第18話 内職祭り
ユキムラがファス村に住んでから初めての冬が来る。
すでにユキムラの文化侵略により魔改造済みのファス村は、過去のように寒さに震え、食料や燃料の備蓄を気にして過ごす時代は過ぎ去っている。
村は区画整備され地面は歩きやすい石畳の道路。
街灯が定期的に置かれていて魔道具による照明が夜でも暗闇を感じさせない。
各家は十分な間隔を取られており、全て石造りかレンガ造りになっている。
保温性を考えると木製よりも気密性が高いためその方式が選択されている。
木のぬくもりが欲しい人は内装を木造にしたりしている。
各家庭に水道、魔道具による水の供給が可能になっている。
深い穴をほったり川に流していた排泄も、特にユキムラが心血をそそいだ魔道具により水洗式トイレが完備されている。
キッチンにも魔導式コンロ、オーブンが設置され、お湯の出るシャワーに浴槽も一部家庭にはつけられている。
ユキムラは大きな風呂が大好きなので共同浴場も作成した。
いつの日か源泉かけ流しの温泉を作る。ユキムラの野望である。
こんな大革命が起きれば当然人の流れも変わる。
街から来た商人はこの村の変化に腰を抜かし、家族を連れ立って移住してきた。
噂を聞いて村の人口も大きく増加している。
周囲を囲っていた塀と柵も大きく拡張している。
ガッシュは流石レンの父親。様々な適性を持っていて開発の中心でその手腕を奮っている。
ユキムラは軽く助言するくらいでほとんど研究やら内職ばかりしている。
家は拡張に継ぐ拡張をして周りから建て替えや引っ越しを提言されているが、使い慣れてきたからとごちゃごちゃした家で心から楽しそうに暮らしている。
「師匠ただいまー、また鉱石とか材料集めてきたよー」
「おお、レンありがとう。紅茶飲むか?」
「ミルクたっぷりで! しっかしこのキャタピラってのは凄いですね。
スキーイタと組み合わせれば新雪だろうがあっという間に移動出来るって皆言ってるよ」
レンにホカホカと湯気を立てるミルクティーを渡してやる、アチチと言いながら紅茶を飲むレン。
すっかり逞しくなっている。
キャタピラは文字通りキャタピラに捕まる取っ手をつけて雪の上を自走してくれる。
その後ろにスキー板(短いファンスキーのような形態だ)を付けた人が引っ張られる。
たったこれだけで雪道の移動効率は跳ね上がる。
「春になったら師匠が言っていたロープウェーってのを作るし、そうすれば採掘場まで座っていればつくんだろ?村長が泣いて喜んでるよ!」
魔道具によって回転させたロープに籠をぶら下げただけの造りを考えているが、ミスリル繊維を編み込んだロープなら硬化や冬場発熱させて雪などの影響を受けない。
科学では莫大なコストがかかる物も魔法があれば代替品が安価なエネルギーコストで作れる。
「マジックポシェットも作れるようになったからね、これで鉱山業も村の産業になる」
ミスリルを粉状にして染料に混ぜて染めた布を縫製してカバンを作り、魔石と組み合わせればマジックバッグの完成だ!
空属性魔石はレアだからまだ数は揃えられない。
というか自分で使う魔改造マジックバッグを作ったせいで在庫がなくなったわけだ。
お陰で種類は500、個数制限1000まで到達した。
ゲームの方のVOでは両方ほぼ無限までユキムラは作成している。変態だ。
現在村は最初にユキムラが訪れたときの4倍位に囲いを広げている。
農業地区、畜産地区、製造地区、商業地区、住居地区、公共地区と大体分かれている。
人が増えたことで色々なトラブルが生まれるかと思われたが、全ての恩人であるユキムラに迷惑をかけない、嫌なら出て行く。という暗黙の、しかし絶対の掟があった。
新しく村に来たものはユキムラによる指導を受けて自分の適性を見つける。
新規プレイヤーが少ない時代に一生懸命新規プレイヤーのお世話をして、続けてもらったりしていた古参プレイヤーたちに混じってゲームの中では世話焼きだったので、全く苦ではなかった。
むしろ生産力が上がっていき出来ることが増えることが何よりも楽しかった。
限られた人口を適した場所に配置して産出と加工と建築、消費のバランスを取っていく。
そういった効率化を考えることもたまらなく楽しい時間だった。
「師匠、今日採掘に行ったら岩肌がいつものようにキラキラしていたんだけど、そこを採掘しようとしたら目の前に変な物が現れたんだけど……」
はじめレンが話していることを目の前に置かれた魔道具をいじりながら聞いていたユキムラだったが、
次の言葉でその声に全神経を集中させることになる。
「変な白い輪っかがこう真ん中に集まってきて、なんとなく一番大きな時にツルハシを奮ったらものすごくいい手応えだったんだよなー。取れたのもほら、上質なものだったし」
レンがそう言いながらアイテムポシェットから取り出した物はミスリル鉱石(塊)だった。
塊はさらに分解すると2~8の鉱石になる。
それよりも何よりも、レンの言う見えたものはVOのミニゲームに違いなかった。
「そ、それはこんな感じだった?」
興奮を抑えられずに紙に描く。
「そうそう、さっすが師匠! なんでも知ってるね!」
それから様々なミニゲームつきの採取などを一緒に巡ってみたけど、一番行っている採鉱でしかそれは現れなかった。
たぶんNPCも同じように経験がたまり、ある一定レベルまで達するとVOプレイヤーと同じように出来るのではないかと仮定がたった。
もしそうなら、訓練次第で上質な材料や製品を作り出すことが可能になる。
ユキムラのゲーマー魂がまた燃え上がる。
今は冬、時間はたくさんある。
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