第6話 蜘蛛の洞窟
ヒデオはレンの家を出る時にサリーさんからロングソードを渡された。
レンの父親ガッシュが使っていた物らしい、それとレザーアーマーも合わせて受け取る。
涙目のレンに送られながら、装備を整え蜘蛛退治へと出かける。
今、ヒデオは村から森へ向けて歩いている。
その道中で考えているのは村を救う方法だった。
今回の蜘蛛退治は時間制限クエストと言うやつだ。
まぁそれでも夜明けまで、今が昼過ぎだからクエストのタイマーは17:45と表示されている。
(この時間を利用して、ゴブリンの村を壊滅させるか)
さらっと恐ろしいことを考えていた。
蜘蛛のいる洞窟の少し先にゴブリンの村はある。
転移されある程度自由に行動できるようになってから、この地に戻ると受けることが出来る【村の仇】クエストの目的地になる。
ゲームと異なって自由に動ける今の状態なら、そのゴブリンの村まで行けそうだ。
適正レベルは15くらいだったはずだ。
(まぁ、一発も喰らわなければレベル差はクリティカルで埋められるから……)
レベル差が5あると攻撃低下補正と防御上昇補正がかかる、簡単に言えば圧倒的に不利になる。
例外がある。それがクリティカル攻撃だ。
クリティカル攻撃にはレベル差は反映しない。
たとえ自分がレベル1で相手がレベル100でも、攻撃力分のダメージを防御力の影響を受けずに必中で入る。
これを利用すれば理論上どれだけレベル差があろうが倒すことは出来る。
(あの村が滅ぶのを知ってて何もしないのも目覚めが悪いしな)
簡単に言っているが、本当はとんでもないことを言っている。
それでもまずは蜘蛛退治から、迷うことなくまっすぐに洞窟へと向かう。
途中スライムやトゥースラビットなんかが出てきたが、全て戦闘を避け、逃げて洞窟へと到着する。
逃げたのには理由があるが、それは後で分かる。
途中に足捌きスキルがレベル1になった。
普通に歩いても上がるけどヒデオは見事なステップを使うため取得経験値量が多い。
洞窟へと侵入していく、入る前に松明を作成している。
木の枝と布と油が偶然作業台のそばに置いてあり松明作成が可能だ。
必要となる洞窟の前に……不思議なこともあるものだ。
松明で照らされる洞窟内を躊躇することなくスタスタと歩いていく。
各所に蜘蛛の巣が張っている洞窟を、松明の火で巣を燃やしながら進むと広場に出る。
わざとらしく部屋の各所に松明が置かれているので1つずつに火をつけていく。
4本全てに火をつけると奥からシューシューと音を立てながらトリカスパイダーが出て来る。
部屋を明るくするまで待っていてくれるイベント魔物の鑑である。
大きさは50cmくらい。通常攻撃を食らうとたまに毒になる。
来訪者は特別なので、時間経過で毒は消える。
その他状態異常も基本的に時間経過で回復する。
来訪者マジ便利。
ただ状態異常:毒はHPが定期的に減っていくので結構厄介だったりする。
最初は3匹、たった3匹だ。
さらに武器も短剣からロングソードになっている。
ヒデオが負ける要素は皆無だ。
爪の攻撃をパリィ、クリティカル。
飛びつき噛みつき攻撃をパリィ、クリティカル。
ここで4匹追加され5対1になる。
気にしない。
スパイダーネットを吐き出してくる、その準備行動であるおしりを向けた段階で避けている。
パリィ、クリティカル。敵は死ぬ。
あっという間に7個の魔石に早変わりだ。
全てのトリカスパイダーを倒すと奥からズルズルと大きなお腹を引きずって、ジャイアントトリカスパイダーが出て来る。
大きさは1.5mくらいある。現実世界で1.5mの蜘蛛に出会ったらショック死する自信があるが、ヒデオはただの腐るほど倒してきた魔物になんの感情も持たない。
パリィからのクリティカルを数回当てると尖った岩を背にする。
そこに敵さんのジャンプからの伸し掛かりが襲いかかる。
スッと避けると見事、ジャイアントトリカスパイダーの腹に岩が突き刺さる。
そのまま胸部と腹部を切断してお終い。あっという間だ。
ヒデオはジャイアントトリカスパイダーの剥ぎ取りを終わらせて解毒薬、毒袋(部位破壊)、毒牙✕2、毒爪✕2(全部極上)を手に入れることに成功した。
一連の戦闘でBLvも1→8に上がっている。レベル差で経験値補正がかかるので一気に上る。
逃げられる敵から全て逃げていた理由はこれだ。
ボスを低レベルで倒すと一気に経験値を得ることが出来る。
普通に雑魚戦をしながらこの敵を倒すとレベルは5くらいまでしか行かない。
ビッグボアの経験値はどうしたって?
あれはチュートリアルだから経験値が無い……無い。
洞窟の奥に進むと、卵が沢山ある場所に出る。
すべての卵を破壊し、松明で焼き払う。
少し美味しそうな臭いがする。
(流石にね)
VOにはもちろん調理スキルがあっていろんなもの食べられるけど、流石に蜘蛛の卵は食べる気はしない。
なぜか置いてある宝箱から1200zゼニーとアイテムポシェットを手に入れる。
zはご丁寧に1000z硬貨と100z硬貨が2枚。気が利いている。
このアイテムポシェットはマジックアイテムでどんな大きさのものでもしまえる。
種類は20種まで、何故か個数は各99個まで持てる不思議アイテムだ。
1980種類1個ずつはダメだ。不思議だが、それが仕様だ。
早速 トリカスパイダーの魔石✕7
ジャイアントトリカスパイダーの魔石
毒袋(極上)
毒爪(極上)✕2
毒牙(極上)✕2
【イベントアイテム】解毒薬
をしまう。サイフにもなっているので1200zもしまう。お金に関してはいくらでも入る、それこそ国家予算でも入る。不思議だ、結構な量になるはずだし種類も多くなることも有るが入る。 仕様だ(二回目)。
火に巻かれる前に洞窟から脱出する。
残り時間は17:12、十分な時間が残されている。
(さて、もののついでにゴブリンの村落を焼きに行こうか)
恐ろしいことを考えながら、ヒデオは森の更に深くへと歩を進める。
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