突発性の高い詩

雨湯うゆ🐋𓈒𓏸

大八洲の憂哀

箱庭の放浪者

僕の愛しくも恋しいことはない友よ。

僕はこれから、八千代よろずよの時を生きし群千鳥和人の巣へ、子安貝を探しにいくんだ。

 無論、そこにはそれだけでないだろう。羽だってあるだろう、まだ温い卵だってあるだろう。

 そして僕はそれら全てを奪い去って帰るに違いない。


少し前、

ケルベルスにも似た獣の罪を犯して、

火と硫黄いおうの洪水に、君の全てがまれるよりも前だ。


私は妄執もうしゅう船頭せんどうに、

君は記者の描いた白黒の絵画に

手を引かれて、

まち針の長さの先すらも見誤ってしまう暗闇に、

ひどく座礁ざしょうした事を強く記憶しているに違いない。

ことに君は、

あのような仕儀しぎに身を伏したのだから。



ときに、

あの時の我々は暗闇の中を人類の原初の敵が如く、這って嘆くしか出来なかったのだろうか。

いや、我々はその暗闇に向かって松明たいまつを投げることだってできたはずだ。


我々は飼犬で、

きっと今までの全ての任を背負いこむ博打ばくちな自己の生き様に、耐え得ることが出来ず、

この首に、足に、口に、そして尾っぽに、様々なかせを背負ってでも、

その任を他者に預けたかったのだと思う。

たとえ枷がいくら重かろうともだ。


野犬のもっている自由とは、

神をも凌駕りょうがする偉大な理想と同時に、

バアル・ゼブルの毛も立ち上がらせるほどの畏怖いふに、傍観ぼうかんのみの結末しか生まぬ未来を孕むものだ。

そしてこの自由を首輪にしたものらが有象無象に溶け込み、枷を渡すのだ。

犬が犬を飼うとは一興いっきょうにしか過ぎない。


そこで僕は“人間”になろうと思う。

犬を飼う者は元来、人間だろう?

僕は野犬を超越した自由を、

野犬の暮らすこの庭で自由に探す放浪者となる。


君はその檻からとくと見ておけば良い。

きっと僕が君の足元にランプを投げつけてやる。


Watch your step!足元にご注意を!


  君の隣に居座るドウシ

          A・M・


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る