第5話 ベッドは一台だけ
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運ばれた部屋は私の個人部屋ではなく、彼らが寝起きしている部屋だった。
私を彼らの相部屋に連れ込むあたり、本気で触れ合うつもりでいるんですね……
精霊使いは鉱物人形たちと共同生活を行なっていることが多く、私も同様に寮で生活をしている。寝込み中に魔物の襲撃を受ける可能性もあるので、使役する鉱物人形で精霊使い自身を守らせる目的もあるのだ。
というわけで、安全性を担保しつつ個人的な接触を避けるために、鉱物人形たちが主に生活しているフロアと私自身が生活しているフロアは分けているのだが、私はアメシストとシトリンの共同部屋に案内されたわけだ。
部屋の奥の大きなベッドの中央に私はおろされた。ほどよくふかふかで気持ちがいいが、寝心地に感動している場合ではない。
「……あの」
不安になって声が漏れた。
私の左右にアメシストとシトリンが腰を下ろす。すでに逃がさない構えである。
「うん?」
私の顔を覗き込んだアメシストはご機嫌だ。何を聞かれるのだろうかとニコニコしている。
「このベッドでお二方は寝ているんですか?」
兄弟みたいなものだからと相部屋で生活させているのは記憶にあるのだが、ベッドはそれぞれに一台ずつ与えていたはずだ。
基本的に、鉱物人形にはひと部屋を与え、ベッドや机などの最低限の家具はそれぞれ一台ずつ用意している。なので、この大きなベッドには違和感があった。寝られるような場所がこの部屋にはほかにないのも気になる。
……ええ、お二方をそういう目で見てはいましたよ? でも、初めっから一緒のベッドに入れるようなことはしませんって。
私が尋ねれば、アメシストは私の前髪を上げながらうんと頷いた。
「そうだよ。初めての給料をもらったときに、大きいのにしたんだ」
「なんで?」
「離れていると落ち着かなくてな……前の狭いベッドでも一緒に寝ることが多かったのだ」
詳細を語ったのはシトリンだった。
唐突な告白に、私は目を瞬かせる。
「え」
聞き間違いじゃないかと思ったが、シトリンは話を続ける。
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