何を求める

最近、隣のクラスの林が、休み時間になると、あたしの席まで来る。小学生の頃は時折ドッジボールなどする仲だったけど、中学に入ってからは遊ぶ事もなくなった。あたしがトイレに行くと言っても待ってると言うのだ。そして‥気がついた‥出席番号で席になる時、隣の席になる、じゅんを目当てに来ている事に。

じゅんは色白で短髪、ボンタン休み時間はほとんど寝ている。起きると大体プリントが顔に張りついている。肌がスベスベで赤ちゃんみたいだ。じゅんが起きていた時、林が来た。

「じゅん君、部活一緒なんだ~」

じゅんを気にしながら、あたしに話かけてきた。

「ふ~ん」

まるで、あたしなど見ないで、じゅんを見ている。

「じゅん君、今日部活来る?」

じゅんはボケッとしている。いつもそうだワンテンポ遅いというかマイペースなのだ。

「じゅん、林が部活来るか聞いてるよ」

たまらず口を出した。

「えっ?」

ニコニコ笑ってあたしを見た。

「あたしじゃないよ。林が聞いてんの」

「なんだよ~面白いね」

なにがよ…じゅんが一番面白いよ。

じゅんはこう見えて、なかなかの人気者だ。好きだという子が結構いて驚いた事がある。母性本能をくすぐるのだろうか‥じゅんの前の彼女から聞いた、じゅんらしい話がある。自転車で二人乗りしていた時、彼女が途中でおちてしまった‥じゅんは気づかずドンドンこいで行ってしまったらしい。にわかに信じられないが、それが、じゅんなのだ。

「あのさ~お願いあるんだけど…」

林がモジモジしている。聞かなくても何の事だか解る。

「あのさ‥じゅん君て‥交換日記やってる人いるのかな?」

はい?交換日記?ある意味想像を裏切られた。

「交換日記?どうだろうね」

ふつう、付き合ってる人いるか聞くんじゃないの?林もなかなかだな‥それとも又あたしの普通がおかしいのか?

「ねぇ今、交換日記やってる人いる?」

ニコニコ…

「聞いてる?交換日記だよ。いるの?」

「なに?お前‥」

「こ、う、か、ん、にっきだよ。やってる?」

「いないんじゃない?なんだよお前~」

自分の事なのに曖昧なのは何でだ?いないでいいのかな‥多分‥独特の間が面白いけど、雲を掴むような男だ。早速、林に伝えて速攻トイレに逃げた。

「今日、瀬戸んち行く?ゆう来ないってイジけてるよ」

サキに誘われた。あれから何となく出かけなかった。

「サキ行くなら、ちょこっと行こうかな~先行ってていいよ適当に行くね」

夕食後、少し休もうと思ったら寝落ちして、少し遅くなってしまった。初めて一人で来たから入りづらい‥ベッド側の窓から中を覗くと、瀬戸がいつも音楽を聴いている場所に座っていた。

コンコン‥窓を叩くと、すぐに瀬戸が気づき、勢いよく窓を開け抱きついてきた。

「ちょっちょっと待って~倒れる」

そのまま手を引かれた。慌てて靴を脱ぎ、窓から部屋へ入った。

「みんなは?」

「いるよ。あっち」

また抱きしめてきた。

「どうしたの?」

何となく瀬戸らしくないな‥

「もう来ないかと思った」

頬と頬をすり寄せてきた‥どうしたんだろう‥

「いったん何か飲んでもいい?」

手を引かれ隣の部屋へ行った。

「あれ?ゆう‥どっから来たの?急に現れた」

アハハハ‥皆だいぶご機嫌だ。

「イリュージョン」

カンジくんが身振り手振りでポーズを決めた。

ギャハハハ…はちゃめちゃ盛り上がって楽しそうだ。まだテンションがついて行けない。

瀬戸がブランデーの水割りを作って渡してくれた。

「音楽聴こう」

手を引っ張られ連れて行かれた。強引だったけど落ち着いたみたいで、今度は黙っている‥半端に寝たからまだ眠い。黙って音楽を聴きながらウトウトしていた。瀬戸が手を回し、あたしの頭を自分の肩に乗せた。心地いい…

「寝ていいよ‥ベッドで寝る?」

「ベッドで寝たら、朝まで起きれなそう‥」

「起こすよ」

優しく、あたしの髪を撫でた。

「会いたかった」

目を閉じて夢うつつで聞いていた。

この安らぎは恋なのだろうか…

「好き」

頭に顔を寄せ、強く抱きしめ囁いた。

「明日も待ってるから」






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