にも封印が緩んでしまったんだ。まず、あんた等がすべきことはまずその封印の修復さね」
「そのための『地脈操作』だと?」
そういうことなら、俺の力で地脈を元に戻していくしかないのか。
ただ、今のアリスタの発言で一つ気になることがある。
「アリスタ様は今、”まず”とおっしゃいましたが、それはやることが他にもあると」
「そうさね。もう一つは『アルキメデスの鍵』の奪還だよ。あれは、プラトゥーンの封印を解くための最後の鍵だからね。あれが外にあると邪なことを考えるやつが出てくるからね。あれは性質上、世界の外に持ち出せないようにしてあるから、フソウ皇国の皇王に頼んで、私も協力して強力な封印を施していたんだが、奪われてしまったね。まさか、皇族にあんな馬鹿が出てくるなんてね。頼むから、取り返してくれよ」
アリスタはそう言うと縋るような目で俺を見てきた。
それは俺におねだりをしてくるヴィクトリアにそっくりだった。
こういうところを見ると、この人とヴィクトリアは血がつながっているんだなと思う。
「わかりました。全力でその4カ所の地脈の封印を修復し、『アルキメデスの鍵』を奪い返します」
「頼んだよ」
アリスタはそう言うと、励ますかのように俺の肩をポンポンたたいてきた。
「それで、一つ聞きたいのですが、もう一つの『空間操作』とは」
「そっちかい。『空間操作』は文字通り、空間を操る能力さ。色々使い道はあるが、簡単に言うと、遠く離れたところでも一瞬で移動できたりするっかね」
おっ、それはすごいな。転移魔方陣の魔法版みたいなものか。
「それは素晴らしい力ですね」
「そうだろ。『空間操作』があれば、移動がスムーズだからね。必ずあんたたちの冒険の手助けになるはずさ。いつでも町に補給に戻れるし、子供がいるんだったら毎日でも顔を身に帰ってやれるよ。ただし、少し制限を着けさせてもらったよ」
「制限ですか?」
「そうだよ。『空間操作』は使い方を謝ると世界を壊しかねないからね。だから、『一度行ったことがある場所にしか行けない』、『ダンジョン内では使えない』という制限を着けさせてもらったよ。まあ、熟練度が上がればもう少しできることが増えるとは思うけど、今のところはそれで我慢しておくれ」
「いえ、これでも十分すぎます。ありがとうございます」
俺はぺこりと頭を下げた。
「さて、それでは、あんた以外の人たちにも力を授けようかね」
「えっ、旦那様だけでなく、私たちにも何かくださるのですか」
「そうだよ」
アリスタはこともなげに言った。
★★★
「それでは、これを渡しておくよ」
そう言うと、アリスタは、黒、赤、白の3つの宝石を出してきた。
「アリスタ様、これは?」
「黒いのが『戦士の記憶』、赤いのが『魔法使いの記憶』、白いのが『僧侶の記憶』だよ。あんたたち、セイレーンにペンダントをもらったんだろ。あれにくっつけてやるからだしな」
エリカたちがペンダントを差し出すと、アリスタはペンダントに宝石をくっつける。
そして、『戦士の記憶』をリネットさんに。
『魔法使いの記憶』をエリカに。
『僧侶の記憶』をヴィクトリアに。
それぞれ渡した。
「アリスタ様、これは?」
エリカがアリスタにこれが何かを聞く。
「これは神器さ。大昔に古代神と戦った強者つわものたちの戦闘経験が詰まっている。これを身に着けて経験を積めば、その技や魔法が必ずお前たちに身に付くはずさ」
「まあ、そんな貴重なものを私たちに?よろしいのですか」
「当然さね。お前たちがこれからすることを考えれば必要な力さ。頑張っておくれよ」
「はい、がんばります」
エリカは力強く返事した。
「それと、これも渡さないとね」
そう言うと、アリスタは1本のハンマーを俺に手渡してきた。
「『熱砂のハンマー』だよ。これが、ここに来た一番の目的だろ?これを使って最強の武器を作って、使命を果たすんだよ」
「はい、わかりました」
俺はアリスタの言葉に頷く。
「それと、最後に真なるオリハルコンを授けてやろう」
「真なるオリハルコン?ですか」
「そうだ。オリハルコンには上がある。それが真なるオリハルコンだ。それを使えばさらに強力な武器が作れるよ。ただ」
「ただ?」
「ただ、入手には少し条件があるんだ。それについて今から話すよ」
アリスタが、真のオリハルコンの入手条件について話し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます