あたしの知らない世界

「ゆう、帰りちょっとノラんち付き合ってくんない?」

「どした?」

「プリント届けるの頼まれた」

「ああ、いいよ」

ノラは、ほとんど学校に来ない。プレハブの家に一人で住んでいて、離れの家に誰か身内がいるらしい。最近はクニがよく行っていると噂で聞いた。クニをノラが呼び出すらしい。

あたしはノラと、ほとんど話した事がないから事実は知らない。地元のたまり場の一つになっていた。

「ピアス開けた?」

「まだ‥買いに行く暇なくてさ」

「ちゃんとしたの買った方がいいよ」

「ちゃんとしたのって?」

「18Kとかそういうの‥ちゃんとしたのじゃないと耳腐るんだって」

「えっ?耳腐るの?」

「ちゃんとすれば大丈夫。消毒したり‥あたし大丈夫だもん」

やる気だったけど、腐ると聞いて少し萎えた。

「プリント持って来たよ~」

サキがドンドンとドアを叩いた。

「いつもなかなか出て来ないんだよ」

痺れを切らしサキがドアを開けた。

「ゆう一緒に来て。誰かしらいるから一人じゃ嫌なんだよね」

中に入ると、何人かで雑魚寝していた‥

ノラとクニもいた。

「プリント置いとくよ」

サキは声をかけると机にプリントを置いた。

ノラは何も言わず、それを見ていた‥

「ノラ凄いな‥何人もでよく寝れるな」

「いつもあんなんだよ」

「クニと付き合ってんじゃないの?よく平気だな。あいつも」

「クニはノラに呼ばれるから、たまに行ってるみたいよ。学校にも来ないじゃん」

「付き合ってないの?一緒に寝てて?」

「なんか…あの二人は大人の関係ってやつ?ノラは好きみたいだけどね」

ん?サキ…なんか‥サラッと凄い事言ったけど…

あたしの知らない世界が色々あるんだな‥

一+一が二じゃない世界。

答えは人それぞれ。

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